144話 サツキ大尉の銀の弾丸。
【きさまら、来たのか?】
「ユリちゃんから離れやがれ、クズ野郎!!」
「そうです!」
【フフフフッ、これ以上、近づいてみろ?血を吸わないで、今すぐこの娘を殺すぞ?】
ブラッド大佐は鋭い爪を首筋に当てて脅した!
「くっ…迂闊に近づけない…」
「筋金入りの卑怯者ですね…?」
【馬鹿共が、手も足も出まい?そこで大人しく仲間が血を吸われるのを見ているがいい。】
『馬鹿はどっちかな…?』
【何?グハァッ!】
ブラッド大佐の腹部に風穴が開いて、その痛みに耐えられないのか、転がり藻掻き苦しんでいた。
【ありえん…?不死身の我の体に穴が空き…痛みを感じるなど…?ガハァッ…】
「ハァハァ…銀の弾丸だからね…」
撃ったのはサツキ大尉だった。
【きさま…寝たフリしていたのか…?】
「今、さっき目覚めたんだよ…」
【なぜ撃った…?これは我々に対する反逆行為だぞ…?】
「自己防衛ってやつだよ…血を吸われて殺されるなんてごめんだからね…?」
【気づいていたのか…?我の計画に…?】
「一対一で戦わせる時点で…わかるでしょう…?」
【チクショ…ぐぬぁぁっ…】
「ボクを利用しようとした罰だよ…」
「ユリちゃん!」
「ユリさん!」
その隙に優梨の側に駆け寄り抱き抱えた。
「しっかりして!」
「アリスちゃん…?」
「すごい…アリスさんが呼びかけたら、すぐに目覚めた…」
「今、回復薬を飲ませるからね。」
アリスは口移しで回復薬を飲ませた。
「どう?」
「ありがとう…体が楽になってきた…」
「よかった。」
その様子をアイル達も見ていた。
「回復薬をただ飲ませるんじゃなくて、キスすることでスキルを発動させて魔力まで回復させるなんて、この子、天才じゃないか?」
「アリスさん、流石です!」
「本当に女の子同士でキスした…」
「おや。顔が真っ赤だね。エイラ君。」
「もしかして、見るの初めてでしたか?」
「あっあなた達は慣れ過ぎじゃありませんこと…?」
「普通ですよね?」
「そうだよ。」
「あなた達に聞いた、わたくしが馬鹿でしたわ…」
そして場面が戻り、サツキ大尉にも回復薬を飲ませていた。
「どうしてボクまで…?」
「あなただってユリさんを助けてくれたじゃないですか?」
「ボクはただ、アイツが許せなかっただけで…」
「ありがとうね…サツキちゃん…」
「なっ…」
「照れてるじゃんか。」
「照れてなんかないよ…」
「ちょっと待ってください!ブラッド大佐の姿がどこにもありませんよ!」
«えっ!?»
血溜まりだけを残して、ブラッド大佐の姿が消えた!
「くたばったとか…?」
「いや、ボクが撃ったのは…銀の弾丸一発だ…それも当たったのは腹部…完全には殺しきれていないばすだ…」
「じゃあ、逃げた…?」
−城の最上階、ブラッド大佐の司令室−
【ハァハァ…このまま終われるか…】
ブラッド大佐は机の引き出しから、ある物を取り出した。
【ザクロ大佐のような無様なことはしたくはなかったが、頼るしかあるまい…この赤魔石に…】
そしてブラッド大佐は強く念じ始めた。
【我に力を与えたまえ、赤魔石…】
するとその瞬間、城、全体が大きく揺れ始めた!
−二階の廊下−
「なっなんですか!この揺れは!」
「上で何かあったのかしら!」
−三階の部屋−
「何が起きてるんだ…?」
「まさか、この邪悪な気配は!」
「感じたことがある、これって!」
「赤魔石だ!」
ブラッド大佐は邪悪なオーラを纏うと、最上階の天井を突き破って空中を飛んだ!
【ハハハハッ!これなら誰にも負ける気がしない!】
«ガヤガヤッ…»
「見ろ!あれはブラッド大佐だぞ!」
「いつも以上に禍々しさを感じるわ…?」
「ドーラちゃん…私、恐い…」
「あっ安心しろ…絶対に守ってみせるから…」
それを近くの森の一番高い木に登って、見ている者達が居た。
「あはは、ブラッド大佐、赤魔石を使っちゃったみたいだよ。」
「キル様よりずっと弱い下級魔族だ、考えられたシナリオだな。」
「皆さん、わかってますよね、今回は偵察だけですよ?」
「あんたはんは相変わらず固真面目どすな。」
「サツキちゃん…」