146.5話 二人の大尉、それぞれの道。
「君は確か…ポワン大尉?」
「そうでござる。」
リリカを呼び止めたのはポワン大尉だった。
「生きてたんだね?」
「お恥ずかしいながら、敵に情けをかけられて生かされたでござる。」
「ソノサキユリがあんなに甘々なら。仲間も甘々だってことか。それで君はこれからどうするつもりだい?またどこかの魔族にでも雇ってもらうのかい?」
「その気はもうないでござるよ。本来なら命を落としている身、心を入れ替えて、今まで悪行してきた分、善行をしながら各地を回るつもりでござる。」
「あはは、彼女達と関わって正義の心にでも目覚めたのかい?」
「違った意味で目覚めたでござる…」
「あの子達の誰かに恋でもした?」
「秘密でござる…」
「まぁ。頑張りなよ。」
「サツキ大尉殿はどうするおつもりでござるか?」
「自分の城に戻るだけさ。」
「まだ魔族に仕えると?」
「ボクは君とは違って、そう簡単に会心するほど人が出来ちゃいないんでね。」
「それではソノサキユリ殿達と再び戦うことになるのでは?」
「彼女達とは戦わないさ、約束した。」
「その揺るぎない眼差し、どうやら本気で言っているご様子、これ以上の詮索はやめておくでござるよ。」
「ありがとう、もう行くね。」
「お達者で。」
「君もね。」
二人はそれぞれの道を歩き出した。
(ボクは人間を許すことはしない…でもあの子達とは戦いたくない…絶対に…)
その決意した姿を水晶から見つめていた者が居た…
『君は私のようにはならないんだね…』