146話 魔族ブラッド戦、決着!
ブラッド大佐との戦いが始まろうとしていたその頃、地上ではドーラ達が村人達を避難させていた。
「早く村から出るんだ!」
「こっちよ。」
「急いでください!」
「皆さん!」
「ルア、どうだった!家族は無事だったか!」
「うん…ちゃんと再会出来た…」
「そうか、よかったな。」
「ドーラちゃん…」
「見ろ、あれっ!」
「ブラッド大佐の城の屋上が光り輝いてるわ!」
「あの光はユリお姉様の天使の力!」
「いよいよ戦いが始まるみたいね。」
「頑張ってくれ、ユリ…」
「ユリお姉様…」
【赤魔石で強化した我の力を思い知るがいい!】
ブラッド大佐は城の屋上にいる優梨達に向かって、背中の翼から黒い炎を連発した!
「援護はアタシ達に任せて!」
「ええ、このぐらいなら!」
アリスとリリカは次々にやって来る黒い炎を同等の攻撃で相殺して、道を作った!
『二人ともありがとう。エンジェル・ソード!』
優梨は光の剣を掴むと飛んで行った!
【ならば、これならどうだ!】
『ぐっ!』
翼を使い、強風を巻き起こした!
【ハハハハッ、そう簡単には近づけまい!このまま吹き飛ばしてやるわ!】
「負けないで!」
「あなたなら突破出来るはずです!」
『二人の応援が力をくれる!うぉぉぉー!』
【何!】
『くらえ!!』
光の剣でブラッド大佐を一刀両断にした!
【あがが…】
「やった!」
「お見事です。」
『二人とも倒したよ!』
【それはどうかな?】
『えっ…?』
振り向くと、分かれたブラッド大佐の体がくっついて、修復を始めた!
『いや、私も漫画やゲーム知識だけど知ってるよ…?ヴァンパイアが不死身だって事ぐらい…?』
【ほう、知っていたか。】
『だけどさ…?確か魔の者って光属性が弱点なんだよね…?効果抜群なんじゃ…?』
【我も正直、驚いているぞ、本来なら今ので殺されているだろう。だが、赤魔石のおかげで今の程度の光属性の攻撃ならくらっても復活出来るらしい、与えてくださった魔王様に感謝せねば。】
『まっマジか…』
【しかし、痛みはあったぞ?倍にして返さなければな?】
体を完全に元に戻すと、爪を鋭く伸ばして攻めてきた!
【ソラァッ、ソラァッ!】
『くっ!』
優梨はそれを必死に剣で防いだ!
「加勢しに行かなきゃ、あっ…」
「アリスさん!」
リリカが受け止めた。
「どうしてだろう、思うように動けない…」
「魔力を使い果たしたんだと思います。」
「チクショ…」
「悔しいのは私も同じです、今はユリさんに賭けましょう…」
「ユリちゃん…」
【いつまで防ぎきれるかな!】
『私は負けない!』
【ぐおっ!】
力に圧され、態勢を崩した!
『今だ、おりゃゃっ!』
【グギャァァ!】
優梨はチャンスを逃さず、ブラッド大佐をバラバラに斬り裂いた!
『うぷっ…グロすぎ…でも流石にここまでやれば…』
しかし、瞬時に肉片がくっついて、元の姿に戻って行った!
【残念だったな?】
『だっだったら、これならどう!エンジェル・アロー!』
【おとっ!】
『躱された!?』
(エンジェル・アローは狙いを定めないと当たらない術ですよ!)
(そっそうだった!ならもう一度!)
【光を一点に込めて放つ術か、それはくらったら、ダメージが大きそうだな!】
『ぎゃぁっ!』
「ユリちゃん!!」
「ユリさん!!」
(優梨さん!!)
優梨は爪で片腕を深く引っ掻かれた!
『腕が…』
【さっきの術は片腕だけでは撃てまい?】
『はっはは…参ったな…』
【万策尽きたようだな、だが、このまま殺すのは惜しい、どうだ、我の部下にならないか?きさまなら、最強のヴァンパイアになれるぞ?】
『嫌だね、あんたみたいな最低な奴の部下になるぐらいなら殺された方がマシだよ…』
【きさまもか、どいつもこいつも我の情を無下にしよって、いいだろう、その体を引き裂いてくれる!!】
『エンジェル・スピード!』
優梨は素早さを上げて距離を取り、引っ掻き攻撃を回避した!
【逃げるとは卑怯だぞ!】
『あなただって逃げたでしょう!』
【減らず口を叩くな!】
再び、翼から黒い炎を放ってきて、当たらないように逃げ回った!
『ひぇぇっ!』
(アイルちゃん、どうしたら奴を倒せるの!)
(そっそれは…)
「アイル君、敵はヴァンパイアなんだ!もしかしたら、十字架なら効果があるんじゃ!」
「それですわ!」
「なっなるほど!」
(優梨さん、止まってください!)
(えっ!)
(怪我をしていない方の腕でいいので、手を上にかざしてください!)
(こっこうかな!)
(そうです!)
言われた通りに手を上にかざした!
【ほう、まだ反撃するつもりみたいだな?】
(そしてエンジェル・クロスと唱えてください!)
『エンジェル・クロス!』
すると優梨の頭上に大きな光の十字架が現れた!
【ぐぁぁっ!!やめろ!!】
「あの術、効いてるみたい!」
「エンジェル・クロス、その手がありましたね!」
(この世界のヴァンパイアも十字架が弱点なんだ!)
(仕上げです!その十字架をぶつけるイメージをしてください!)
(わかった!)
「飛んで行けー!!」
【来るな、来るなぁぁ!!グギャャァァ!!】
十字架が当たったブラッド大佐は体が燃え上がり、絶叫しながら完全消滅した!
『ハァハァ…』
(倒したのかな…?)
(はい!ブラッド大佐の邪悪な魔力は完全に消えました!倒したんです!)
『やっやったぁ!!』
「終わったみたいだね…」
戦いの行方を見守っていたサツキ大尉がその場を去ろうとした。
『待たれよ!』
「君は確か…」
リリカとアリスは手を繋ぎ合って、喜びを分かち合った。
「ユリちゃんの勝利だよ!」
「ええ!お見事でした!」
すると城が大きく揺れ始めた。
「なっ何が起きたの!」
「そうか!主が居なくなったから、城が崩壊しようとしてるんです!」
「それだ!すっかり忘れてた!」
『助けに来たよ!』
「ユリちゃん!」
「私もよ。」
「ウフ大尉!」
二人はそれぞれに抱きかかえられて脱出すると、それから数秒もせずに城が崩壊していった!
«ワァァァ!»
「ブラッド大佐の城が崩れてゆくぞ!」
「あの少女達がブラッド大佐を倒してくれたんだ!」
「魔族の支配が終わったのね!」
「もう怯えて暮らさなくていいんだ!」
生贄にされていたルアも家族と泣いて喜んでいた。
「そういえば…ドーラちゃんとロリーヌさんはどこ行ったんだろう…?」
二人は木の陰に隠れていた。
「うぐっ…うぐっ…」
「あなたって人は…友達に大泣きしてる所を見せたくないなんて、どんだけカッコつけたいんですか…?」
「うるせぇ…」
「うちはユリお姉様の側に行きたいんですからね?」
「今ぐらい…いいじゃんか…」
「仕方ないですね。今だけですよ。」
ロリーヌはそう言いつつも、自分の胸で泣くドーラをどこか温かい目で見ていた。
«やった!!»
天界ではアイル達がハイタッチしていた!
「一時はどうなるかとヒヤヒヤしましたわ。」
「私もです!」
「ボクの機転のおかげかな?」
「そうですわね。見直しましたわ。」
「確かにセーナさんのおかげです!」
「今回は素直に褒めてくれるんだね…?」
「これからも同じサポート役として、一緒に頑張って行きましょうね!」
「そうだね。これからさらに絆を深めて、同僚以上の関係になろうじゃないか。」
「それはお断りしますね。」
「ガーン!そんな即答しなくても…?」
(わたくしも早くこの二人のようにサポートをしたいものですわ。)
そして優梨達はというと…
「ユリちゃん、腕は痛くない…?」
『まだスキルが発動してるのかな。いつの間にか傷が塞がったから平気だよ。』
「それってリリカさんからもキスされたから…?」
『そっそれは…』
「こんなこと聞くの変だけど…アタシとリリカさんどっちのキスがドキドキした…?」
『えっ!』
「冗談だよ。」
『冗談ですか…』
「サツキ大尉、どうしてるんだろうね…」
『わからない…』
「今度会ったら、友達になれるかな。」
『なれるよ。きっと…』
「そっか。」
『えっ…?』
アリスはキスをした。
「本当はリリカさんにちょっと嫉妬してたんだ…下に降りるまで、二人っきりだし、唇を独占してもいいかな…?」
『うん…いいよ…』
「じゃあ…」
アリスから優梨に何度もキスをした。
「ウフフッ。お熱いこと。あの二人、こっちから見えてないと思ってるのね。」
「見えてないことにしてあげてください。」
「じゃあ、私達も同じことしちゃう?」
「そっそれは…」
「頑張ったご褒美まだ貰ってないなぁ?」
「仕方ないですね…約束ですから…します…」
「本当♡」
「ただし一度だけですからね…?」
「はーい♡」
リリカはウフ大尉に軽くキスをした。
「満足頂けましたか…?」
「満足出来ない♡もっと♡」
「これ以上は駄目です!」
「そんな〜!」
(いくら惚れ薬が天界のだからって効きすぎじゃありませんか…?今後が大変ですね…)
一方、その頃、偵察に来ていたキル少将の部下達は見たことを報告するために自分達の城に引き返していた。
「あはは、ブラッド大佐、倒されちゃったね。」
「キル様の読み通りだったな?」
「ソノサキユリ、やはり侮れない敵です!」
「うちにはそないあの娘が大したことあるようには感じませんでしたけどな?」
「オレもだ。」
「ぷっ。二人とも倒されるフラグ立ててるし。」
「何だと!」
「そないなもん、立ててませんわ!」
「身内で喧嘩しないでください!」
「あんたはんはどう思う?」
「私ですか!」
「さっきからお人形みたいに黙ってるやんか?」
「考え事か?」
「そうなの?」
「あの…サツキちゃ…いや、サツキ大尉を探さなくてよかったんですか…?」
「あんな役立たずなど、探す必要ないだろう。」
「というより殺されてるんじゃない?」
「キル少将の命令はあくまで偵察だけです、命令以外の行動は控えましょう。」
「そや、うちらがそこまでする事ない。」
「わかりました…」
(サツキちゃん…)