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20話 冒険者登録をしよう!

(優梨さん、起きてください。朝ですよ。)


(ふわぁぁ…もう朝か…起こしてくれてありがとうね…)


(いえいえ。)


私は起き上がると部屋のカーテンを開けて、朝の日差しに目が眩みながらも町の景色を眺めながらこう思った。


(やっぱり寝て起きても、異世界に来たままか…夢だったわけじゃないんだね…)


(今日も救世主として頑張ってくださいますか?)


(頑張るよ。自分の居た世界に帰るためだもん。

 今日は冒険者ギルドに行けばいいんだよね?) 

 

(ええ。今日は冒険者ギルドに行って

 冒険者登録をしてもらいたいんです。)


(冒険者登録か…果たしてどんなことがあることやら…)


すると静かに扉を開けて、ミーナさんが入ってきた。


「あら。ユリちゃん、起きたのね?

 起こしにきたんだけどその必要なかったみたい。」

 

「おはようございます。」


「おはよう。朝ご飯はもう作ってあるけど食べる?」


「食べます。」


「了解。着替えはここに置いておくから。準備が出来次第、一階に降りてきてね。」


「今日の着替えまで…ありがとうございます…」


「ふっふ。いいのよ。アリスのおさがりだから。気にしないで。」


ミーナは嬉しそうな顔を見せると、先に一階に降りた。


「何であんなに嬉しそうだったのかな…?」


(持ってきた服に関係があるんじゃ?)


(どれどれ…えっ!これって!)


−それから数分後−


「お待たせしました…?」


「きゃー♡可愛い♡」


私が着させられたのは主張の強いロリータ服だった。


「着替えを貸してもらってる立場の自分が言うのもあれかと思うんですけど…これ…普通の服じゃないですよね…?私はもうちょっと目立たない服のほうが…」


「その服ね…去年までアリスが気に入って着てたんだけど、冒険者になってから動きやすい服を選ぶようになってね、着なくなっちゃって…」


「そうなんですね…?」


「だけどアリスにそっくりなあなたが着てくれて、久しぶりにアリスが着ている姿を見ているようで嬉しいの!着てくれてありがとう!」


「あっいや…それほどでも…?」

(着れないって言いづらくなった…)


(気にせず着たらいいじゃありませんか?

 優梨さん、似合ってますよ?)


(お世辞なんかいいってば!普段、オシャレしない、家での私服が中学のジャージだった私にこんな可愛い服、似合うはずないもん…)


「その顔、もしかして、着たくなかった…?」


「えっ!そっそれは…」


「いいのよ…無理やりすぎたわよね…またクローゼットに仕舞うしかないのね…儚い夢だったわ…」


「ぐっ…」


(私も天使の正装に似てるから、お揃いって感じで、嬉しかったんですが…)


(私は天使って柄じゃないって…まぁでも…二人にそこまで言われたら、着るしかないかな…)


(優梨さん。)


「せっかくのご厚意ですから…この服、着させてもらいます…」


「よかった!朝ご飯、すぐに用意するわね。席に座って、待ってて。」


「はっはい…」

(まぁ、洗濯してくれた自分の服が乾くまで辛抱すればいいだけか…)


(あはは、辛抱って。)


(そういえば、私、もとの居た世界ではジャージだったはずだけど、この世界で目覚めた時にはあの旅人みたいな格好になってたよね?あれはアリスちゃんが着せたの?)


(そうですよ。その異世界でジャージは存在しませんから。格好を救世主らしく変えておきました。)


(ご丁寧にどうも…)


「お待たせ。」


それから私はミーナさんが作ってくれた美味しい朝ご飯を残さず食べたら、今日の目的地、冒険者ギルドに向かうことにした。

 

「本当に今日も泊まっていいんですか…?

 もしあれだったら、宿に泊まっても…」


「こんなに仲良くなったのに他人行儀しないで〜!

 泊まっていいに決まってるじゃない!」

 

「そっそうですか…?じゃあ、お願いします…」


「よかった!帰りを待ってるわね。」


「はっはい…行ってきます…」


「行ってらっしゃい〜!」


(帰りを待っててくれるのか…)


(嬉しそうな顔してますね。)


(まっまぁね…)


手をふって見送るミーナさんに私は手を振りかえしたら、歩き始めた。


−目的地、リーべルの冒険者ギルド−


「マジか…ここなのか…」


私はミーナさんからもらった地図を頼りに、冒険者ギルドに着いたけど驚いた…想像してたよりも立派な建物だったからだ。


(とりあえず…入ってみるか…)


(ええ。行きましょう。異世界を救う第一歩です。)


「しっ失礼します…」


私はゆっくりと中を覗くように扉を開けた。


「あはは、相変わらずだな、おまえは。」

「あんたこそ。」


すると入ったらすぐにカフェのようなスペースがあって、冒険者らしき人達がゆったりとくつろぎながら楽しく会話をしていた。


(あれっ…?いかつい大人が集まりそうな酒場じゃなくて、オシャレなカフェ…?想像してたのと違うな…?)


(優梨さん、奥に受付があるみたいですよ?)


(うっうん…?)


私はビクビクする必要もなかったなと拍子抜けしつつ、奥の受付へ歩いて行った。そしたらそこに見覚えのある女性がいて…


「こんにちわ…?」


「優梨ちゃんじゃないか!昨日、言ってた通り冒険者登録しに来てくれたのかな?」


「そっそうです…」


「OK。じゃあ、初めに優梨ちゃんの現在のステータスを確認させてもらいたいな。」


ミノリさんは机の引き出しから水晶を取り出した。


「ステータスの確認ですか…?」


「そうだよ。冒険者登録をするには最低レベル3以上はなくちゃ駄目でね。

 レベル3以上あるかどうかを確認するためにステータスを見せてもらうことになってるんだ。

 両手をこの水晶にかざしてもらえるかな?」


「わかりました…?」


私が水晶に手をかざすと、ピカッピカッと光り、目の前にステータスが表示された。


《園咲優梨のステイタス》


 現在:レベル9 職業:未定

 体力:37 防御力:20 俊敏さ:19

 優れた勘:17 術力:12

 魔力パワー:15


 スキルなし。


「おぉ、本当に出てきた。」


「ユリちゃん。あの不良達を一人で蹴散らしちゃうぐらいだもん。きっと強いステータスだと思うのよね。私、見るの楽しみにしてたんだ。どれどれ…?」


ミノリさんは眼鏡をかけると、じっくり見始めた。


「あれっ…?レベル9で…スキルなし…?

 私の予想だとレベル10以上はあって、凄いスキルを持ってると思ってたのに…?」


「何か問題でも…?」


「あっいや!条件であるレベル3ではあるし、冒険者ギルドに登録出来るよ。」


「そうですか…?」


「手続きに時間がかかるから。初心者冒険者のためのパンフレットでも見ながら待っててもらえるかな?」

 

「わかりました。」


(アイルちゃんの言ってた通り、私のスキル、他の人にはわからないようになってるんだね?)


(この世界のスキルじゃありませんからね。)


「あっそうだ。これあげる。」


「なんですか…?このチケットは…?」


「これはね。このギルドのカフェで使える、好きな種類のコーヒーを一杯だけタダで飲めるチケットなんだ。よかったら使って。」


「いいんですか…?」


「昨日、私達の代わりに不良達を倒してくれたし。そのお礼だよ。だから遠慮しないで。」

 

「じゃじゃあ、頂きます…」


私はカフェに行って、貰ったチケットでアイスコーヒーを購入すると、受付に近い席に座って、パンフレットを見ることにした。


「え〜と最初のページは…」


"冒険者ギルドに初めて登録された方へ"


①ギルドに初めて登録された方へ守っていただきたい5つのルール。

②ギルド内で行えること。

③冒険者の強さと偉さのランク分け

④ギルド特製腕輪の説明。


(それじゃあ最初は①からだね)


①ギルドに初めて加入した方へ守っていただきたい5つのルール。


一つ ギルドの依頼達成の虚偽は認めません。


一つ 受けたはずの依頼を当日放棄または中断して放棄(何か仕方ない理由がある場合だけセーフ)は全ギルドの信用に大きく関わりますので禁止です。


一つ ほかの冒険者または一般市民への恐喝、理不尽な暴力、淫らな行為の強制は許しません。


一つ 冒険者ギルドの名を使った悪どい商売は認めません。


一つ 邪悪な悪魔の召喚、魔族達との繋がりは絶対に認めません。


※これらのどれかを破った場合、最低で一ヶ月の冒険者登録の凍結、最悪、即、冒険者の資格を取り消す事になるのでご了承を。※


(次は②)


②ギルド内で行えること。


・その地域での身分を証明すること。(詳しい説明は④をご覧ください。)


・掲示板による最新の依頼書の張り出しの確認。


・ステータスの確認。(受付で行うことが出来ます。)


・仲間の募集。(ただし、仲間を集めるためには最低でもランクE以上は必要です。)


・倒して手に入れたモンスターの買取。(受付で行うことが出来ます。)


(なるほど…仲間を集めるためにはEランクならないのか…)


(とても重要ですね。覚えておきましょう。)


(そうだね…さて、次は③か…)


③冒険者の強さと偉さのランク分け。


冒険者の強さはランクで決められていて、それぞれのランクに合わせた色の腕輪をつけていただく決まりとなっております。(腕輪の詳しい説明は④ギルド特製腕輪の説明をご覧ください。)


−ランク順は一番下から−

 

『Fランク』腕輪、緑色

初めて冒険者ギルドに登録する者は最初はFランクからです。

《Fランクから出来ること》

Fランクの依頼全般を受ける事が可能。

   

『Eランク』腕輪、桜色

Eランクへの昇格条件、Fランクの依頼を20個達成。

《Eランクから出来ること》

・Eランクの依頼全般を受ける事が可能。

・ギルドの隊員または受付の仕事につく資格を得る。


『Dランク』腕輪、紫色

Dランクへの昇格条件、Eランクの依頼を15個達成。

《Dランクから出来ること》

・Dランクの依頼全般を受けることが可能。

・ギルドの隊員のリーダーになれる資格を得る。


『Cランク』腕輪、青色

Cランクへの昇格条件、Dランクの依頼を10個達成。

《Cランクから出来ること》

・Cランクの依頼全般を受けることが可能。

・ギルドの指導員になれる資格を得る。


『Bランク』腕輪、赤色

Bランクへの昇格条件、Cランクの依頼を7個達成。

《Bランクから出来ること》

・Bランクの依頼全般を受けることが可能。

・地方のギルドの副隊長の資格を得る。


『Aランク』腕輪、銅色

Aランクへの昇格条件、Bランクの依頼を5個達成。もしくは下級魔族を一体以上倒すこと。

《Aランクから出来ること》

・Aランクの依頼全般を受けることが可能。

・地方のギルドの隊長になれる資格を得る。


『Sランク』腕輪、銀色

Sランクへの昇格条件、Aランクの依頼を3個達成。もしくは下級魔族を2体以上倒すこと。

《Sランクから出来ること》

・Sランクの依頼全般を受けることが可能。

・王都のギルドの副隊長の資格を得る。

・小規模な冒険者ギルドなら1から作る事を認められる。


『 SSランク』腕輪、金色

SSランクに昇格条件、Sランクの依頼を2個達成。もしくは上級魔族を倒すこと。

(SSランクから出来ること)

・SSランクの依頼全般を受けることが出来る。

・王都のギルドの隊長の資格を得る。

・大規模な冒険者ギルドを1から作る事を認められる。


(これを見るだけでも魔族を倒すのがどれだけ難しいのかがよくわかるな…)


(優梨さんには最強のスキルがあるんじゃないですか。魔族だろうが倒せますよ。)


(だといいな…さて、最後は④と…)


④ギルド特製腕輪の説明。


ギルド特製腕輪とは、冒険者ギルドに属した冒険者さん達のために作られた腕輪の事です。


この腕輪に搭載された機能は以下の通りです。


《身分証としての機能。》


・どの地域の場所でも身分証明書としてお使いになれます。


《通話をする機能。》


・腕輪に登録した相手の名前を伝えるだけで、通話が出来ます。登録の仕方は腕輪と腕輪を近づけて、双方の名前を呟くだけで出来ます。(ただし、電波の悪い場所や電波の届きにくい地域だと音が聞こえにくくなったりする可能性があります。)


《ランクによっての腕輪の色分け。》


・何ランクかをわかるようにするための仕組みです。

・昇格するごとに、ランクに合わせた色の腕輪をつけていただくことになります。


(身分証としても使えて、通話も出来るなんて便利な腕輪ですね。)

 

(だね。)


以上で冒険者ギルドのルール説明を終了します。

初心者の皆さん、素晴らしい冒険者になれる様、頑張ってください。


(ふう…読み終わった…)


(お疲れ様でした。)


(これからやらなきゃならない課題がいっぱいあるってことだけはよくわかった…)


(私も優梨さんの力になれるように全力でサポートしていきます!)


(頼りにしてるよ。)


「ユリちゃん!手続きが終わったよ!

 受付まで来てもらえるかな!」


「はっはい!今行きます!」


私は受付まで戻った。


「お待たせしたね。これが冒険者ギルドに登録した証、ギルドの腕輪だよ。」


「ありがとうございます…」


ミノリさんから緑色の腕を渡された。


「パンフレットを見たなら、大体のことはわかってると思うんだけど。いちようこの腕輪について説明する?」


「大丈夫です。」


「ちゃんと見てくれたみたいだね。

 その腕輪を着けたみてもらえるかな?

 ちゃんと機能するかどうか確認したいから。」


「わかりました…?」


私は腕輪を着けた。


「じゃあ、その腕輪を水晶に近づけてみて?」


「はっはい…こうですか…?」


すると腕輪から水晶に微量の電波が流れて、水晶が喋り出した。


『名前:ソノサキ・ユリ レベル9

  Fランク女冒険者 職業:未定 』


「大丈夫みたいだね。ちゃんと身分証が機能してる。」


「なるほど…これで証明出来るわけか…」


「登録はこれで完了。何か質問はあるかな?」

 

「さっきも気になったんですが…?この職業未定ってなんですか…?」


「そこはね。自分に合った職業を決めて登録する欄なんだ。」


「それってどうやって決めたらいいんですか…?」


「なりたい職業はない?例えば魔法使いとか、狩人とか?」


「そっか、それか…異世界だもんな…」


「異世界…?」


「あっいや!特に思いつかないですね…?」


「そう…じゃあ、指導を受けてみる?」


「指導ですか…?」

 

「登録をしたばかりの冒険者だけ、Dランク冒険者のもとでクエストを受ける練習や自分に合った職業を見つけるための指導を受けることが出来るんだよ。」


「先輩から教わるわけですね…?」


「そう言う事。どうかな?」


(どうしよう?)


(受けたらいかがでしょうか?

 今後に役に立つのは間違いないわけですから。)


(それもそうだね…闇雲にやるよりはいいか…)


「その指導受けます。」


「わかったよ。上に話しておく。指導は明日の朝8時からになるから。」


「はっ早いですね…」


「寝坊しないでね。遅刻とかしたら先輩に怒られるぞ?」


「気をつけます…」


「ふっふ。じゃあ、明日だね。今日はお疲れ様でした。」


「はっはい。登録ありがとうございました。」


私は冒険者ギルドから出た。


(私、冒険者になったんだね…)


(ここからですね。)


(さてと、ミーナさんの家に戻るかな…)


私が階段を降りた瞬間。


「やっと見つけたぞ!!」


「ほへ…?」


振り向いた先に居たのは、昨日、私が倒した不良達だった。


「おまえが昨日、俺達をボコボコにしやがったせいで、冒険者登録を一ヶ月も凍結させられることになったんだぞ!!てめえだけは絶対に許さねぇからな!!」


«そうだ!!そうだ!!»


不良達は怒り狂ってるのか、全員、目がかなり血走っていた。


(完全な八つ当たりですね…?)


(だっだよね…?)


私が呆れているような表情をしたら…


「おい、やめろ!その表情!バカにしてんのか!」

 

「だっだって…?」 


『おいっ!!そこの不良達!!』


「ほえ…?」


「誰だ!」


現れたのは私にそっくりな女の子だった!


「お前達だろ、アタシのお姉ちゃんに手を出そうとしたクソ不良共は!!」


「この小娘がもう一人だと…?」


「まっまさか…あの子が…?」


「絶対に許さねぇ、覚悟しろよ?」 


「あの子がアリスさんなの!?」


ミーナさんから聞いてた甘えん坊の妹イメージとは真逆で、現れたアリスさんは目つきが鋭くて、口調もとっても怖く、とんでもない殺気を放っていた!



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