37話 アリスvsザクロ大佐の部下(一階編)
魔族ザクロ大佐の城、初戦の相手、ウルフ少尉はなんとアリスが10年前に倒したはずだった!
「俺のことを知ってるってことはおまえがあの10年前のチビだってことだな?」
「なっなんで…」
「ああ、俺が生きてるのかって?
その答えは簡単だぜ、生き返ったんだ。
ザクロ様の粋な計らいでな。」
「そっそんな…」
「アリスちゃん…」
(魔物って殺されても生き返れるの…?)
(作り出した主がいる場合、素材が一つでもあれば復活させることは可能だったはずです。)
(まるでゾンビみたい…)
「それにしても俺の事を覚えてくれてたとは嬉しいねぇ?」
「忘れたくても…忘れられるか…あんたは…あの時…お姉ちゃんを…」
アリスの脳裏に10年前のトラウマが蘇った…
『アリス!!今、そっちに行くから!!』
『来ちゃ駄目!!』
『邪魔だ!』
『ガハッ…』
殴られたミーナはアリスの目の前で血を吐いて倒れた。
『お姉ちゃんー!!』
「はっ!ハァハァ…」
アリスは我に返った。
「だっ大丈夫!」
「ハァハァ…大丈夫…」
「そういえば、あの時、俺がぶっ飛ばした女は一緒に来てないのか?」
「それって、お姉ちゃんのことだよな…?」
「あの時、殺しきれなかったのを可哀想に思ってたんだ。ここに来てたら、今度こそは確実に殺してやったのによ。なっ?俺って優しいだろう?」
「おまえ…」
「とっと戦いを始めようぜ、どっちが相手だ?出来れば10年前の借りを返したいから、俺的にはおまえがいいんだけどな?」
「いい度胸だ…やってやるよ…」
「ヘッヘッヘ、そうじゃなくちゃな?」
「待って!」
戦おうとするアリスの腕を掴んで止めた。
「なっなぜ止めるの…?」
「冷静じゃないからだよ!
完全に頭に血が上ってるように見える!
それじゃ相手の思う壺だよ!」
「だからいいんだよ…」
「えっ…?」
するとアリスの右腕が青い炎のオーラに包まれた。
「その力、出やがったな。」
(そっそっか!アリスちゃんはミーナさんを傷つけられた過去の怒りでスキルを発動させたのか!)
(確か感情スキル「恋する少女の怒りのパワー」ですね?)
「アタシに戦わせて、お願い。」
「わかった…」
「ありがとう。」
「必ず勝ってね…?」
「負けないよ、アタシは。」
「戦わねぇ奴はフィールドから出ろ!戦いの邪魔だ!」
「わっわかってるよ…」
優梨は闘技場の外に出た。
「10年前は油断したが、今度はそうはいかねぇ、その小さい体を跡形も残らないぐらいにボコしてやるぜ!」
「それはこっちの方だ!」
両者、攻撃を通さず、激しい攻防戦を繰り広げた!
(アリスちゃんと互角だなんて…?)
(ウルフ少尉という魔物、強いですね。)
「10年前はこんなに強くなかったはず…」
「ヘッヘッヘ、だからあの時は油断してただけだって言ったろう?」
「でもこの程度なら、十分、殺せる…」
「生意気な事言ってくれるじゃねぇか?でもこれを見ても同じ事が言えるかな?ワオォォン!!」
ウルフ少尉は犬の遠吠えのような叫び声を上げると、黒いオーラを放った!
(なっ何が起きてるの!?)
(ウルフ少尉の魔力がみるみる上がっています!)
そして図体が一回り大きくなって、姿が狼そのものになった。
「ガルルッ…お待たせたな、これが本来の俺の姿だ!」
(まさか変身するなんて…?)
(変身しただけじゃありません!
レベルが30→35に上がりました!)
(一気に5も上がったの!?)
「どうだ、小娘?怖くて、ちびってねぇか?」
「誰が怖がるか。」
「ガルルッ…強がりやがって、その生意気な顔を噛み千切ってやる!」
ウルフ少尉は大きな口を開いて、アリスに迫った!
「逃げて!!」
「フレイム・ボール!!」
それを逆手にとって、無防備な口に青い炎の玉をくらわせた!
「グワァァ〜!?口の中が熱い〜!?」
「馬鹿みたいに大口開けて襲ってくるからだ。」
(アリスちゃんすごい…)
(敵を挑発して攻撃を決める。流石はCランク冒険者というべきでしょう。)
「こっこの野郎!!」
腕を上げて、鋭い爪で引き裂こうとした。しかし。
「どこを狙ってやがる。」
アリスはそれを予想していたのか、簡単に躱した。
「チクショ!チクショ!」
何度やっても一向に当たる気配すらなかった。
「ハァハァ…」
「今が本気だって?笑わせる。」
「調子に乗るな!!俺を怒らせたらどうなるか思い知らせてやる!!」
ウルフ少尉は再び、口を大きく開けた!
「また同じ攻撃か、芸のないやつだな?」
「ウルフ・ファイアー!!」
口から炎を吹き出して直撃させた!
「アリスちゃん!!」
「ざまぁみやがれ、油断してるからだ!
間違いなく跡形もなく消し飛んでるはずだ!」
「そっそんな…?」
「誰が跡形もなく消えてるって?」
「なっ!?」
煙が晴れ、姿を現したアリスは無傷だった。
「よかった…」
「あっありえねぇ…?あの攻撃をくらって、全くダメージがないだと…?」
「アタシは炎のスキルの持ち主なんだ。
炎への耐久性は人一倍あるんだよ。」
「おまえは化け物なのか…?」
ウルフ少尉は恐怖からか、後退りし始めた。
「もう茶番はこのぐらいにするぞ。」
「また殺されてたまるか!」
「あっ逃げた!」
「逃がすか!」
アリスは瞬時に追いついた。
「すっすまなかった、許してくれ!」
「今さら謝って許すと思ってるのか!
お姉ちゃんを馬鹿にした報いを受けろ!フレイム・スマッシュ!!」
「グハァァッ!!」
頬に強烈な一撃をくらったウルフ少尉は物凄い勢いで吹き飛ばされると、いくつもの岩に激突して、ようやく止まった。
「グハッ…まさか…ここまで…やるとはな…
なめてたぜ…」
「まだ意識があったのか?」
「強すぎるだろ…おまえ…」
「アタシはまだ今ある力の半分も出してない。」
「マジかよ…あれでか…
やっぱり人間じゃねぇな…俺の完敗だ…グヘッ…」
ウルーフ少尉は力尽きるとシュルルル…と消えていった。
「アリスちゃん!」
「倒したよ。」
「見てた。かっこよかった…」
「照れるな…」
そしてそれを最上階にいるザクロ大佐が水晶で見ていた。
【ほう、あの小娘、ウルーフ少尉を倒したか、やはり我が見込んだ通り、大きくなってさらに強くなったようだ。】
「しかしザクロ様、ウルフ少尉の肉体が完全に消えました。蘇生の術を使っても復活させることは出来ないはずでは?」
【何、気にすることはない。ウルフ少尉程度の魔物など、森にいるモンスターからでも作れる。】
「さようで…」
【小娘よ、喜ぶにはまだ早いぞ。上の階に行くほど待っている部下は強いのだ。もっと力を見せてくれ。フッハハッハッ。】
(部下を道具扱い、いつも見ても腹立たしい…)
アーノ大尉はザクロ大佐を睨みつけていた。




