わたくし、エイラのライバルはあの子(アイル)ですわ!
「あの子にだけは負けたくない!」
主である女神様から異世界を見守る使命を与えられた、大変名誉のある守護7大天使の一員で、その中でも特に秀才であると自負しているわたくしこと、エイラ。そんなわたくしにはずっとライバルだと思っている天使がおりますの!
その天使の名前はアイル、あのドジッ子で絵に描いたような駄目駄目な子のことですわ!
皆さんの疑問はよ〜くわかりますの!どうして、わたくしのような秀才があんな駄目駄目な子をライバルとして意識してるか気になりますわよね?
お答えしますわ、それはですわね、天界の頂点に立っておられる、崇高で見目麗しくて、わたくしの憧れである女神様にアイル、あの子がなぜかとても気に入られていて、この秀才である、わたしくしより先に異世界を救う役目を与えられたことですわ!
許せませんわ!わたくしだって、微笑む女神様からあんな風に頭を撫でられながら…
『ふっふ。頑張っているようですね。
あなたにまかせて正解だったようです。
引き続き、よろしく頼みましたよ。』
ってお褒めの言葉を頂きたいのに!どうしていつもいつもあの子なのかしら!悔しい〜!ふぅ…ですが、それも今日までのことですわよ!わたくし、意を決して直談判しますわ!
「女神様、わたしくしの話を聞いてください!」
『なんでしょう?エイラさん?』
「私には納得出来ません!先程、アイルが話した救世主に与えたというスキル、百合パワーでしたっけ?そんなふざけたスキルで異世界が救えるはずがありませんわ!」
「あはは…言ってくると思ってましたよ…?」
「ムカッー!なんですの!その呆れた反応は!」
「エイラさん、今のは言い過ぎです!
アイルちゃんだって、考えてスキルを与えたはずですから!」
「そうだよ。ボクは面白いスキルだと思ったけどな。」
「私もだよ!ねっリラちゃんもそう思ったでしょう?」
「まぁ、そうね…?私も面白いとは思ったわ…?ふざけてるとも思ったけど…」
「みなさん。」
「ぐぬぬ…ガヤは黙っててください!」
「サナ君はどう思う?」
「私ですか…私は…その…」
『それで納得出来ないエイラさんはどうしたいと仰るのでしょうか?』
「わたくしの方がアイルより優秀ですし!わたくしにこそ異世界を救う使命を与えて欲しいのです!」
「なっ!?」
『エイラさんに?』
「そうです!わたくしの方が必ずお役に立てますわ!」
「そんなことありません!アイルちゃんの方がお役に立てるはずです!」
「メアちゃん。」
「あなた、アイルの幼馴染みだからって、いつもいつも味方して!
優秀なわたくしの方が役に立てるに決まってるでしょう!」
「すごい自信だね。流石、エイラ君だ。」
「それは褒めてますの…?」
「もちろん。強がる女の子もボク好きだよ。」
「なっなっ…セーナさん、あなたも女の子でしょう…?」
「その反応、可愛い。」
「なっなっ…」
「そっそこまでにしてください!エイラお姉様が困ってます!」
「はいはい。」
「めずらしい、サナちゃんが大声を出すなんて?」
「はっ!こっこれは…」
「助かりましたわ。サナ。」
「いえ…」
『エイラさんの考えはよくわかりました。
ですが、私はアイルさんを推薦した張本人。
アイルさんも救世主である園咲優梨さんにも期待しているのです。交代させる気は一切ありません。』
「よかった…」
「当然だよ。アイルちゃん。」
「そっそんな…」
エイラは床に手をついて、ガッカリした。
「完全に燃え尽きましたわ…」
「なんか可愛いそう…」
「自業自得じゃない…?」
「エイラお姉様…」
「元気出しなよ。今度ボクがデートに誘ってあげるから。」
「お断りしますわ…」
「ガーン!」
『エイラさん。落ち込まないでください。
交代はしないとは言いましたが、使命をお願いしないとは言ってませんよ?』
「えっ…?それってどう意味ですか…?」
『私の考えでは現在の救世主である優梨さんだけに異世界を救う重圧を与えるのはあまり酷ですから。協力してくれる仲間として第二、第三と救世主を召喚したほうがよいと考えていたのです。』
「なるほどそれもそうだ。」
「仲間はいっぱい居たほうがいいよね。」
「そうね。」
「ということは…?」
『最初から次の救世主をサポートする役目はエイラさんにお願いするつもりだったんですよ。』
「そっそっそうだったのですわね!
私ったら、先走ったりしてお恥ずかしい!」
『いいんですよ。それだけやる気がある証拠です。期待してますよ。』
「はっはい…」
エイラは元気を取り戻した。
「よかったじゃないか。お祝いにボクとデートを…」
「お断りしますわ。」
「ガーン!さっきと同じく即答…」
「おめでとうございます…エイラお姉様…」
「ありがとう。サナ。」
「じゃあ、これからは同じ異世界を救うために協力することになるだろうし、一緒に頑張ろうね。エイラさん。」
「ふん、協力はしますが、あなたと馴れ合うつもりはありませんわ!
あなたは私のライバルだということを忘れないでちょうだい!」
「そっそうですか…?」
「あのツンデレ女…アイルちゃんにあんな態度とって…」
「なんかメアちゃんの雰囲気怖くない…?」
「リル、しっ!触らぬ神に祟りなしなのよ。」
『ただエイラさん。救世主を召喚するにあたって合わせてもらいたいことがあります。』
「何でしょうか…?」
『今の救世主の優梨さんに協力して頂く方なので、召喚するのは同い年ぐらいの女の子で、与えるスキルも百合をテーマとする事です。』
「わかりましたわ…アイルの真似をするようで癪ではありますが、女神様の意向でもありますし、従います…」
『それではあらためて。次の召喚が出来るのは今から一ヶ月後、第二の救世主の召喚を頼みましたよ。エイラさん。』
「はい。謹んでお受けいたしますわ。」
『ほかの天使の皆さんもそれでよろしいかしら?』
「異議なしです!」
『では報告会は以上とします。それぞれの役目に戻ってください。』
「はい!」
少し思ってたのとは違って焦りましたけど、これでわたくしにも女神様にお褒めになっていただけるチャンスが舞い降りてきたんですわ!ふん、今に見てなさい、アイル!でも…
「エイラお姉様…?どうかなされたんですか…?」
「サナ。わたくし、百合って何か知らないの…
みんなはすぐに理解してたみたいだけど、お花のことなのかしら…?」
「知らずに怒ってたんですか…?」
「アイルに負けたくなくて、聞けなかったの…
その様子だとあなたは知っているのよね?」
「はっはい…」
「お願い、教えてちょうだい!私を助けると思って!」
「わかりました…エイラお姉様のためなら…」
「ありがとう。持つべきものは慕ってくれる後輩ね。」
「百合とはですね…女の子同士が…」
サナは百合について説明した。
「そっそんな意味だったなんて…?」
エイラは百合の意味を知って、顔を真っ赤にして動揺した。
「エイラお姉様…?」
「でもそれならわたくしにも通じるものがありますわ。」
「そっそれって!」
「女神様への憧れですわ。」
「そっちですか…」
「やりますわよ!次の救世主にアイルよりすごい百合スキルを与えてみせますわ!」
「頑張ってくださいね…」
「ありがとう。サナ。」
エイラはやる気を出して、自分の役目に戻って行った。
「あなたへの想いも百合なんですよ…
いつか気づいてください…」




