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63話 女神の救いのキス。

闘技場がついに完全崩壊した!


「きゃぁっ!」


「みんなで手を繋ごう!」


「はい!」


「うっうん!」


アリスの掛け声で三人は手を取り合った。


「これで何があっても一緒だよ。」


「そうだね。」


「温かい…」


すると異次元の狭間に落ちる寸前で、三人を眩しい光が包みこんだ。


「この光って…?」


「私達をまるで包み込むような…」


「これって!!」


そして気がつくと一瞬にして優梨達は城の外に脱出した。


「ここって、城の外だよね…?私達、助かったの…?」


「ユリさん、今のはまさか…?」


「間違いない、アイルちゃんだよ!スキルを使って私達をここまで運んでくれたんだ!」


「アイルちゃん…?それって、誰のこと…?」


「まだ話してなかったけど、私をこの世界に召喚した天使の子が居るんだ。」


「天使って実在するの…?」


「ええ、実在します、現に私もこの世界に来る前は天使でしたから…」


「そっそうだったの…?」


「はい…」


「私も直接は会ったことはないよ。彼女、アイルちゃんは天界からテレパシーでずっとサポートしてくれていたんだ。」


「そっか。その子が居なかったら、私達は出会ってすらなかったんだね。感謝しなきゃ。」


「本当だね。」

(アイルちゃん、ありがとう。スキルを使って私達を脱出させてくれたんだよね。本当に助かったよ。)


しかし応答はなかった。


(あれっ…?おーーい…?)


「どうしたの…?」


「それがアイルちゃんから返事が返ってこないんだ…?」


するとザクロ大佐の城が物凄い音を立てて崩れて、跡形もなく消え去ったのだった。


「びっくりした…」


「主のザクロ大佐が倒されたから、城もその姿を保てなくなったのかな…?」


「そっか、だからか…」


「あの、ユリさん、さっきアイルさんから、返事が返ってこないと仰ってましたよね…?」


「うっうん、どうしてかな…?」


「私の推測で申し訳ないのですが、もしかしたらさっきの術を使ったアイルさんって方は今頃…」


「えっ…?」


一方、その頃、天界では…


「アイルちゃん、しっかりしてぇ!!」


「ごめ…んね…メア…ちゃん…私…あなた…との…約束…守れ…なくて…あっ…」


アイルはメアに抱きかかえられながら完全に意識を失った。


「アイルちゃんー!!」


すると扉を開けてエイラが入ってきた!


「こうなると思ってましたわ!」


「エイラさん…」


「泣くのは後にしなさい!さぁ早く、アイルを女神様の元まで運びますわよ!」


「うっうん!」


二人は急いでアイルを女神のいる神殿まで運んだ!


「ハァハァ…ハァハァ…」


『これは非常にまずい状況ですね…アイルさんの天使力が底を尽きかけています。』


「お願いです!!アイルちゃんを助けてください!!」


「わたくしからもお願いしますわ!」


『ええ、もちろんです。すぐに天使力を回復させる儀式に入ります。あなた達は待っていてください。』


「何か手伝えることはありませんか!じっと待ってるなんて出来ません!」


「わたくしだって手伝いますわ!アイルはわたくしにとっても"大事な存在"なのですから!」


「えっ…?」


『あなた達のお気持ちは確かに受け取りました。

 ですがこの儀式は一人で行わければならないのです。だから待っていてくれますか?』


「わかり…ました…」


「ええ…わたくしもですわ…」


『安心してください。アイルさんは必ず救ってみせます。では急ぎますね…』


女神は意識のないアイルをお姫様抱っこで持ち上げると神殿の奥の扉を入っていった。


「アイルちゃん…」


「大丈夫ですわ…女神様を信じましょう…?」


「エイラさん、さっきアイルちゃんのことを…大事な存在だって言いましたよね…?もしかして、あなたアイルちゃんに…?」


「勘違いしないでください!わたくしはライバルとの決着がこんな形で終わりたくないだけで…」


「本当ですか…?」


「あっ当たり前でしょう!それ以上の意味などありませんわ!」


「そうですか…」


(でも…本当にそれだけなのかしら…)


エイラは自分の気持ちに気づかず、心の中で自問自答していた。


(女神様…アイルちゃんを救ってください…)


ちょうどその頃、女神はアイルを花でいっぱいのベッドに寝かせていて、儀式を始めようとしていた。


『受け取りなさい。』


女神は眠るアイルの顔に近づくと、唇にキスをした。


『どうやら間に合いましたね。』


アイルの体が光り、一刻を争う険しい表情から一変、安心した表情になった。


『無茶をさせましたね…許してください…しかしこれであなたはまた一段と天使としての力を磨けた…

計画通り、私の後を継ぐ者にふさわしい存在になれる…そしていずれあなたは私の…』


女神は小さく何かを呟いたら、額にもう一度、キスをした。


『10年前より美しくなりましたね。』


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