48話 アイル、新たなスキル「空間移動」
スネーク大尉を倒して、優梨達がしばしの休息をとっていた頃、次の階にいるアーノ大尉がザクロ大佐に連絡していた。
「スネーク大尉まで殺されましたが、よろしいのですか?」
【大尉クラスが居なくなったのは多少は痛手だが…まぁ、いいだろう…それ以上の収穫はあったからな。】
「それ以上の収穫とは?」
【気にするな、こっちの話だ。いよいよ、残る駒はアーノ大尉、君だけだ。】
「承知しています…」
【素晴らしい"結末"を期待している。】
ザクロ大佐は意味深なセリフを呟くと連絡を切った。
(一体、何を企んでいる…)
そして当の本人のザクロ大佐は机に赤い石を置いて眺めていた。
【ふん、馬鹿な奴だ。】
さらにその頃、アイルのいる天界で2つの大きな動きがあった。
−天界大図書館にて−
「あった!あったよ!ザクロ大佐に関しての情報が記された本が!」
「リル君、本当かい?」
「ほら!これ見て!」
「ふむふむ、確かに魔族のザクロ大佐の情報が書いてありますわ!」
「リル君よくやったね。お手柄だよ。」
セーナはリルの頭を撫でた。
「えへへ。」
「ちょっと何やってるのよ!どさくさに紛れて!」
「あはは。ごめん。ごめん。でも怒ってるリラ君も可愛いよ?」
「そんなので誤魔化されるかーい!」
「事実を言ってるのに…?」
「わたくし、すぐにこの本をアイルのもとに届けに行ってきますわ!」
「あっうん!エイラ君、頼んだよ!」
「エイラお姉様…」
−続いて神殿内にて−
『アイル。今度、あなたに与えるスキルは"救いたい相手を空間移動させて救うことが出来る能力です。』
「わぁ。それはありがたいスキルです!」
『ただですね…』
「ただ…?」
『約束して欲しいことがあります。』
「約束ですか…?」
『ええ。そのスキルは一日に3回までしか使用しないこと。』
「なっなぜですか…?」
『理由はたった一つ。一度唱えるだけでも天使力を大幅に消耗するからです。』
「天使力を大幅に…」
『いくら天使力の強いあなたでも、3回以上唱えた場合、命が危険になる可能性があります。』
「そっそうだったんですか…」
『だから絶対に3回以上は唱えてはなりません。それを約束できるなら、スキルを与えましょう。』
「わかりました!誓って約束します!」
『絶対ですよ。』
「はい!」
「アイル!」
エイラが本を持って走ってきた。
「どうなされたんですか…?」
「天界図書館にザクロ大佐について書いてある本があったから、持ってきたのですわ…」
「そんなものがあったんですか!」
「ええ、みんなで探したら、ありましたわ…」
エイラは古い本を渡した。
「あっありがとうございます。」
「お礼なら見つけたリルさんに…」
「息を切らしてまですぐに届けに来てくれたエイラさんもですよ。優しい方だったんですね。」
「かっ勘違いしないでくださるかしら…わたくしは少しでも救世主の手助けになればと思っただけです…」
「それでも嬉しいです。」
「なっ…」
エイラは顔を真っ赤にした。
『さぁ。スキルを与えますよ。目を閉じてください。』
「はい。」
アイルは目を閉じて、祈りのポーズをした。
「もっもう…」
(あんなのよ…あなたはわたくしのライバルなんだから…だけど…)
不思議と嬉しかったことに気づいていた。
『我、この者に新たなスキルを与える。』
アイルは七色の光に包まれた。
「いつ見ても美しい光景ですわ…」
『エイラさん。万が一を考えて、あなたにもアイルさんに与えたスキルの危険性を伝えておきます。』
「スキルの危険性ですか…?」
『ええ。』
(本当はこのスキルを与えたくはなかった…あの方が得意だったスキルを…)
女神の表情が曇っていた。




