145話 私が守るんだ!
【ハハハハッ!素晴らしい、赤魔石による強化がこれほどとは思わなかった!】
«ぎゃぁぁ!»
ブラッド大佐は背中の翼から黒い炎を村中に放った!
「このままじゃ村の人達が!」
「やめろ!!」
【おや?そこにいるのは誰かと思えば、5年前のくたばりぞこない娘、きさま、まだ生きていたのか?】
「へん、悪かったな、生きてて!」
「やっぱり5年前、殺されかけたんだね…?」
「ああ、そのせいで、ドラキュラにされちまった…」
「ドラキュラに…?」
「怖いか…?」
「ううん、怖くない…あの頃のドーラちゃんだよ。」
「ルア…」
【後ろに隠れている娘は誰だ?】
「わっ私です…」
【きさま、生贄の娘、なぜ城から出ている!!】
「ひぃっ!」
「私が連れ出したんだ、逃がすためにな!」
【余計なことを…おい、生贄の娘?今すぐ我のもとに戻るなら生かしてやろう、そうだな、ドラキュラにして我の嫁にしてやる。】
「嫁に…?」
【ドラキュラになれば、老いることもなく人間の血を吸い続ける限り、永遠に生き続けることが出来る、どうだ、良い条件だろう?】
「どこがいい条件だ、ロリコン野郎!!」
【黙れ、我はこの娘に聞いているのだ。】
「村の人達はどうなるんですか…?」
【村の人間など、どうなったってよかろう?自分が生き延びられるのだぞ?】
「そっそんなの嫌です!大切な家族や村の人達が殺されて、自分だけが生きるぐらいなら殺された方がマシです!」
「よく言ったぞ!」
【ギィィ、断るとは命知らずが!!許さん、きさまらまとめて跡形もなく消し飛ばしてやるわ!!】
大きな炎が二人に迫った!
「きゃっ!」
「私が守るんだ!」
(ごめん、みんな…)
『ワオオン!!』
『ドメスティック・ウィップ!』
「えっ…?」
駆けつけたロリーヌとウフ大尉の連携攻撃で炎を打ち破った!
「助かった…?」
「おまえ達…」
「弱虫のくせによく逃げませんでしたね。少しは見直しましたよ?」
「かっこいい所、あるじゃない。」
«後は私達に任せて!»
「あれは!」
沈みゆく夕陽を背に城の頂上にユリ、アリス、リリカが立っていた。
「ユリ、無事だったんだな!」
「みんなのおかげでね!」
(あと…サツキちゃんも…)
(彼女の姿が見えませんね…?)
(仕方ないよ…)
−ここに来る前、三階の廊下にて−
「見て!ブラッド大佐が村に攻撃してる!」
「恐らく赤魔石によって、理性を無くしているんでしょう、急いで食い止めないと、どれだけの犠牲者が出るかわかりません…」
「行こう!ブラッド大佐を退治しに!」
「そうだね!」
「はい!」
「ごめんよ…ボクはこれ以上は協力出来ない…」
「どっどうして…?」
「事情があるんだ…今、反逆者のレッテルを貼られるわけには行かない…」
「そうなんだ…」
「でも、これだけは約束するよ、君達とは戦わない。」
「信じていいんですね?」
「うん…」
「わかった。今度会ったら、友達として色々、話そうね?」
「会えたらね…」
「えっ…?」
「じゃあ…」
サツキ大尉は切ない表情を見せて、階段を降りて行った。
(あの子、どうしてあんな表情を…)
【揃いも揃って現れよって、まぁいい、このパワーアップした力で、全員、地獄に送ってやるぞ?】
「おまえこそ、地獄に送ってやる!」
「アリスちゃんってば…?」
「ユリさん、聞いてください。」
「なっ何?」
「回復薬は肉体の傷や体力までは回復出来ても、魔力までは回復出来てません。つまり私も含めて、ユリさん以外の方々は先の戦闘で魔力がほとんど残っていなくて、まともに戦えるのはあなただけです。」
「そっか…」
「なので…」
「えっ…?」
リリカは優梨の頬に手を当てると唇にキスをした。
「なっなっなっ!」
「これでさらに魔力を上げられたはずです…」
「あっありがとう…」
(リリカさんに初めてキスされた…)
「アタシだって!」
「んぐっ。」
今度はアリスが自分の方に向かせてキスをした。
「どう…さらに魔力上がった…?」
「うん…上がったと思う…」
(同時に二人から唇にキスされるのは初めてですね!)
(だからかな…力がすごく漲ってくる…)
優梨の瞳に百合の花のシルエットが現れた。
【茶番はそのぐらいにしろ、キスし合ったどころで何が変わると言うのだ?】
『見せてあげるよ、私達の絆、百合パワーの力を。エンジェル・ウイング!』
そして天使の羽を纏った。
【噂には聞いていたが、あれがザクロ大佐とソウル大佐を倒した光属性の力か、どれほどのものか見せてもらうとしようか!】
次回、魔族ブラッド編、完結。