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59話 クマ子(魂:アーノ大尉)になるまで(前編)

『あなた…?クマ子ちゃん…じゃないの…?』


「今、自分のことをアーノ大尉って…?でも姿はクマ子ちゃんだよ…ね?」


「申し訳ありません、お二人を混乱させていますね。私がなぜクマ子さんの姿をしているかというと、気絶したクマ子さんの体に憑依させてもらっているからなんです。」


«クマ子ちゃんの体に憑依!?»


「はい。そうです。」


「でも一体、どうして…?あなたがクマ子ちゃんの体に…?」


「ええ。なぜこうなったか説明したいと思います。」


今から遡ること数分前…


「これが天国に行くか、地獄へ行くかを決める"審判の間"に繋がる門ですか。」


「では次の者、門を通れ。」


「はい。」

(きっと私は萌子のいる場所に行くことは…)


アーノ大尉が門を通ろうとしたその時…


「待ってください!」


「えっ…?」


後ろを振り向いて居たのは息を切らした天使のメアだった。


「天使が一体、何の用だ!」

「ここは許可もなく天使が自由に行動していい場所ではないぞ!」

「名前と所属を言え!」


門番が問いただしてきた。


「ハァハァ…私は女神様からの使いの者です!

そこにいる方を神殿にお連れしてくるようにとお願いされまして!」


「女神様が私を神殿に…?」


「そんな話は聞いていないぞ!怪しいやつめ、この者をひっ捕らえよ!」


「はっ!」


メアは両腕を掴まれた。


「本当なんです!信じてください!」


「ええい!まだしらばくれるか!」


『その子の言っていることは本当のことだよ?』


«えっ…?»


すると門を通って現れたのは場違いじゃないかというぐらいの派手な衣装を身に纏って、さらにおしゃれなデコレーションのされた笏を持った女の子だった。


「誰…?」


「おや?天使ちゃんは私のこと知らない?」


「うっうん…?」


「きさま無礼者だぞ!この方はだな!」


「いいよ。いいよ。怒らないであげて。私から教えてあげるから。」


「よろしいのですか…?」


『アフィリア、君は可愛いんだから。そんな怖い顔しちゃ駄目。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。』


女の子は頬を触り、ニコッと笑ってみせた。


「笑顔の門番なんて威厳がありません…」


「え〜?常識にとらわれてたらつまらないよ〜?」


「あっあの…?」


「まだ話の途中だったね。私は"閻魔大王"のエミリだよ。よろしくね。」


可愛くピースをした。


「あなた様が審判の間で一番偉い、閻魔大王のエミリ様だったんですか!?」


「そうだよ。」


「申し訳ありませんでした!私、大変、失礼なことを!』


「気にしない。気にしない。知らなかったんだし。仕方ないって。」


「そっそうですか…?」


「オッホン。それで閻魔様?さっきこの者が本当のことを言ってると仰いましたが何か知っていらっしゃるので?」


「ついさっきだけど連絡があったんだ。愛しの女神ちゃんからのお願いだから断れないよね。」


「なるほど、そうでしたか。おまえらその者の拘束を解いてやれ。」


«はっ!»


拘束を解いた。


「よかった…」


「誤解も解けたところで。私の部屋で少しだけお茶していかない?最近の女神ちゃんの話でも…」


「閻・魔・様?また仕事をサボろうとしてますか?」


「あらら、また怖い顔に戻ってるよ、アフィリア。」


「閻魔様にはやってもらわなきゃならない、お仕事がいっぱいあるんですよ。とっと審判の間に戻ってきてください。」


「そんな殺生な〜」


「仕事は仕事です!」


「女神ちゃんによろしく伝えといてね〜?』


「わかりました…?伝えときます…?』


閻魔大王のエミリは引きづられながら、審判の間に戻って行った!


「はっ!こんな呑気にしてる場合じゃない!急ぎましょうか!」


「ちょちょっと!」


メアは動揺するアーノ大尉の腕を掴むと、天界まで繋がる道を走り出した。


「ここを通ればすぐに天界に着きますから!」


「知ってます…いちよう私も昔は天使だったので…』


「聞いてます。私達の大先輩なんですよね。」


「聞いてもいいですか…?」


「なんですか?」


「どうして私は天界に…?」


「それは…」


「それは…?」


するとメアは立ち止まってアーノ大尉の手を握った!


「あなたの力が必要だからです!」


「私の力がですか…?」


「実は…」


メアはアーノ大尉に今、優梨に起こっている事態を伝えた。


「そっそんな…?まさかそんなことになっていたとは…?』


「だからこそ、あなたの力が必要なんです!」


「わかりました!」


「わっ!?」


今度はアーノ大尉がメアの腕を掴んで走り出した。


「急ぎましょう!」


「協力してくれるんですか!」


「ユリさん達のために出来ることがあるならしたいんです!」


「アーノ大尉…」


(ユリさん、待っててください!あなたが私の心を救ってくれたように次は私があなたを救ってみせます!)


アーノ大尉は走りながら、心の中で強く決意した。



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