55話 おまえの部下になんか絶対ならない!!
数々の激戦を制して、いよいよ残るは城の主の魔族ザクロ大佐のみになった。
そしてついに優梨達は最上階に繫がる扉の前に辿り着いたのだった。
「いよいよだね…」
「この扉の先に奴がいる…」
「どうだ?二人ともビビってないか?」
「ううん、戦う覚悟ならいつでも出来てるよ。」
「アタシも早くぶっ飛ばしたいと思ってる。」
「恐い娘達だべ。でもオラも同じ気持ちだ。」
「ただ…」
「ただ何だよ?」
「アリスちゃん?」
「ユリちゃん、クマ子ちゃん、絶対に生きて一緒に帰るって、約束して…?」
「約束するよ。みんなで生きて帰ろう。」
「仕方ねぇな。オラも約束してやるべ。」
「二人とも…ありがとう。」
(私も全力でサポート致しますよ。)
(アイルちゃん、まだ寝てなくて大丈夫なの…?)
(はい!)
(そう…?)
「じゃあ、開けるよ。」
「おう!」
「うっうん!」
扉を開けた。すると…
«えっ!?»
三人が驚いたのも当然である、なぜなら闘技場は宇宙空間に浮かんでいたからだ。
「まさか、地球の外で戦うことになるなんて…?」
「どうやら空気はあるみたい、宇宙空間に見立てた場所だよ…」
「当たり前だべ…?そうじゃなきゃ、とっくにオラ達、くたばってるぞ…?」
【よくここまで来たな、ゲームをクリアしたこと褒めてやろう】
「どこから声が!」
「その声はザクロ大佐だな!」
「姿を現しやがれ!!」
【そう騒がなくとも、姿ぐらいすぐに見せてやる。】
すると宇宙空間からザクロ大佐は現れて、闘技場の中心に降りた。
「そんな場所に隠れて、アタシ達を待っているなんてどこまでも卑怯な野郎だな…?」
【べつに隠れていたのではない。ここは我が作り出した異空間、自由自在に移動できるだけのことだ。】
「ザクロ大佐が作り出した異空間…?」
【そんなに驚くことか、我は魔族だぞ?こんなもの容易く作れて当然だ。】
「そっそんなことが出来るなんて…?」
【正直、我もきさまらに驚いている。我の部下を全員倒すとまでは想定してなかったからな?】
「それは残念だったな?」
【だが、嬉しい誤算というべきか。】
「嬉しい誤算だと…?」
「おめえ、何言ってんだべ?」
【しかしベアー中尉、きさまだけは許せんぞ?
部下にしてやったというのに、恩を仇で返したのだからな?】
ザクロ大佐の目つきが変わり、クマ子に殺気を放った。
「なっ何とでも言え!今のオラの仲間は優梨とアリスだけだ!」
«クマ子ちゃん…»
【絶対にきさまは生きてこの城から出さんぞ?】
「舐めるな!!」
「駄目だよ!!」
「戻って!!」
「くらえー!!ベアベア・ムカムカ・パンチ!!」
クマ子は物凄い速さで走って、ザクロ大佐の顔面を殴ろうとした!
【予想通りだ。】
一切の動揺などぜずに人差し指を向けてた。
「ぐわぁ!なんだ!」
「クマ子ちゃんの動きが寸前で止まった!」
「ザクロ大佐の能力だよ!10年前にアタシも見たから!」
「じゃあ、あれが重力を操る能力なの…?」
「身体重くて…これ以上、前に進めないべ…まるで…強風に押さえてるみたいだ…」
【本来、きさまに戦いに参加する資格はない。】
「なっ何だと…?」
【だからきさまには別の形で役に立ってもらおう。】
「うわぁぁ!!」
«クマ子ちゃん!!»
クマ子が空高く打ち上げられて、天井に作られた鳥籠のような檻に閉じ込められた!
「出しやがれ!!」
「あんな所に閉じ込めるなんて、ひどい!」
「クマ子ちゃんをどうするつもりだ!!」
【きさまらの返答次第では開放してやらんこともない?】
「えっ…?」
「返答次第だと…?」
【きさまら、我の部下にならないか?】
«なっ!?»
【もし、部下になるというのなら、あの裏切り者の粛清もしないし、町も襲わせないと約束しよう。】
「そっそんな…」
「最初からそれが狙いで…」
【何を迷うことがある?部下にさえなれば、お前らの大事なものは守れるのだぞ?】
«ぐっ…»
「おまえら、断るんだ!!」
«クマ子ちゃん!»
【黙れ。】
「ぐぁぁっ!」
クマ子は重圧をかけられて苦しんだ!
「やめろ!!」
「やめて!!」
【止めて欲しければ、良い返事をすることだ。】
「卑怯者が…」
「どっどうしたら…」
(安心してください!私のスキルでクマ子さんを助けますから!)
(そっか、お願い出来るかな!)
(空間移動!)
しかしクマ子が移動することはなかった!
(どっどうして…?何も起らない…?)
(大変…です…何…かの…邪魔で…サポー…トが…)
(アイルちゃん!?)
そして完全にテレパシーが途切れた。
(アイルちゃん!アイルちゃん!駄目だ…いくら呼びかけても返事がない…?)
【さぁ、早く返事をしろ。さもなくばあの裏切り者がペシャンコになるぞ?】
「ぐわぁぁっ!」
(動揺してる場合じゃない…)
「クマ子ちゃんをみすみす見殺しになんか出来るか…」
「それは…私もだよ…」
【ということは。】
「ふざけるな!!」
«えっ?»
「ユリ、もし部下になりやがったら!たとえおめえさんでも大っきらいになるからな!」
「大っきらいになる…」
「アリス、おまえもだ!おめえの姉ちゃん、きっとすごく悲しむぞ!」
「お姉ちゃんが悲しむ…」
【馬鹿か、そのような戯言ほざこうと、この状況で出る答えなど一つしか。】
「そうだった、答えは一つしかなかった…」
「うん…」
【だろうな?】
«おまえの部下になんか絶対にならない!!»
「ユリ…アリス…」
【何…?部下にならないだと…?】
「だから心配しないで、クマ子ちゃん!」
「あなたは私達が絶対に助けるから!」
「心配なんかしてねぇよ…」
【正気かきさまら…?】
「あんたみたいなクズの部下に誰がなるか!」
「同感だよ!」
「それでこそ、おまえらだ…」
【フハハハッ!言ってくれるじゃないか?
いいだろう、だったらきさまらは今から消さねばならない我ら、魔の者の敵だ!】
ザクロ大佐は魔力のオーラを放った!
「町とお姉ちゃんを守るために!」
「クマ子ちゃんを救うために!」
«絶対に倒してみせる!!»
アリスは右腕から炎のオーラを纏い、優梨は瞳に百合の花のシルエットが現れた。
【その強気な姿勢をすぐに恐怖で塗り固めてやるぞ。】
ついに優梨達vs魔族ザクロ大佐の激戦の火蓋が切って落とされた!




