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30話 アリスちゃんは私が守る!!(邪悪ゴブリン達との戦い・後編)

(まっ魔族って…確か、私が異世界を救うために倒さなきゃならないっていう魔王の手下の…?)


(そうです、その魔族です。)

 

(まだ異世界に来て4日だよ…?こんな早く中ボスが現れたりするの…?勘違いなんじゃ…?)


(確かに断定は出来ませんが、こんな数のモンスターを一度に操れるのはSSランクの術者か、魔王もしくは魔族にしかありえません…)


(それってほぼ確定じゃん…)


(私も正直、驚いてます…)


«アガッ!アガッ!»


ゴブリンの群れは少しずつ近寄ってきた!


(今は目の前の敵に集中してください!)


(だっだよね…?いつ襲ってきてもおかしくない状態だもん…?それに…)


「またあんな惨劇が起きたら…アタシは…アタシは…」


(何が理由かはわからないけど、こんなに怯えてるアリスちゃんを戦わせるわけにはいかない…)


(そうですね…怯え方が尋常じゃありませんからね…?)


(この包囲網から脱出しないと…)


(だったら、いい方法があります!)


(いい方法…?)


«アガッ!アガッ!»


「やめて…近寄らないで…」


「アリスちゃん、目を閉じて!」


「えっ!」


「早く!」


「はっはい!」


「くらえ!シャイン・ハンド!」


術を唱えた瞬間、上にかざした優梨の片手が目を開けられないくらい発光した!


«アガガッ!!»


「今だ!」


「わっ!?」


アリスをお姫様抱っこすると、全力でその場を離れた。


「ハァハァ…ここまで逃げれば、とりあえずは大丈夫だよね…」


「シャイン・ハンドも使えたんだね…」


「知ってるの…?」


「Cランクでも唱えられない術だってことはね…」


「そっそうなの…?」


「唱えた本人が知らないなんて…?」


「あっいや…」


「ずっと疑問だった、あなた常識じゃ考えられないことをばかりしてる、スキルを発動した様子もないのに、いきなり魔力を上げたり、難しい術も簡単に唱えたり…あなたは一体、何者なの…?」

 

「そっそれは…」


(駄目ですよ!ユリさんが別の世界の住人であることは言っては!混乱させることになります!)

 

(わっわかってる…)


「教えられないの…?」


「ごっごめん…」


「わかった…さっきは助けてくれてありがとう…」


「まっ待って、どうするつもりなの…?」


「後は私一人であのゴブリン達を倒すから、ユリちゃんは町に戻って、この事をギルドの人達に報告して…」


「そんなことさせられない!」


「えっ…?」


優梨は行こうとするアリスの腕を掴んだ。


「はっ離して…?」


「まだ震えてる。」


「これは武者震いで…」


「嘘だ、本当はあのゴブリン達と戦うのが怖いんだよね…?」

 

「あなたには関係でしょう…」


「あるよ。」


「えっ…?」


「どんな事情があるかまでは聞かない。でもその状態じゃまともに戦えない、殺されちゃうかもしれないよ。それじゃあ、ミーナさんが悲しむことになる。」


「わかってる、それぐらい…それでもアタシがやらなくちゃ…これはアタシの…」


「それに言ったでしょ。アリスちゃんが傷つく所が見たくないって。あれって本心だよ。」


「ユリちゃん…」


「私に任せてよ。ゴブリンは必ず倒してみせるから。

 アリスちゃんが町に戻って、ギルドに報告して。」


「でっでも…」


「頼んだよ。」


優梨は微笑むと走って行った。


(ゴブリン達のいる場所がわかるんだよね…?)


(はい。いちようのためにあの邪悪な魔力を覚えておきましたから。)


(よかった…ねぇ…魔族が現れたとして、森のモンスター達を操った目的って…?)


(ええ、想像なされてる通り、モンスター達を操って、あの町を襲撃させるつもりだと考えて間違いないですね…)


(やっぱり…だったら、絶対に倒すしかないね…)


(大丈夫ですか…?優梨さんはさっきスキルを発動させたばかり…疲労が出てるはずじゃ…?)


(平気だよ…このぐらい…)


(そっそうですか…?)


(それより道案内をお願い!)


(わかりました!)


優梨はアイルの道案内でゴブリン達がいる場所に向かった!


「居た!」


«アガッ!アガッ!»


「私が相手になってあげる!全員、かかってきなさい!」


«アガガッ!!»


「そりゃっ!!」


優梨は襲いかかってくるゴブリン達の攻撃を交わしながら、着実に一匹ずつ倒して行った!だけど…


「ハァハァ…さすがに数が多いな…まだあと7匹もいるのに…ハァハァ…」


(優梨さん、一旦引くべきです!体力が限界そうじゃないですか!)

 

(大丈夫だよ…これぐらい…)


(駄目です!はっ!後ろから攻撃が来ます!)


「わっ!」


「アガッ!!」


「やばっ、避けられない、ガハァッ!」


(優梨さん!!)


後ろからの攻撃は躱せたが、べつのゴブリンの攻撃を躱せずに腹部に棍棒をくらった!


「ガハァッ…ゴハァッ…」


(なんて量の血を…)


«アガッ!アガッ!»


(立ち上がって退却してください!このままじゃ本当に!)


(ごめん…アイルちゃん…)


優梨は起き上がれず倒れた。


(もう…力が出ないや…)


(まさか!今までスキルを発動せずに戦ってたんじゃ!)


(バレたか…)


(何でそんな無茶を!)


(わかんないよ…そんなこと…理屈より…体が動いちゃったんだ…私らしくないよね…)


(そうだ!百合妄想!今、聞かせます!)


(意識が…消えそうなのに…妄想…出来ないよ…)


(どうにかして助ける方法を考えます!)


(いいんだ…今まで…ありがとう…)


(そんなこと言わないでください!)


«アガガッ!!»


(やめてぇ!!)


アイルの叫びも虚しく、ゴブリン達は一斉に棍棒を振るった!


「うぐぐっ…ごめんなさい…優梨さん…私がもっとしっかりサポート出来てたら…あなたを殺されずに済んだのに…」


アイルは水晶に抱きついて泣いた。


(殺されてないよ…)


「えっ…?」


ゴブリン達の攻撃が止むと、そこには倒れてたはずの優梨の姿がどこにもなかった!


「一体、どこに…?」


(ここだよ…)


優梨はアリスにお姫様抱っこされて、高く飛んでいた。


(無事だったんですね!!優梨さん!!)


(アリスちゃんがね…寸前で助けてくれたんだよ…)


(よかった…本当によかった…)


「何だよ。格好つけてた割にはボロボロじゃない?」


「だっだよね…」


「でもありがとう。後はアタシに任せて。」


「アリスちゃん…お願い…」


地上に降りたら、優梨を木に寄りかからせて、回復薬を飲ませて休ませた。


«アガッ!アガッ!»


「おまえら、よくもユリちゃんをこんな目に合わせてくれたな、絶対に許さねぇぞ、覚悟しろ…」


«アガガッ!?»


アリスの威圧にゴブリン達が圧倒された。


「おまえら、全員、素材も残らないぐらい燃やし尽くしてやる…」


そのセリフと同時にアリスの右腕が青い炎のオーラに包まれた。


«アガッ…アガッ…»


ゴブリン達は恐怖からか、震えながら怯えて、後退りし始めた…しかし…


「逃がすかよ?」


«アガガッ!?»


アリスは目にも留まらぬ素早さで、一匹のゴブリンの前に現れた!


「アッガガッ!」


「フレイム・スマッシュ!!」


「ブッギャァッアッ!!」


アリスに腹部を思いっきり殴られたゴブリンはとてつもない悲鳴と共に一瞬で青い炎に包まれて燃え尽きた!


「まずは一匹。」


«アガガッ!!»


それを見たゴブリン達は慌てて散って逃げ始めた!


「逃さねぇって、言ったよな?」


宣言通り、次々に逃げようとするゴブリンを殴って、青い炎で燃やし尽くした!


「ふぅ…残るはおまえだけだ…」


「アガガッ!アガガッ!」


ゴブリンはまるで人のように土下座をして、許してもらおうとした。


「チッ、仕方ねぇな、そこまでされたら許すしかねぇ…」


「アガガッ!!」


後ろを振り向いたアリスにゴブリンは襲いかかった!


「何て言うか!!」


「グッギャァッアッ!!」


アリスは返り討ちにして、残りのゴブリンも倒した。


(すごい…恐ろしいほど強い…)


(ユリさんとの戦いの時は本気じゃなかったというわけですね…)


「何とか、終わったよ…」


「あんなに強かったら、私がでしゃばる必要なかったね…?」


「そんなことないよ…ユリちゃんが居なかったから、あのスキル出せなかった…」


「あれってスキルだったんだ…?」


「感情スキル「恋する少女の怒りのパワー」だよ…」


「恋する…少女って…」


優梨は眠りについた。


(眠っちゃいましたね…?もしかして回復薬の副作用なのかな…?)


「ふっふ。寝顔、可愛い。」


「スゥゥ…スゥゥ…」


「今度はアタシが家に運んであげるからね。」


アリスは眠る優梨の額にキスをした。


「ユリちゃん…ありがとう…」





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