65話 リーベルの町に帰ってきた。
ザクロ大佐を倒した優梨達は戦いの疲労で、多少、よろめきながらも森を抜けて、やっとの思いで町の門の近くまで歩いてきたのだった。
「やっと町の門が見えてきたぁ…」
「今日ほど町が遠く感じたことはないよ…」
「すまねぇな、アリス?途中でヘトヘトになったオラをおんぶしてくれて?」
「いいんだよ。妹をおんぶしてるみたいで、アタシ的にすごく嬉しいんだから。」
「だから妹じゃ…まぁ今はいいか。」
「アリスちゃん、見て…?門の前に大勢の人達が見えるよ…?」
「えっ?」
「それに誰かオラ達に気づいて、こっちに走って来てるぞ?」
《ユリちゃん〜!アリスちゃん〜!》
「あれって!」
「ミノリさんだ!」
手を振りながらミノリが駆け寄って来るのが見えた!
「ハァハァ…」
「わざわざ迎えに来てくれたんですか?」
「そんなに息を切らして…?」
「当然だよ!魔族を倒して町を救ったヒーローを出迎えなくてどうするだい!」
「どうして魔族を倒したって知ってるんですか…?」
「大勢のモンスター達が森の出口に集まっていたらしいんだけどね、それが退散したって偵察隊から報告があったんだよ!それで君達が魔族を倒してくれたんだってわかったのさ!」
「そうだったんですね…」
「君達を信じてよかった。君達は町を救った偉大な冒険者だよ。」
「偉大だなんて照れますよ…」
「だよね…」
「それに。」
ミノリは二人の肩に手を置いた。
「よく無事に帰って来てくれたね。」
«ミノリさん…»
「お帰りなさい。」
「ただいまです。」
「ただいま。」
「そういえば、アリスちゃんがおんぶしてる。そのくま耳の女の子は誰なのかな?」
「オラのことか?」
「そうだよ。君のこと。」
「紹介するのを忘れてました!この子は…」
ミノリにクマ子を紹介した。
「なるほどね…森で生息しているあのムカムカベアーが魔族の力でくま耳の女の子に生まれ変わったと…」
「えっへん、これでも魔物だべ。」
「魔物か…」
「でっでもですね!クマ子ちゃんは基本いい子なので!魔物だけど、決して人に危害を加えたり暴れたりはしないです!」
「だから町に入れちゃ駄目かな…?」
「お願いだべ。この通りだ。」
クマ子はミノリに近づくと上目遣いでお願いした。
「きゃ〜♡超超超可愛い〜♡」
「むぎゅっ!」
ミノリはクマ子を強く抱きしめた!
「ミノリさん…?」
「こんな可愛いんだし、町のみんなも絶対に受け入れてくれるよ!というか私が必ずみんなを説得してみせるから!」
「オラの可愛さにかかればこんなもんよ。」
「クマ子ちゃんが小悪魔に見える…」
「元はおっさん熊だったのにね…?」
「善は急げだよ!まずは門で待ってるみんなにクマ子ちゃんのこと紹介しようか!」
「あの、門の前にいる大勢の人達って…?」
「数人は我がギルドの隊員だけど、残りは町を護衛するために集まってくれた冒険者だよ。」
「そうだったんですか。」
「あんなに大勢の人達が町を守ってくれたんだ…」
「感謝しなくちゃね。」
「だね…」
「さぁ、帰りましょう!みんなが町を救ったあなた達を待ってるの!」
「だって、行くよ。」
優梨は手を伸ばした。
「うん。」
アリスはその手を繋いだ。
「ずるいべ〜!オラも手を握らせろ〜!」
「はいはい。」
そして門の前まで辿り着いたら、待っていたみんなが歓声を上げながら駆け寄ってきて、優梨達を称えるのだった。




