17話 メルヘンで可愛い部屋
ミーナさんの家に泊めてもらう事になった私は洋食屋の2階に続く階段を上っていた。
「アリスさんは昔は手がかかる子だったんですか?」
「過去形じゃないのよ?
今でもと〜っても甘えん坊なんだから。」
「そうなんですね。」
「アリスは私にとってかけがえのない家族で、一番大事な存在なの。
だからかしら。私もつい甘やかしちゃうのよね。」
「とても素敵な姉妹関係だと思いますよ。」
「ふっふ。ありがとう。ユリちゃんも私を姉だと思ってくれていいんだからね?
私もユリちゃんを妹だと思って接するから。」
「はっはい…」
(お姉ちゃんか…私、一人っ子だったから、嬉しいな…)
「優梨ちゃん。着いたわ。ここよ。」
「あっはい!」
ミーナさんが扉を開けると、部屋の中は白で統一されていて、色んな種類の動物のぬいぐるみがあちらこちらに飾ってあった。
「わぁ。メルヘンで可愛い部屋ですね。」
「気に入ってくれたみたいね。」
「ってあれ…?この部屋の扉に〚アリス〛って書いてありますよ…?」
「そりゃそうよ。アリスの部屋だもの。」
「いいんですか…?妹さんの部屋を使わせてもらって…?怒られるんじゃ…?」
「いいの、いいの。」
「本当ですか…?」
「実はね、料理を作ってた時にちょうどアリスから電話があって、ユリちゃんのことを話したら。"お姉ちゃんを助けてくれた恩人だから、私の部屋を使わせてあげていいからね。"って言われてたのよ。だから遠慮しないで?」
「そっそうなんですね…?じゃあ、使わせてもらいます…?」
「そうこなくちゃ。今からお風呂沸かしてくるから。少しの間、待っててね。」
「はい…?わかりました…?」
ミーナは鼻歌を歌いながら部屋を出た。
「どうしてあんなに嬉しそうだったのかな…?」
私が困惑しながら、椅子に座ったら…
(あー。聞こえますか?優梨さん?)
「その声はアイルちゃん?」
(今、報告が終わって帰ってきました。)
(そうなんだね。ご苦労様。)
(お気遣いありがとうございます。どこかの部屋にいるようですけど、もしかして泊まれる宿が見つかったんですか?)
(違うよ。宿じゃなくて、ミーナさんの家に泊まらせてもらえることになったんだよ。ここは妹さんのアリスさんの部屋。)
(そうだったんですね。泊まれる場所が見つかって、一安心しました。)
(私もだよ。でもちょっと落ち着かないかな…)
(どうしてですか…?)
(ここ女の子らしい部屋だもん。私の部屋と大違いじゃん…?)
(確かにそうですね。優梨さんの部屋は棚や机に置ききれないほどの百合オンリーの漫画や同人誌、小説、アニメDVDがあって、壁にポスターが貼ってあったり、誰が見ても百合オタクの部屋だってわかる感じでしたもんね。)
(グサッ。やっぱりアイルちゃんにもそう思われてたんだね…?)
(落ち込まないでください!趣味愛に溢れた素敵な部屋だという意味ですから!)
(アイルちゃんはフォローが上手いね…ハァ…)
私はため息をついたら、ベッドにあった兎のぬいぐるみを抱きしめた。




