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71話 優梨達がAランクになるために

優梨達が魔族のザクロ大佐を倒して町に無事に帰ってきた翌日。冒険者ギルドではさっそく動きがあって、受付のミノリがその偉大な戦果を王都の本部に報告していた。しかし…


‐王都にある冒険者ギルドの本部の会議室にて‐


「アハハッハ!たかだかCランクと入ったばかりの新人がBランクでも勝てない、レベル70以上は確実にある魔族を倒しただと?」


「そんな話を君は我々に信じろと言うんですか?」


「ありえませんよね、虚偽の報告に決まっています。」


「そうだな、その二人のランクを上げるためにでっちあげた話に違いない。」


『事実なんです!信じてください!ソノサキユリ、アリスの両名は確かに魔族を倒して町を守ってくれたんです!なのでそれに報いるためにもランクをAランクに昇格させてあげてください!規定上は出来るはずですよね!』


「規定上はね、しかし信憑性にかける。」


「いくら君がウイス隊長の娘さんだからと言っても、その報告だけは信用することは出来ませんね?」


『そっそんな…』


《ゴチャゴチャ言ってねぇで、昇格ぐらいスパッとしてやればいいじゃねぇか?》


«えっ!?»


『その声はパ…隊長!』


「おう!久しぶりだな!」


すると会議室にウイス隊長が現れた。


「今は重要な会議の最中だぞ!」


「部外者は出ていってもらおうか!」


「おーこわ、別にいいじゃねえかよ

 これだから、古巣の老人共はウザくて仕方ねぇ」


「なんだと!!」×8


《まぁまぁ皆の者、落ち着くんじゃ。》


«ゼウス本部長!»


ウイス隊長の後に入ってきたゼウス本部長とは冒険者ギルドの最も偉い立場の人間である。


「一体、今までどこに行っていらっしゃったんですか…?会議はすでに始まっているんですよ…?」


「ホッホッホッ。それはすまなかったのう。先程までウイス君とのチェス対決が長引いてのう、来るのに遅れたのじゃ。」


「そっそんな理由で…」


「やっぱゼウスのじっちゃんは強いよなぁ、今日の負けと合わせて5勝30連敗だぜ。」


「ホッホッホッ。まだまだお主には負けはせぬよ?」


「今度は負けねぇぜ?」


「それでポネリ副本部長、ワシ的には魔族を倒した件は信用してもいい話じゃと思う。ウイス君の娘さんのお願いを聞き入れてみてはどうかな?」


「でっですか!」


「決めつけて、若者の芽を摘みあげては可哀想であろう?」


「わかりました…ゼウス本部長にそこまで言われたら何も言い返せません…昇格の話を考えましょう…」


『いいんですね!』


「よかったな、ミノリ?」


『ありがとう!パ…いいえ、隊長!これで頑張ってくれた二人に報いることが出来ます!』


「俺も帰ったら褒めてやらなきゃな。」


『そうしてあげてください。』


「オッホン、ですが、それには条件があります。」


『えっ?』


「ソノサキユリ、アリス、両名が本当にAランク並にあるのか、テストをさせてもらってそれに合格したら、Aランクに昇格することを許します。」


「それはいいですね。」

「うむ、いいアイデアだ。」


「いいと思う者は手を上げてください。」


ウイス隊長、ゼウス本部長以外の会議室に居た全員が手をあげた。


「決まりですね。」


『そっそんな…』


「チッ、人を喜ばしといてこういうこと言うんだよな、ここの連中は?」


「口を慎みたまえ!副本部長のお考えだぞ!」


「そうだ!いくら君があの二十年前に魔王の襲撃からこの王都を守り抜いた英雄の一人だと言っても、今はたかだか田舎の町の隊長をしているだけの君が我々、本部の人間に向かって、そんな生意気な態度とっていいはずがない!」


「そうですよ、田舎の町の隊長風情が。」


「たかだか田舎の町だと!!今すぐに言ったこと撤回しねぇと許さねえぞ!!」


「なっなんですか!我々を殴る気ですか!そんなことしたら、君を即刻、隊長の座から降格させますよ!」


「上等だ、コノヤロー!!」


『隊長!!やめてぇ!!』


「落ち着きたまえ。ウイス君。」


殴りかかろうとしたウイスをゼウス本部長が肩を掴んで止めた。


「なんで止めるんだ!」


「君が怒るのもよくわかる。だが、力で解決させようとするのはいかん。一旦、冷静になるんじゃ。」


「チッ…わかったよ…」


(すごい…血の気の多いうちの隊長を一瞬で抑え込むなんて、流石、ゼウス本部長…)


「それでポネリ副本部長、君が提案するテストとはどんなものなのかのう?」


「そうですね、この本部に直属しているAランク冒険者のリン、ロンの双子姉妹と模擬戦をしてもらいましょうか?それで二人に勝ったら、ソノサキユリ、アリスのお二人をAランクに昇格しても構わないかと?」


「おぉ、それはいい!」

「流石はポネリ副本部長だ!」

「我々も賛成です!」


『リンとロン…あの二人と模擬戦を…?』


「なんだ?双子姉妹のリン、ロンって?」


『隊長は何も知らないんですから…リンとロンは双子の姉妹で、まだ13歳という若さながらAランクの実力を持ち、これまでに魔族を二体も倒している

 冒険者ギルド界一の期待のホープと呼ばれています…』


「そうなのか?」


『そんな二人と模擬戦だなんて…』


「さぁ、どうですか?勝てないと思うのでしたら、諦めて頂いて構いませんが?」


『そっそれは…』


「いいぜ、その提案、聞き入れた!」


『ちょちょっと!何を勝手に決めてるんですか!二人にちゃんと聞かなきゃ!』


「大丈夫だ!俺はあいつらが勝つって信じてるからな!」


『そういうことじゃなくて!!』


「後悔はありませんね?」


「てめえらこそな?」


「わかりました。では即刻、二人にリーベルの街に向かうように伝えます。遅くても2、3日中には着くでしょう。』


『そっそんな…』


「ホッホッホッ。面白くなったのう。若い冒険者はお互いに競い切磋琢磨してこそ、立派な冒険者になれるというものじゃからな。」


「じっちゃんの言う通りだ!ハッハッハ!」


『トホホ…二人になんて伝えれば…』


ミノリが頭を抱えていた頃、当の本人の優梨達はというと…


「ふたりとも、いつまで寝てるの〜?そろそろ起きなさい〜?」


「そうだべ?オラだってちゃんと起きたぞ?」


「そうよね。偉い。偉い。」


「だっだから…幼女扱いはするなってあれほど…」


「だって♡クマ子ちゃんちっちゃ可愛いから♡」


「とっとにかく部屋に入ってみるべ…」


「ふっふ。照れちゃって。」


二人が部屋に入ると、優梨とアリスはベッドで手をつなぎながら幸せそうな顔して寝ていた。


«スゥゥ…スゥゥ…。»


「あらぁ♡ラブラブね♡」


「やっぱり寝てるのか。」


「でも仕方ないわよね。昨日は魔族達と戦ってすごく疲労したんだもんね。」


「そうだな。もう少し寝かせてやるか。」


二人は優梨達の寝顔を見たら、そっと扉を閉めたのだった。



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