33話 魔族退治に行く前に
魔族の部下が伝言を届け去った後、ソフィーが来たので、全ての事情を話し、ミーナを預けることにした。
「ソフィーちゃん。お姉ちゃんを頼むね。」
「必ず無事に帰って来てね…?
もしアリスちゃんに何かあったら…
ミーナちゃん本気で悲しむんだからね…?」
「わかってる…お姉ちゃんを悲しませることだけは絶対にしない…」
アリスはミーナの寝顔を見つめた。
「ソフィーさん、安心してください。
私が全力でアリスちゃんを守ってみせますから。」
「ユリちゃん…」
「お願いするわね…?」
「はい!」
「それじゃあ、行ってくるね」
「行ってきます。」
「二人共、頑張ってね!」
二人は手を振って応えると店を出た。
「アリス…」
「寝言までアリスちゃんなのね…」
「駄目…魔族と…戦っちゃ…」
「アリスちゃんはあなたにとって何より大切な存在だものね…そう…何より大切な…」
寂しげな表情しながら眠るミーナの頭を撫でた。
「いいな…」
一方、魔族退治に向かった優梨達はこれからどうするかを話し合っていた。
「ギルドの人達に協力をお願いする…」
「本当に町を攻めて来ないとも限らないからね…
町の護衛もそうだけど、何より一番は人々の避難とかをお願いしたりしたいの。」
「なるほど。それなら安心して戦えるもんね。」
「十年前より最悪な事態にはしたくないから…」
「させないよ。」
「ユリちゃん…」
「魔族達を倒して、この町を守ろう。」
「心強いな…」
二人はどちらともなく手を繋ぎ合った。
「ユリちゃん…無事に町に帰って来れたら、伝えたいことがあるんだ…?」
「伝えたいこと…?」
「今は秘密…戦いに集中出来なくなるから…」
「そっそっか…町に帰ってきたら聞くね…?」
「うん…」
(優梨さん!もしかして告白では!)
(まっまさか…?アリスちゃんにはすでにミーナさんっていう好きな人がいて…)
(もしそうだったら、どうするんですか!)
(もしそうだったら…)
−数分後、冒険者ギルドの受付−
「そっそれは本当かい!?」
「はい。魔族の部下が現れて、そう言ってました。」
「その表情、冗談ではなさそうだね…?
まさか、父ちゃ…いや、隊長が留守の時にそんな事態になるなんて…」
「なので、ギルドの方々には協力してくれる冒険者を集めて、町の護衛と人々の避難をお願いしたいんです。」
「それはもちろんだ!だけど…森のモンスターとは戦えても魔族達と互角に戦えるだけのランカーがこの町には居ない…やはり一刻も早く隊長に帰ってきてもらうしか…でも王都からこの街に戻ってくるには2日はかかるし、一体、どうしたら!」
«私達で魔族達を倒してみせます!»
「敵の言う通りに本当に君達、二人だけで行くつもりなのかい…?」
«はい!»
「そんなの無茶だ!って、本来なら、止めなきゃならないんだろうけど。
10年前に魔族達を追っ払ったって聞いたアリスちゃんと、並々ならぬ強さを持つユリちゃんの二人なら、不思議だけど出来る気がする…」
「信じてください!」
「私達は負けません!」
「わかった。」
ミノリは二人の肩に手を置いた。
「お願いする。君達にこの町の命運を託すよ。
私達は私達の出来ることをするから。君達は必ず魔族達を倒して、この町を救って。」
«はい!»
「よろしく頼んだよ。さぁ、忙しくなるぞ。」
ミノリは引き出しからマイクを出した。
「なっ何を…?」
《聞こえるか〜!!おまえら〜!!》
ギルド内にいる全員の耳がキーンとなった!
《緊急事態だ!!魔族達がこの町を攻めようとしてるらしい!!ギルド内にいる全隊員は速やかに受付に集合せよ!!尚、協力できる冒険者も絶賛、募集中!!以上、隊長代理のミノリからでした!!》
「鼓膜が千切れるかと思った…」
「本当だね…?」
「相変わらず、マイクを持つと人が変わるよな、ミノリさんは。」
「アハハッ、本当、本当。」
「皆は気にしてないみたい…?」
「後は私達に任せて、頑張って来てくれ。二人とも。」
«はっはい!»
「それと絶対に無事に帰ってな。」
「もちろんだよ。」
「約束します。」
「二人ともいい返事だ。君達にご武運を。」
ミノリはマイクを持って、ポーズを決めた。




