64話 アーノ大尉が幸せになりますように…
アイルが危機的状況だと聞きつけ、ほかの守護天使達も集まっていた。
「なるほど…アイル君がそんな危険な術を…」
「近くにいて私は止められなかった…」
「メアちゃんのせいじゃないよ?自分を責めないで?」
「そうよ。あんたが気に病んでも仕方ないでしょう?」
「そっそうです…」
「だけど…」
「あなたが責任を感じる必要はありませんわ。そもそも悪いのは女神の忠告を無視したアイル本人なんですから。」
「はっきり言うね?エイラ君は。」
「鬼だ。」
「そうね。」
「誰が鬼ですって?」
«ひっ!ごっごめんなさい!»
睨まれたリルとリラは怯えて抱き合った。
「ハァ…わたくしだって心配ぐらいしてますわよ…」
「エイラお姉様…」
すると扉を開けて、女神が出てきた。
「どうですか!アイルちゃんの容態は!」
『もうだいじょうぶですよ。アイルさんの天使力は次第に回復してきましたから。』
「本当ですか!女神様!」
『本当です。』
「よかった…」
「よかったですわ…」
『ですが、完全に回復して目を覚ますまで、一週間はかかります。』
「そっそうなんですか…?」
『はい。ですのでアイルさんが目覚めるまで、中への立ち入りは禁止とします。目覚めたらすぐに会わせてあげますから、それまで待っていてください。』
「わかりました…」
「一週間なんてあっという間だよ。」
「そうかな…?」
「それはあんたが馬鹿で時間感覚がまるでないだけでしょう?」
「ひどい〜。」
『あと少し処置が遅かったら、アイルさんは天使力を失い存在が消滅していたでしょう。メアさん、エイラさん、あなた達のような仲間思いの部下を持てて、私は誇らしく思いますよ。ありがとう。』
«女神様…»
『メアさん。お願いがあります。』
「お願いですか?」
『すぐに救世主のサポートに戻ってあげてください。きっと今頃、再び連絡が取れないことを不安に思っているはずですから。』
「そっそうですね!すぐに戻ります!」
「救世主の子によろしくね。」
「サポート頑張って!」
「ほどほどにね。」
「頑張ってください…」
「何か困ったら、すぐに頼るんですのよ!」
「皆さん、ありがとうございます。」
メアは笑顔で一礼するとアイルの部屋に戻って行った。
「あの子、変わりましたわね。最初、アイル以外にには心を許さない感じで、わたくし達に笑顔を見せなかったのに、今ではあんなにいい笑顔を見せるようになるなんて。」
『それはきっとあなたや周りの天使達の優しさを知って、メアさんが心を許してきたということですよ。』
「女神様からそんなこと言われたら、嬉しすぎますわ…」
『おやおや。』
それから数分後、部屋に着いた。
「ふぅ…ハァァ…優梨さんを心配させちゃ駄目だ。
平常心、平常心で喋らなきゃ。」
(優梨さん!聞こえますか!)
(その声はメアちゃん…?)
(今まで返事を返せなくてすみません!ちょっと色々ありまして!)
(なんで…なんで教えてくれなかったの…?)
(なっ何をですか…?)
(アイルちゃんが命をかけて、私達を救ってくれたことだよ!!)
(どっどうしてそれを知ってるんですか…?)
(アーノ大尉がそうなんじゃないかって…その反応、合ってるんだね…?)
(そっそれは…)
(ねぇ、どうして…?どうして教えてくれなかったの…?そんな危険なスキルだって聞いてたら、私…アイルちゃんに使わせたりしなかったのに…)
(優梨さん…)
(アイルちゃんは生きてるんだよね…?)
(安心してください!女神様が救ってくれましたから!)
(よかった…)
(ごめんなさい、ずっと伝えずにいて…)
(私こそ、大声出してごめん…きっとアイルちゃんから内緒にして欲しいって言われたんだよね…私を心配させたくないから…)
(ええ…仰る通りです…)
(アイルちゃんは本当に良い子だな…)
「どっどうして泣いてるの…?」
「あっいや、これは…」
「もしかして今、天使の人と話してるの…?」
「うっうん…話してる…」
「アイルって天使の子は…?」
「助かったって…」
「そっか…よかったね。」
「すみません…私が余計なことを…言ったばかりに混乱させましたね…」
«アーノ大尉!!»
倒れそうになったクマ子(アーノ大尉)の受け止めた。
「大丈夫!?」
《そろそろ…私も帰る時が来たみたいです…》
「そっそんな…」
《心配しないでください…私の魂が抜けたら…クマ子さんはすぐに…意識を取り戻すので…》
「あっあなたはどうなるの…?ちゃんと萌子さんと同じ天国に行くんだよね…?」
《前にも言いましたよ…私は魔族の部下として…多くの命を奪った存在です…天国に行っていいはずがありません…》
「そんなこと言わないで!!もうあなたは十分、辛い思いしたし、苦しんだじゃない!!あの世でぐらい幸せになるべきだよ!!」
「アタシもそう思う!」
《私は十分、幸せですよ…》
「えっ…?」
《実はここに来る前に萌子に会えたんです…》
「萌子さんに…?」
《それに何より…ユリさん達を救えましたから…》
「アーノ大尉…うぐっ…うぐっ…」
優梨は大粒の涙を流して泣いた。
「ユリちゃん…」
アリスはその姿を泣きそうになりながら見つめた。
《泣かないでください…ユリさん、あなたには笑顔が一番良く似合うんですから…》
「アーノ大尉!!」
《またいつかお会いしたいものです…》
笑顔でそう呟いて目を閉じたら、クマ子の体から光の粒が浮かんで空に飛んでいった。
「行っちゃったんだね…」
「うぐっ…うぐっ…」
「良い人だったね…」
「うん…」
(アーノ大尉が幸せになれますように…)
心の中で優梨は祈った。
「ふわぁぁ…何で二人とも泣いてんだ…?」
「クマ子ちゃんなの…?」
「そうに決まってるべ。」
«クマ子ちゃん!»
「わっ!」
クマ子に一斉に抱きついた。
「二人同時は重たいべ!」
「あっごめん…」
「つい…」
「まぁいいか。ありがとうな、二人とも。オラを助けてくれて。」
「本当に助けたのはね…アーノ大尉なんだよ…クマ子ちゃんに憑依して…」
「知ってるべ。さっき体を返してもらう時に話したからな。」
「そっそうなの…?」
「アーノ大尉にちゃんとありがとうって伝えたよ。」
「偉いよ、クマ子ちゃん!」
「ふぎゅっ。」
アリスはクマ子を胸に抱き寄せた。
「流石はアタシの妹だ。」
「ぷはぁ。だからいつから妹になったんだよ?」
「細かい所は気にしないの。」
「最初はおまえが気にしてたくせに。」
「すっかり仲良しだね。」
「それより!」
「痛っ!」
クマ子はアリスの頬を引っ張った!
「オラが居ない間に告白するとはどういうことだぁ!」
「そっそれは!」
「知ってたんだ…?」
「アーノ大尉から聞いた!おまえもだぞ、ユリ!」
「はっはい!」
「おまえらそこに正座するべ!今からお説教タイムだ!」
«そっそんな〜!?»
それから数分間、優梨達は正座をさせられながら、クマ子からお説教されたのでした。




