70話 メアの見た夢。
少し時間を遡り、優梨達がまだ町に帰っている途中だった頃、アイルの代わりにサポートをしていたメアの元にエイラが女神様からの伝言を伝えにやって来ていた。
「女神様がリリカさんを絶対に幸せになるような形にするって言ってましたから。」
「それを聞いて一安心です…」
「あなたもアイルの事や色んな対応で、相当、気を張って疲れたでしょう?今度はアイルじゃなく、あなたが倒れてしまいますわよ、少しは休みなさい、いいわね?」
「ありがとう、心配してくれて。エイラさんって優しいんですね。」
「なっなっそんなんじゃ!わたくしはこれで失礼しますわね!」
エイラは照れ隠しか慌てて部屋を出た。
「エイラさんの事、誤解してたなぁ。」
メアは笑顔になりながら、水晶で優梨達の状況を見た。
『おい〜。まだ町に着かないのか〜。オラ流石に疲労で足が動かなくなってきたべ〜。』
『仕方ないな。おんぶしてあげるから。ほらアタシの背中に掴まって。』
『オラを子供扱いしてるべ…?』
『まぁまぁ。』
『じゃあ…頼む…』
『よかったね。クマ子ちゃん。』
『ユリ、おまえも子供扱いしてるな…?』
「まだ3人は町に帰ってる途中みたい…ふわぁぁぁ…」
メアは緊張の糸がほぐれたのか、大きなあくびをするといつの間にか眠りについた。
「スゥゥ…スゥゥ…。」
そしてメアは懐かしい夢を見ていた…それは幼い頃、アイルと初めて会った時のこと…
『メアさん。あなたは今日から天使の見習いとなって、この天界に暮らすのです。わかりましたか?』
『はっはい、めがみさま!わたし、りっぱなてんしになりますしゅっ!あっかんじゃった…』
『ふっふ、あまり緊張せず。頑張ってくださいね。』
『はい…』
『アイルさん。アイルさんはいらっしゃいますか?』
『およびですか!めがみさま!』
『この子を寮のお部屋に案内して差し上げてください。』
『わかりました!あなた、私についてきてください?』
『あっはい!』
アイルは緊張してガチガチのメアを笑顔で部屋まで案内した。
『あなたのおなまえはなんて言うんですか?』
『わたしはメアです…』
『メアさんか、すてきなおなまえですね!』
『すてきなおなまえですか…』
メアは顔を赤くした。
『わたしはアイルっていうんです!なかよくしてくださいね!』
『はっはい…こちらこそです…』
『あなたもわたしとおなじく、いせかいからしょうかん…だったかな?それでこのせかいにきたんですか?』
『えっ…?いせかいからしょう…かん…?なんですか、それ…?わたしはてんごくから、そしつがあるとえらばれて、てんかいにきたんですが…?あなたもじゃないんですか…?』
『あっ!このことはだれにもいっちゃだめだって
めがみさまからいわれてたんでした!ごめんなさい!いまのはわすれてください!じゃないとめがみさまにおこられちゃいますから!』
『わかりました…?』
『ありがとうございます!メアさんってやさしいですね!』
『そっそんな…』
(このこ…よくみると…かっかわいい…)
『アイル〜!はやくこっちにきなさい〜!その子に部屋を案内したら〜!今度はわたしくしが天使見習い学校の校舎に案内するんですから!』
『だって、いきましょう!メアさん!』
『はっはい!』
アイルはメアの手を引いた。
(手を握ってくれた…)
この時、すでにメアの恋は始まっていた。
「んっ…あれっ…私…」
メアは目覚めて水晶を覗いたら、真夜中になっていて、優梨達はぐっすりと眠っていた。
「やっちゃった!私、長い時間、寝ちゃってたみたい!明日、起きたら、優梨さんに謝らなくちゃ…」
"あなたもわたしとおなじく、いせかいからしょうかん…だったかな?それでこのせかいにきたんですか?"
「さっきの夢が昔の記憶なら…あの時アイルちゃんが言っていたあの言葉って…」
メアは考えても答えは思いつかなかった。




