24話 アリスちゃんの姉への愛はすごい。
(優梨さん?起きてください?朝ですよ?)
「ふわぁぁ…」
(おはよう…まだなんか寝たりないな…?)
(今日から一週間、朝8時にギルドに行かなくちゃならないんですから。シャキッとしてください?)
(そっか、冒険者の先輩に指導してもらうんだったけ…?ってあれっ…?アリスちゃんが居ない…?)
(アリスさんなら。)
すると部屋の扉が開いた。
「なんだ。自分で起きられたんだね。おはよう。」
「おはよう…アリスちゃん、先に起きてたんだ…?」
「朝早く冒険者に行ってやることがあるからね。」
「そうなんだ…?」
「そっそれよりも…」
「それよりも…?」
「昨日の夜はごめん。
3人で寝るの泣いて嫌がったりして。」
「理由は昨日聞いたし、気にしてないよ。」
「アタシってお姉ちゃんの事になると周りが見えなくなる性格みたいで…それで…他人に迷惑をかけちゃうみたいで…」
「それだけお姉さんが大好きなんだよね。私は素敵だなって思うよ。」
「素敵だなんて…」
「流石は結婚したいって思うぐらいだよね。」
「えっ!?どっどうして、それを!?」
「あっ…」
(ユリさんったら…)
「もしかして、机に閉まってる日記を勝手に見たとか!」
「知らない、知らない!日記あったなんて!」
「じゃあ、どうして!」
問い詰められた私は白状した。
「昨日、アリスちゃんが
寝言で言ってたから…それで…?」
「寝言で言ってたの…?アタシ…?」
「うっうん…?」
「自分のバカ〜!」
「アリスちゃん…?」
「よりにもよって人と寝てる時にそんな寝言言うなんて〜!」
アリスちゃんは恥ずかしさに耐えきれないのか、顔を手で覆いながら喚き散らしていた。
「落ち着いて…?ねっ…?」
(最初に異世界に来た時の優梨さんを見てるようですね…?)
(本当にね…姿も似てるからより一層に…って余計なお世話だよ!)
「ユリちゃん…」
「アリスちゃん、落ち着いた?」
「ちょっと…我慢してね…?」
アリスちゃんは危なげな顔で近づいてきた。
「なっ何をするつもり…?」
「きっと頭を思いっきり殴れば、昨日の記憶を忘れてくれるよね…?」
「冗談だよね…?」
「安心して…あまり痛くしないから…?」
「安心できないってば!誰にも絶対に言わないから!」
「本当に…?お姉ちゃんにも…?」
「約束する!絶対に言わない!」
「わかった…」
「ふぅ…」
(助かった…)
(危なかったですね…?)
(昨日の記憶以外も消える所だったよ…というより命の危険を感じたから…)
「もし喋ったら、覚悟してね。」
「ひゃひゃい…?」
アリスちゃんは笑顔だったが、私にはその笑顔が怖かった…
「まぁでも、寝言を言ったアタシがわるいんだけどね…」
「アリスちゃんはお姉さんにありのままの気持ちを伝えなくていいの…?」
「えっ…?」
「結婚する約束をしてるんでしょう…?だったら…?」
「私が5歳の頃にした約束だもん…お姉ちゃんは覚えてるはずないよ…」
「言ってみなくちゃわからないよ?」
「それに…」
「わかってる…姉妹同士じゃ結婚出来ないって言いたいんだよね…?」
「うん…同性同士までは許されてるけど…血の繋がった家族とは出来ないの…」
「同性同士までは出来るんだ…?」
「知らないの…?世界共通のはずだよ…?」
「そっそうだったね!すっかり忘れてたよ…」
(今の話、本当…?)
(みたいですね。)
(マジか…)
私は純粋に感動した。この異世界すげぇなと。
「お姉ちゃんにこの想いを伝えた所で…困らせるだけだから…」
「そっか…」
(私、馬鹿だな…アリスちゃんは好きだって伝えたいんだ…でも伝えられなくて苦しい思いをしてる…)
(優梨さん…)
「アタシとお姉ちゃんが血の繋がらない姉妹だったらよかったのにな…」
「そんなこと言っちゃ駄目だよ!」
「えっ…?」
「たとえ血が繋がってようと、好きなら好きでいいじゃない!」
「ユリちゃん…」
「私は応援するよ。」
「応援してくれるの…?どうして…?」
「私が百合オタクだからだよ。」
「ユリ…オタク…?」
「うん。」
「どういう意味かはわからないけど…強い味方が出来た気がする…ありがとう…」
「えへへ…」
すると慌てて扉を開けて、ミーナが呼びに来た。
「アリス、もう6時50分よ!」
「やばい、約束の時間に遅刻しちゃう!先に行くね!」
「行ってらっしゃい…?」
「ユリちゃんも遅刻したら、許さないぞ。」
「あっうん…?」
アリスは意味深なセリフを言って、家を出た。
(今のどういう意味だろう…?)
(私にもわかりません…?)
「ユリちゃんもボサッとしてないで。8時になったら出掛けるんでしょう?」
「はっはい!」
「着替えたら一階に降りてきてね。朝ご飯は用意してあるから。」
「わかりました!すぐ行きます!」
その頃、先に出掛けたアリスはというと…
「嬉しかったな…」
"たとえ血が繋がってようと、好きなら好きでいいじゃない!"
「私にそっくりのようで…あの子のほうが芯がしっかりしてるのかも…」
この時、アリスの心のなかで優梨の存在が少し大きくなっていた。




