15話 百合パワーはやはりチートスキルだった。
「うちの店、狭くて古い感じでごめんなさいね?」
「そんなこと全然ないです。むしろ落ち着いた雰囲気で、いいお店だと思いました。」
「嬉しいわ。そう思ってもらえて。
自分の家のように遠慮せずにくつろいでね。
さっ席に座って、座って!」
「失礼します。ふぅ、ふわぁぁ…」
私はカウンターの椅子に座ると大きくアクビをした。
「あらら、よっぽど疲れていたのね…?」
「はい…今日だけでも色々あったもんで…」
「あれだけの戦闘したんだもの、そりゃ疲れるわよね…?ごめんね…?
よかったら、料理が出来るまで部屋で休んでる…?」
「お気になさらないでください!こう見えてまだ元気ですから!」
「そう?じゃあ、料理を作り始めるわね。
リクエストとかあるかしら?」
「そっそうですね?」
「なんでも好きなの言って。」
「この店のオススメとかはあるんですか?」
「あるわよ。うちの店のオススメの料理、その名もノロノロ豚のトンカツカレー!」
「カレー大好物です。それでお願いします。」
「あとほかに何かないのかしら?もっといっぱい御馳走させて?」
「じゃじゃあ、あとはおまかせとかでもいいですか…?」
「私が好きに作っちゃっていいの?
好きな食べ物や苦手な食べ物とかあるんじゃない?」
「確かにありますね…」
「教えてくれるかしら?」
「子供っぽいって笑ったりしないですか…?」
「そんなことしないわ。私を信じて。」
「好きな食べ物は先程も言ったカレーと唐揚げやシチュー、甘いお菓子とかで…
苦手な食べ物はですね…ネバネバ系全般です…あと苦い野菜系…」
「あら不思議?好きな食べ物や苦手な食べ物までアリスと同じなのね?」
「そっそうなんですか?」
「じゃあ、アリスに作ってあげる気持ちで作ればいいのね。さらにやる気が出てきたわ。
しばらく時間かかると思うから、くつろいで待っててね。」
「はっはい!」
ミーナさんは微笑むと店のキッチンに入って行った。
(容姿も似てて…好きな食べ物や苦手な食べ物まで同じか…唯一違うのは歳だけ…こんな偶然ってあるのかな…?)
(もしかしたらアリスさんはその異世界における優梨さん的な存在なのかもしれませんね?)
(なるほど…この世界の私ってわけか…)
(それはそれとして!ずっと言いそびれたんですけど!
またレベルアップしたんですよ!今度はレベル5→レベル9まで上がりました!)
(そうなの?)
(ステータスが色々と上がりましたよ!
現在、体力は37、防御力は20、俊敏さは19、優れた勘は17、術力は12です!)
(強くなったのは多少、わかるかな…?
最初、不良達と戦ってる時、私、百合パワー発動してなかったよね?それでも戦えてたからな…)
(基礎戦闘能力が身についてきた証拠ですね。立派に救世主として成長してきてるわけです。)
(戦闘能力が身についてきたって…それは普通の女子高生にとってどうなんだろう…?)
(今どき戦える女子はかっこいいですよ?)
(そんなもんかな…?)
私は複雑な気持ちでテーブルにうつ伏せになった。
(そっそれにですね!術力が10以上になったので、
初心者向けの回復の術であるスモール・ヒールが新たに使えるようになりましたよ!)
(ヒールって…?よくゲームとかである回復の…?)
(多少の傷や軽毒なら、その術を唱えることで治すことができますよ!)
(やっと回復の術が使えるんだね…戦う時、これで少しは安心になるかな…まぁ、出来れば戦いたくはないけど…)
(まだ戦うのは慣れませんか…?)
(だって、この世界に来る前は百合オタだった以外は普通の女子高生だったもん…)
(そうですよね…)
(でも…ちょっと漫画やゲームの主人公になった気分で楽しいけど…)
(優梨さんは紛れもない主人公ですよ。この異世界の。)
(そう言われると照れるかな…)
(救世主を続けてくれますか?)
(まぁ、やれるだけやるよ。)
(よかった…)
(それはそれとして、最後にリーダー格の不良と戦った時に百合パワーが発動したじゃない?
今までで一番すごい力が出せた気がしたけど、どうしてなのかな…?やっぱりそれって…)
(簡単な話ですよ。ミーナさんに頬をキスされたことで優梨さんが今まで一番、百合を感じたからです。)
(だっだよね!やっぱりあの胸のドキドキは気のせいじゃなかったんだ…)
(そうなんですよ!百合妄想との違いは!)
(ほへ…?百合妄想との違い…?)
(実はですね!百合パワーは妄想するよりも実際に女の人と百合をする方が魔力が桁違いに上がるようになってるんですよ!)
(そうだったんだ…?)
(詳しく比較するとですね!百合妄想でスキルを発動すると、最大で10倍は魔力があがるんですが…)
(10倍でも十分すごいような…?)
(でも実際に女の人と百合をすると、魔力を最高で1000倍まで上げられるんですよ!)
(あはは…1000倍か…百合パワーはやはりチートスキルだったってことね…?)
(スキルを与えた私が言うのもあれですが、まさかこれほどすごいスキルになるとは思ってませんでしたね。)
(記憶にないとはいえ、私が夢だと思って、お願いしたスキルだもんね…?でもそれが返って想像以上のスキルになったわけだ…なんか複雑な気分かも…?)
(始まりがどうであれ、百合パワーは最強であることは確かですから。)
(まっまぁね…)
(すみませんが、今から主の女神様に現状報告をしてきてもよろしいですか?)
(べつにいいけど…?)
(少しの間、会話が出来ないのでご了承くださいね?)
(戦ってるわけじゃないし、気にしなくていいよ…?)
(ありがとうございます。)
テレパシーが切れたのか、アイルの声がしなくった。
「アイルちゃんも大変なんだな…ふわぁぁ…」
大きなアクビをすると優梨は眠りについた。
「ユリちゃん?主食はお米かパンかパスタのどれがいい?それとも…」
「スゥゥ…。」
「寝てるのね。料理が出来るまでそっとしてあげましょう。」
ミーナは眠る優梨にセーターを掛けてあげた。