42話 優梨vsザクロ大佐の部下(三階編③)
無事に地上に着地出来たものの、攻撃のダメージが大きかったらしく、優梨は額から血を流し、意識が朦朧としていて、地面に膝をついた。
「ハァハァ…」
(視界が…ぼやけてる…)
(大丈夫ですか!)
(まぁ、何とか…というよりエンジェル・ウィングを唱えたら、魔の者の攻撃に耐えられるはずじゃ…?)
(そっそうか!あの娘はまだ完全に魔になりきっておらず、普通の物理攻撃として受けたんですよ!)
(魔になりきってない…?)
(ザクロ大佐の部下になりたくないという気持ちがあるということです!)
(そうなの…?)
(これは逆転のチャンスですよ!)
「もういい!戦わないで!それ以上、ダメージを受けたら、本当に殺されちゃう!」
「オラも今のでスッキリしたし、おまえが負けを認めたら、許してやってもいいぞ?」
「だって!」
「誰が負けを認めるもんか…」
「まだやるつもりか?」
「もちろん…あなたに勝たなくちゃ…
町も…アリスちゃんも守れない…」
「ユリちゃん…」
「信じて…必ず勝つから…」
「わかった。」
「ほう、そんな状態でまだオラに戦いを挑むのか?」
「そうだよ…」
「いいべ、とことんやってやるよ!そのかわり手加減はしねぇからな!ガォウー!」
くま耳幼女は優梨に全速力で向かってきた!
(今です!例のやつを!)
(いくよ!)
優梨は目を閉じて、祈りのポーズをとった。
「神頼みか!勝負を捨てたな!」
(いや!あれは勝負を捨てた顔じゃない!)
「潔く散れー!」
「エンジェル・ヒーリング!!」
「ぐわぁ!?眩しい!?」
くま耳幼女の周りを神々しい光で包み込んだ。
「そっそうか!これで目潰して、その隙に攻撃するつもりだな!とんだ卑怯者だべ!」
「違うよ。あなたを邪悪から救いたいの。」
「オラを救いたいだと…?ああっ…」
次第にくま耳幼女の体から邪悪なオーラが消えて、表情が柔らかくなっていった。
「不思議だ…さっきまでのやさぐれた気持ちがどこかにいっちまったみたいだべ…」
(よかった…あの様子…浄化しきれたみたいだね…)
(エンジェル・ヒーリングは敵に少しでも良心的な心があれば効果がある力ですからね。)
「オラ…何でおめえさんをあんなに憎んでたんだろう…ただ純粋に戦いに負けたことが悔しかっただけなのに…」
「いいんだよ。」
「えっ…?」
優梨は優しく微笑むと頭をそっと撫でてあげた。
「きっとあなたはザクロ大佐に気づかないうちに操られていたんだよ。
でも本当のあなたは"悪い熊さん"じゃない。純粋で素直な熊さんだと感じたよ。」
「オラをそんな風に思ってくれるのか…?」
「ほらね。素直に照れてる。」
「べっべつに照れてなんか…」
くま耳幼女は顔を真っ赤にした。
「でもこれって、戦いに勝ったことになるのかな…?」
「そこは安心するべ…オラが負けたと認めれば、おめえさんの勝ちだ…」
「そうなの…?」
「オラの負けだよ、完敗だ。」
「ありがとう。」
「お礼なんか…」
「なんか安心したら…力が…」
「おっおい!」
(優梨さん!)
「ユリちゃん!」
アリスが慌てて駆けつけた!
「ごめん…気が抜けちゃったみたい…」
「これだけのダメージを受けてたら当然だよ!すぐに回復薬を!」
「ありがとう…ゴクッゴクッ…ぷはぁ…」
「すまねぇ…オラが手加減しなかったから…」
「戦いだったんだから仕方ないよ。自分を責めないで?」
「おめえさん…」
「どうしたの?」
くま耳幼女はもじもじと恥ずかしがった。
「なっなぁ…?今さらだと思われるかもしれないけど…おめえさんの名前を教えてもらえるべかな…?」
「もちろん、いいよ。私の名前は園咲優梨。」
「ソノサキユリか…」
「そういえばあなたの名前を聞いてなかったけど、ムカムカベアーちゃんでいいのかな…?」
「その名前はモンスターの頃の名前だ…」
「じゃあ、今は?」
「ザクロ大佐からは"ベアー中尉"って名付けられたけど、あんま気に入ってねぇんだ…新たにおめえさんが名前を与えてくれないか…?」
「えっ!?」
「私が…?いいの…?」
「頼む…」
「じゃじゃあ、クマ子ちゃんってどうかな…?」
「クマ子か…」
「ちょちょっと!ユリちゃん!それは主従契約の上書きになるんだよ!」
「えっ…?主従契約の上書き…?」
「知らなかったの…?主のいる魔物やモンスターに新たな名前を与えてそれが受け入れられると、主従契約が上書きされるんだよ…?」
「そっそれってつまり…?」
「今日からおめえさんがオラのご主人様だ〜!」
甘えるように抱きついた。
「なっなっ何ですとーー!?」
「嫌だったか…?」
「嫌じゃないけど!そういう問題じゃなくて!」
「じゃあ、いいじゃんか。」
「あなたザクロ大佐の部下じゃないの!?」
「やめる、あいつ主として超ブラックだったし。」
「そっそうですか…」
「それにそもそも仕えるなら、おめえさんみたいなピチピチした年頃の女がいい。」
「言い方がおっさんみたいだね…?」
「確かに…?」
「仕方ないべ。ムカムカベアーだった頃、オラの性別は♂で人間でいう所の中年だったからな。」
「何!?」
「ということは魔物になって、性転換したってこと…?」
「そういうことだ。今は女だし、気にしないでくれ〜。」
「それもそうか…?」
「駄目〜!!」
アリスがクマ子を引き剥がした!
「なっ何するべ!」
「あなた、姿は変わっても元はおじさんなんでしょう!下心あるに決まってるから!」
「下心あるの…?」
「そんなのないよ。信じて、ユリ。」
クマ子は袖を掴むとつぶらな瞳で訴えた。
「そっそんなの…」
「ユリちゃん…?」
「そんなのずるすぎるってば〜!!」
優梨がクマ子を抱きしめた。
「信じてくれる?」
「信じる!」
「ありがとう。」
(ヘッヘッヘ、どんなもんだい?)
クマ子はアリスに向かって、勝ち誇ったようにニヤリと笑った。
「こいつ…」
「アリスちゃん、どうして怒った顔してるの?」
「知らない!」
顔を膨らませるとそっぽ向いた。
「あれれ…?」
「アリスか…オラの恋のライバルだな。覚えておくべ。」
くま耳幼女、クマ子が仲間になった。




