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56話 大波乱の魔族戦

一方、その頃、アイルは優梨とテレパシーを取ろうと必死に呼びかけていた。


「返事してください!!優梨さん!!」


しかし応答は全く無かった。


「だっ駄目だ、いくら呼んでも…返事が返ってこなです…」


アイルは頭を抱えてふらついた。


「気をしっかり持って!」


「ハァハァ…」


(この様子…まだ回復しきってなかったんだ…)


「水晶がいきなり黒く濁り始めて、見えなくなったと思ったら、こんなことに…何が起きたんでしょうか…?」


「私にもわからない…でも何か強い力によって、遮断されているのは確かだと思う…」


「このままじゃ…優梨さんが…天使の力を…」


「女神様なら何とかしてくれるはず!私、行ってくるよ!」


「メアちゃん!」


「アイルちゃんはその間、少しでも休んでて!」


メアは女神様のいる神殿に走った!


「休んでなんていられないよ…」


アイルはテレパシーで呼びかけるのを続けた。


【だが、このまま戦っても、スリルがなくてつまらんだろう、それでだ、この戦いを面白くするために我は再びゲームを開催しようと思う。】


「またゲームを…?」


「今さら何のゲームをしようってんだ…?」


【それはあれを見ればすぐにわかる。】


ザクロ大佐が指を鳴らした瞬間、クマ子を閉じ込めている鳥籠の檻が黒い霧に包まれた!


「なっなんだこの霧…意識が…」


クマ子は意識を失った。


«クマ子ちゃん!!»


【ゲームの内容は簡単だ。我を殺し、人質を開放するだけのシンプルなもの。

 そしてベアー中尉にはゲームの人質になってもらう。】


「ふざけるな!!クマ子ちゃんを人質になんかさせるもんか!!」


「今、助けるからね!!」


【助けるのもいいだろう、だがオススメはしない。爆発するぞ。】


«えっ!?»


【あの囲んでいる黒い霧は我の魔力が凝縮されて出来たものだ、少しでも外部から触れたりすると、爆発する仕掛けになっているのだ。】


「どこまで卑怯なんだ!!」


【あと言い忘れたが、あの霧の中で生きていられるのもあと数分ぐらいだぞ。

 それ以上経つと、魂は消え、ただの抜け殻になるからな?フハハハッ!】


「てめえ!!」


「殺させてたまるか…」


「この感じって!」


【何だ?】


「クマ子ちゃんは私の大事な友達なんだ!!」


優梨は眩しい光を放った!


「ぐっ!」

(ユリちゃんすごい!以前よりも魔力が上がってる!)


【ほう、これまでの戦いを見させてもらっていたから知っているが、実際に感じるとよくわかるぐらい、魔力が一気に高まった。きさまも只者ではなさそうだな?】


「あなたをとっと倒して、すぐにクマ子ちゃんを救ってみせる!」


「そうだ!アタシにとってもクマ子ちゃんは妹みたいな存在になりつつあったんだ!絶対に救ってみせる!」


【ではゲーム開始と行こうか?】


「先手必勝だよ!ユリちゃん!」


「うん!」


「ファイアー・ショット!!」

「フレイム・ショット!!」


アリスと優梨が同時に放った炎の弾丸が一つに重なって、勢いよくザクロ大佐に向かっていった!


【その程度の火炎、簡単に止められる。】


手を下げる動作をすると、炎の弾丸は落下して消えた。


«だったら!»


二人は二手に分かれた!


【我を攪乱させるつもりだろうが、無駄な努力だ。】


「やってみなくちゃわからないよ!」


「そうだ!」


【ならば試してみろ。】


「ほざけ!!フレイム・スマッシュ!!」


「うおぉっ!」


アリスと優梨は両端からザクロ大佐を殴ろうとした!


【馬鹿め、どちらかは当たると思っているな?】


«ぐわっ!!»


【しかし残念だったな。】


二人の攻撃は届かずに寸前で止められた!


「ぐっぐ…これが重力の力か…」


「まさか…両端から攻めても止められるなんて…」


【ではそろそろ我からも攻撃させてもらおうか。】


ザクロ大佐は手を鉄砲の形にして、二人に向けた。


【リパルション・ショット。】


«きゃぁぁ!!»


二人はそれぞれ壁まで吹き飛ばれて叩きつけられた!


「ガハァッ…こんなに飛ばされるなんて…」


「これが斥力の力なの…ガハァッ…」


どちらも血を吐きながら床に膝をついた。


【もうダウンか?】


「んなわけねぇだろうが…」


「私だって…」


【そうか、ではこれならどうかな?】


ザクロ大佐は両手を広げた。


「何をするつもりだ…?」


「まさか降参…?」


【グラビティ・ハンド。】


«うわぁっ!!»


二人は吸い込まれるように飛んでいった!


「ぎゃっ!!」

「ぐはっ!!」


【よく来たな?】


そしてどちらとも首を強く締められた!


「あががっ…」

「あぐぐっ…」


【苦しいだろう?しかしすぐには楽にしてやらんぞ?じわじわと締めて殺してやる。】


「誰が…殺されるか…」


アリスは手を離そうと足掻いた。


【この状況で抵抗する気力があるとはな?流石は我が欲しがった駒だ。】


「駒だと…」


【だが、きさまはそれを断った、くたばれ。】


「あががっ…」


「させるか…シャイン・ハンド…」


【ゔっ!眩しい!】


優梨の発光した片手にザクロ大佐は目を眩ませて、手を離した!


「ガハァッ!ゴハァッ!」


「ハァハァ…大丈夫…アリスちゃん…?」


「ありがとう、助かったよ…」


【よくもやったな?】


「きゃっ!!」


「なっ!?」


優梨は上にあげられた!


【倍にして返しやる、グラビティ・ドロップ!】


「ぎゃぁぁ!!」


そして何度も何度も床に叩きつけられた!


「ガハァッ!!」


【まだだ!】


「やめろー!!」


【ぐっ!】


それをアリスは全力で腹部に蹴りを入れて止めた!


「ガハァッ…ガハァッ…」


「しっかりして!!」


「アリス…ちゃん…」


「今、回復薬を!!」


アリスは一旦、ザクロ大佐から距離を取って、優梨に回復薬を飲ませた。


「どう…?」


「大丈夫…痛みが引いてきた…」


「よかった…」


【今のは少し良い攻撃だったぞ?少しだが効いた。】


「少しだと…?」


【しかしそこの娘、なぜきさま、あの姿にならない?】


「あの姿って…天使…?」


【我ら魔の者には光属性の術が効果抜群なのは知っているはずだろう?】


「そっそれは…」


【それとも使わないんじゃなくて、使えないの間違いかな?】


「なっなんでそれを…?」


「その反応、奴の言った通りなの…?」


「うっうん…」


【きさま気づいていなかっただろうが、我は予め、この空間にほかの者達が干渉出来ないように強力なバリアを張ったのだ。」


「だからなのか…」


優梨はこの時、アリスからあることを注意されていたことを思い出していた。


『エンジェルとつく術は本来、天使にしか扱えない術です。

 なので優梨さんが唱えるには私達、天使が協力しないと唱えることは出来ません。覚えておいてください?』


【どうやら、我の予想通り、きさま一人ではあの姿にはなれないようだな?】


(じゃあつまりアイルちゃん達のサポートがない…?どうしたら…?)


優梨は放心状態になった。


「ユリちゃん!」


【このゲーム、我の作戦勝ちのようだ。フッハッハッ!!】


ザクロ大佐の冷徹な笑い声が響いた。



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