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73話 揺れる2つの心。

«えっ〜!?今から三日後にAランク冒険者と模擬戦をすることになった〜!?»


優梨達は遅い朝ご飯を食べながら、例の話を聞いていた。


「私が勝手に君達の昇格をお願いしたばかりに…本当にどう謝ったらいいか、ごめんね…?」


「ミノリさんはわるくないですよ!」


「アタシ達のことを思ってやってくれたことなんだから!」


「二人とも…それじゃあ…模擬戦をしてくれるってことでいいのかしら…?」


「こうなったらやるしかない。舐めてる王都の幹部達にアタシ達の実力を見せてあげましょう。」


「アリスちゃんがやるなら、私もやるよ。」


「よかったぁ…その言葉を聞いて少し肩の荷が降りたよ…」


「ふっふ。うまく話がまとまったみたいね。コーヒーのおかわりはいかが?」


「頂きます。」


「ちなみに対戦相手をまだ聞いてなかったけど、Aランク冒険者って誰なの?」


「そうだ!一番重要なのはそこなんだ!君達が戦う相手はあのリンとロンの双子姉妹なんだよ!」


「リンとロンの双子姉妹…?」


「うそ!本当に!」


アリスは目を輝かせた。


「アリスはその二人を知ってるべか?」


「そりゃそうだよ!冒険者ギルドの若手の中で今一番活躍している最強双子姉妹なんだよ!」


「テンション高いな…?おまえ…?」


「アタシが冒険者になる前、いつもその子達の活躍を新聞で見てて、自分もそんな風な冒険者になれたらなって憧れてたんだから!」


「アリスちゃんが憧れてた…」


「それに二人とも美少女で、かなりの人気があるんだから!会ったらサインもらわなきゃ!」


(あれ…なんだろう…この感じ…)


はしゃぐアリスの姿を見て、ユリの胸がズキッとした。


「ユリ、何か考えごとだべか?」


「あっいや、何でもないよ…?」


「気のせいか?」


(どうしたの私…)


この時はまだ自分が嫉妬していることに気づいていなかった。


「恥をかかないように修行しなくちゃ!」


「修行か。」


「アリスったら。張り切っちゃって。」


「ユリちゃんも一緒にしてくれる?」


「あっうん…もちろん。」


「仕方ねぇな。暇だし、オラも付き合ってやるか。」


「ありがとう!二人が協力してくれたら絶対に修行が捗るよ!」


「私達、ギルド側も協力できる事があったらするから言ってね?」


「うん!」


「じゃあ私は今から三人分のお弁当を作るわね。」


「お願いするね。」


「それじゃあ。私はギルドに戻りますね。コーヒーご馳走様でした。美味しかったです。」


「もっとゆっくりしていけばいいじゃない。」


「そうしたいんですが、やらなきゃならない業務が山積みなので、すぐに仕事に戻らないとならないんですよ。今度、洋食屋さんがやってる時にお客として食べに来ますね。」


「わかったわ。その時には腕に寄りをかけて、美味しいの作るわね。」


「はい。楽しみにしてます。」


「ミノリさん!お仕事頑張ってください!」


「ありがとう。あなた達も修行、頑張ってね。」


「はい!頑張ります!」


「頑張ります。」


「オラも頑張るべ!」


「いい返事だね。」


ミノリは微笑んだら、ギルドに戻って行った。


「さ〜て。さっそくお弁当作りに取り掛かりますか。」


「オラも作るの手伝うべ。」


「クマ子ちゃん、料理作れるの?」


「当然だべ。結構得意なんだぞ。」


「朝ご飯を作る時に手伝ってくれたけど、食材を切ったり、炒めたり、味付けも盛り付けだって完璧だったし、この子、才能あるわ。」


「お姉ちゃんにそこまで言わせるなんて…?」


「意外な特技だね…?」


「へっへん。当然だべ。」


「アリスより全然、上手ね。」


「ひどい〜!」


「悔しかったら、オラより美味しいの作ってみろ。」


「ムキィ〜!やってやろうじゃん!アタシも料理手伝う!」


「あらら。皿洗いを頼もうかしら。」


「ちょちょっと!」


「ふっふ。冗談よ。」


「もう〜。」


「私も手伝います…」


「じゃあ、みんなで作りましょうか。」


優梨達がお弁当を作るのを手伝っていた頃、天界ではメアが二度寝から目覚めたのだった。


「ふわぁぁ…今度はお昼近くに起きちゃった…優梨さん達は今頃、何を…?あっなるほど、みんなで料理を作ってるんだ…美味しそう…」


メアのお腹が鳴った。


「どうやら私もお腹空いたみたい。天使寮の食堂でお昼御飯を食べて来ようかな…」


すると扉をノックされた。


「はっはい!どちら様ですか?」


「わたくしです。エイラですわ。」


「あっはい!部屋にどうぞ!」


「失礼しますわね。」


「何か用事ですか…?」


「これを持ってきたんですわ。」


エイラはサンドイッチと暖かい飲み物を渡した。


「これは…?」


「あなた、昨日の夕方も今日の朝も食堂で見かけなかったですし。きっと食事もろくにとってないんじゃって思って、持って来たんですの。」


「あっありがとうございます。心配してくれたんですね。」


「オッホン、いいから早くお食べなさい…?」


「はい。ありがたく頂きますね。」


メアはサンドイッチを一口食べた。


「わぁぁ。美味しい。」


「よかった…美味しく作れたみたいですわね。」


「えっ…?という事はこれはエイラさんの手作りなんですか…?」


「わっわるいかしら…?」


「いえ。すごく嬉しいです。エイラさんの優しさを感じます。」


「何をオーバーなことを…?」


「ですよね。」


「でもそう言ってくれるのはわたくしも嬉しいですわね…」


「ごめんなさい…」


「なぜ謝るんですの…?」


「私、アイルちゃんの事でよく怒ったりしてたので…」


「何だ。そんなの気にしてませんわ。わたくしだって言いたいこと言ってましたし、お相子よ。」


「そうですか…?」


「ええ。これからは仲良くしましょう。」

 

「はっはい…」


メアはエイラの笑顔に胸がキュンとした。


(エイラさんってこんなに素敵な人だったんだ…)



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