34話 ヤンデレ天使メアの嫉妬
優梨達が地図を頼りに魔族ザクロ大佐の城に向かっていた頃、アイルは女神と同僚の守護天使達にこれまでの経緯を話していた。
『なるほど…救世主が初めての魔族討伐に…』
「等々、現れたね。敵の親玉が。」
「敵の親玉は魔王でしょうが…」
「あっそっか。」
「勘違いするリル君って本当に可愛いよね。」
「私って可愛い？」
「可愛い。可愛い。今度、デートしようか。」
「ちょっと、うちのリルにちょっかいかけないでよ！」
「おやおや、リラ君、やきもちかい？」
「ぐぬぬ…」
「安心して、絶対にしないから。」
「ガーン！」
「そっそれなら早く言いなさいよね…」
「皆さん、関係ない話はしないでください！
アイルちゃんが困っちゃいますから！」
「魔族と戦って、果たして倒せるのでしょうか…？」
「アイル、あなたは今の状態の救世主でも魔族を倒せると本気で思っているのかしら？」
「思ってます！」
「あなたがそう判断したなら、いいですわ。」
«えっ…？»
皆が同時に驚いた。
「あれっ…？エイラさんそれだけですか…？」
「ええ、それだけですわよ、何か？」
「いつもなら…戦うには早すぎる！レベルの違いで殺されるのが目に見えてますわ！今すぐ止めさせなさい！とかガミガミ文句を言われると思って覚悟していたのですが…？」
「ガミガミ文句って！わたくしを小うるさい女とでも仰っしゃりたいのかしら！」
「そっそこまでは言ってませんが、私の話を素直に聞き入れてくれるなんて思わなくて…？」
「確かにそうだよね…？」
「あのエイラさんが納得するなんてね…？」
「確かにボクも驚いたな。でもそれ以上に素直なエイラ君も可愛い。」
「べっべつに大した理由なんかありませんわ！
あなたのことは気に入らないけど、前に熱心に説明されて、救世主の素質と与えたスキルには無限の可能性を秘めていると知りましたし！相手とのレベルに差があっても、そのハンデを逆転出来るんじゃないかと思っただけで、つまり…そっそれだけのことです！」
「普段より、よく喋るなぁ。」
「照れ隠してるのが丸わかりよね。」
「照れてなんかいませんわ…」
「ありがとうございます！」
アイルは満面の笑みでエイラの手を握った。
«えっ！？»
それを見てサナとメアが激しく動揺した。
「なっ何のおつもり！？」
「エイラさんが私の努力を認めてくれたことが嬉しくて、つい。」
「そっそうですのね…？」
（ツンデレ女…アイルちゃんから手を…）
メアはギィッと唇を噛んだ。
「これからは仲良くやっていきましょう。」
「しっ仕方ないですわね…ライバルであることは変わらないけど…少しぐらいは仲良くしてあげますわ…」
盛大な拍手が起こった。
『蟠りが溶けた所で。話を戻しましょう。
私はアイルさんのために新たなスキルを考えます。
アイルさん以外の方々はそれぞれの役目を交代してもらって、天界図書館で、魔族の情報が書かれた資料を探してください。』
«かしこまりました！»
「皆さん、お忙しいのに協力して頂き、すみません。」
「水くさいな。頼っていいんだよ。」
「私達は仲間でしょう。」
「ボクもアイル君のためなら、何だって協力するよ。」
「私だって！アイルちゃんのためなら何だってするんだから！」
「しっ仕方ないですわね…不本意ですが、わたくしもやりますわよ…」
（私の後から…）
「私も…エイラお姉様がやるなら…」
『後は、私達でやっておきます。救世主のサポートに戻ってあげてください。』
「女神様…皆さん…ありがとうございます！」
アイルは深々と一礼すると、部屋に戻った。
『では皆さん。よろしく頼みましたよ。』
«はい！»
「さぁ、やるぞ〜！」
「リル、天界図書館はこっちよ！」
「あっまた迷子になる所だった。」
「ボクが迷わないようにエスコートしてあげようか？」
「いらない。」
「ガーン！そうかい…」
「行きますわよ。サナ。」
「はっはい！」
「私の恋の邪魔をするんだったら許さないからな…」
『メアさんどうかなさいましたか？』
「あっいえ。私も行ってきます。」
メアは笑顔を見せた。しかし心の中はエイラへの嫉妬でいっぱいだった。
