137話 ドーラのとっておきの術!
ドーラ対ポワン大尉の吸血鬼同士の本格的な対決が始まった!
「それっ、それっ!」
「わっ!やっ!」
ドーラは翼を広げ、空中を飛び回り、ポワン大尉の爆弾攻撃をギリギリで躱していた。
「相変わらず逃げてばかり、そんな事では拙者は倒せぬでござるよ!」
「うっうるせぇ!こっちにはこっちの考えがあるんだ!」
(もう一度、あいつに近づきさえ出来れば!あの技を決めてやるのに!ここはチャンスを待つしかない…)
(拙者の焙烙玉が尽きるのを待ってるご様子、ならば…)
「あっ!使いすぎて、もう玉がないでござる!」
「チャンスだ!」
「まんまとハマったでござるな!」
「やべぇ、罠か!ひぃっ!」
間一髪、爆発から逃れられた。
「危ねぇ、もう少し近づいてたらアウトだったぞ…?」
「あの距離でも仕留められないとは、些かあなたの素早さには参るでござるな?」
「へへん、逃げるのは得意だからな!」
「それはそんなに胸を張って言うことじゃないと思うでござるが…?まぁいい、厄介なことに違いはないでござる、だったら。」
「おい、私はこっちだぞ、どっち向いてやがる?」
「貴殿に攻撃を直接当てるのは難しい、しかしそこで休んでおられる、味方に当てるのは簡単でござるよ!」
「何だと!」
「くらうでござる!」
ポワン大尉は眠るロリーヌの所に焙烙玉を投げた!
「そんなことさせるか!!」
ドーラは自らを盾にして、爆発からロリーヌを守った。
「ガハッ…ゴハァ…」
「作戦通りでござる。」
「ハァハァ…さっきの見直した気持ちを返せ…今のは卑怯だぞ…?」
「何か勘違いされている、命をかける戦いに卑怯もへったくれもないでござろう?」
「まぁ、確かにそれもそうだな…」
「しかし思った以上に頑丈でござるな?多少の火傷だけで済むとは?」
「十分、ダメージくらってるって… 私は逃げるのは得意でも防御力はあまりないんだ、だから今のを防ぐのにほとんどの魔力を使っちまった…」
「ということはあと一発、攻撃を当てれれば、あなたを殺せると考えていいでござるな?」
「ぐっ…」
(こいつの言う通りだ…残りの魔力量から考えて、私が大人状態でいられるのは残り一分程度…それまでにこいつを倒さないと本当に殺される…)
「では仕上げと行くでござる、いでよ!」
「なっ何だ!?」
ドーラの周りを大勢のポワン大尉が囲んだ。
«見てわからぬか?分身の術でござる。»
「分身の術だと…?」
«さよう、どれが本物の拙者か、わかるでござるかな?»
「くっ、あと一分ぐらいしか持たないってのに一体、どれが本物の奴なんだ!」
「では一斉に焙烙玉を投げて、幕引きとするでござるよ!」
「こんな時、ロリーヌが居てくれたら…匂いで見つけ出してくれるのに…」
『本体はあなたの真後ろに立ってる奴ですよ!』
「真後ろ?」
「なっ!?」
「本当だ、一人だけ動きが違うぞ、くらえ!」
「ぐわっ!」
ドーラは声を信じて、体当たりで吹き飛ばした!
«拙者達、まだ出たばかりなのに〜!»
すると囲んでいた分身はすべて消えた!
「ハァハァ…今の声って…?」
「ドーラさん、あなたは本当に頼りないですね…?」
「ロリーヌ!」
ロリーヌが起きていた。
「やっぱりおまえだったか…ありがとう、助かったぞ…?」
「それより敵はまだ倒せてませんよ…?油断しないでください…?」
「そうだった…どうだ?私には強い味方がいる、分身の術は通じないぞ…?」
「ハァハァ…そんな術を出せる力、もう拙者に残ってないでござるよ…流石の拙者も魔力を使い果たす寸前でござる…」
「そうか、一緒だな…?」
「きっとお互い一撃を出すのがやっと…」
「ああ、だな…」
「この一撃でドーラさん達の戦いの勝敗が決まる…」
「拙者の魔力をすべてこのクナイに込めるでござる!」
「私だって、これにすべてをかける!」
ポーチから紫色の細い針を取り出した。
「行くでござるよ!」
「おう!」
「くらうでござる!」
「ポイズン・ニードル!」
二人同時に攻撃が決まったように見えた。
「一体、どっちが…?」
「ぐぁっ…」
「ドーラさん!」
ドーラが膝をついた、しかし!
「どうやら、拙者の攻撃が…あっ…」
すぐポワン大尉が白目をむいて倒れた。
「ハァハァ…何とか倒せたみたいだな…」
ドーラは魔力を使い果たして、幼女姿に戻った。
「ドーラさん!」
ロリーヌは抱きついた!
「わっわっ!おまえ!」
「あっごめんなさい、痛かったですか!」
「へっ平気だ、脇腹をちょっと深く斬りつけられただけだから…?」
「あっそうだ、回復薬もあるんでした!飲んでください!」
「はいはい、わかってるよ…」
回復薬を飲むと、脇腹の傷はすぐに消えた。
「ユリお姉様から頂いた薬、解毒薬といい、すごい効き目ですね?」
「そりゃそうだ、なんてたって私が作ったんだからな。」
「えっ…?そうだったんですか…?」
「そんなに驚くことか?」
「あなたは血を吸うか変身ぐらいしか芸がないと思ってましたから…?」
「ばっ馬鹿にすんなよ!ユリ達を眠らせたのも私が作った眠り薬だったんだぞ?」
「どんな魔物や人間にも一つぐらいは才能があるってわけですね…?」
「あのなぁ…?」
「ガハァッ、ゴハァッ…仲が良くて…羨ましいでござるな…?」
«えっ!?»
「おまえ、まだ息があったのか…?」
「ハァハァ…拷問や耐毒訓練などを…してたでござるからな…少しの間だけ… 話せるぐらいの余力は…残ったみたいでござる…」
「そうか…」
「そうでしたか…」
「何で二人とも…切ない顔をするでござるか…?敵である拙者に…情けなど必要ないでござる…」
「でも…なぜか可哀想に思えて…」
「相当な、お人好しでござるな…」
「ですよね…」
「ロリーヌ…」
「そのせいで…泣きたくもないのに…目から熱いものが…溢れるてくるでござろう…」
ポワン大尉の目から涙が溢れた。
「ポワン大尉…」
「あーもう、しゃあないな。」
するとドーラがポワン大尉の口元を隠す布を取った。
「なっ何を…?」
「ドーラさん…?」
「これを飲みな。」
小さな玉を口に含ませた。
「ゴクッ、何でござる今のは…?」
「私の調合した毒を解く解毒薬だよ。まだ話せるなら、解毒に間に合うだろ。」
「なっなぜでござるか…?」
「涙が流せるんだ、あんたはまだ会心出来るよ。人生やり直せ。」
「それが理由でござるか…?」
「まぁ、後、もう一つ付け足すとしたら。素顔が可愛かったから、殺すにはおしいと思っただけさ。」
「可愛い…拙者がでござるか…?」
「ああ。」
「嬉しいでござる…」
「ポワン大尉、ポワン大尉!」
「大丈夫だ。この解毒薬には睡眠効果もあるんだ、ただ寝てんだよ。」
「スウゥ…スウゥ…。」
「本当だ、よかった…」
「おまえ、本当にお人好しだな。」
「あなたには言われたくないですよ。」
「だよな。」
«ふっふっふ。»
二人は微笑み合った。
「さて、いつまでも休んでる場合じゃないな、優梨達の応援に行くぞ?」
「あっ待ってください!」
「んっ?どうした?」
「メイドとして、服装はしっかりしなくちゃ駄目ですから、ボロボロになったメイド服を修復させてください。」
「おいおい、そんなことしてる場合か…?」
「すぐに出来ますから、うちの裁縫の上手さを見せてあげますよ。」
「仕方ねぇな…?とっとやれよ…?」
「わかってますって、ではさっそく。」
「ちょちょっと!」
「何です?」
「ここで脱ぐのか…?」
「脱がないと縫えないですよ?何か問題でも?」
「いや…その…」
「問題ないですよね?んしょ。」
「わっわっ!」
「何を恥ずかしがってるんですか?」
「べっべつに恥ずかしがってなんか!」
(こいつ、見た目、チビのくせに…本当に胸だけはあるんだよな…)
「変な人ですね?まぁいいや。」
ロリーヌは気にせずにメイド服を脱いで下着姿になって、服を縫い始めたのだった。