134話 いざ魔族の城に!
「セーナ様、リリカさんとの連絡が途絶えて、すでに三十分… やはり救世主の方に救出をお願いした方がよくありませんか…?」
「いや、ボクはリリカさんの言葉を信じて待つよ。彼女ならきっと突破口を見出すはずだ。」
「わたくしもそう思いますわ。あの人ならきっと。」
「そうですか…」
《セーナさん、聞こえますか?》
«リリカさん!»
暗くなっていた水晶に地下の階段に立つリリカの姿が映った。
(無事、牢屋から出られたんですね!)
(ええ、出られました。)
「そっか、よかった…」
「わたしくもほっとしましたわ。」
《その声はもしかして、エイラさんですか?》
(はい、そうですわ。)
(スキルを使って、連絡を取るのに協力してくれたんですよ。)
(そうだったんですね…私が潜入を失敗したせいで、エイラさんにまで迷惑をかけて申し訳ありません…)
(そんなこと気にしないでください。リリカさんが無事で本当によかったですわ。)
(エイラさん…)
(それでどうやって牢屋から出られたんですか?)
(確かに!どうやったんですの?)
(惚れ薬を飲ませたんです。)
(惚れ薬ですか…?)
《ご主人様〜♡》
«えっ!?»
水晶に映ったのはリリカに抱きついて、求愛するウフ大尉の姿だった。
(一体、これはどういう状況ですの…?)
(わからない…?ボクにも…?)
(ウフ大尉を虜にした経緯はまた後ほどお話することにさせてください、私はこれより優梨さん達の援護に向かいますから。)
(わかりました。頼みましたよ。)
(気をつけてくださいね?)
(はい。では行って参ります。)
《ご主人様〜♡待ってください〜♡》
《いちいち、引っつかないでください?》
《ひどい〜。》
リリカ達は優梨達のもとに向かった。
「ふぅ。わたくしは今までの状況を女神様に報告して来ますわ。」
「助かるよ。本当にありがとう。」
「お礼はいいですって。わたくし達は同じ守護天使の仲間じゃないですか。」
「あっそうだ。お礼ってことで、今度、デートしないかい?」
「丁重にお断り致しますわ…?」
「そっそんな!エイラ君〜」
「相変わらずですわね…?」
「先輩、私とは〜?」
そして優梨達はというと…
「着いたでござる。ここが我が主、ブラッド大佐の城でござるよ?」
「ここが…」
「確かに邪悪な匂いがプンプンします…」
「では城の中へどうぞ?」
ポワン大尉の合図で城の大きな扉が開いた。
「行くよ!みんな!」
「うっうん!」
「ええ!」
「おっおう!」
建物内に入ると、一階のフロアが広い儀式場になっていた。
「気味が悪い場所だな…?」
「まるで何かの儀式でも始まりそうな雰囲気ですね…?」
「敵の姿が見えないけど…?」
「というより、ポワン大尉の姿が消えたね…?」
「本当だ…?いつの間に…?」
【ようこそ、恐れ知らずの冒険者達よ、我が城へ。】
奥の扉からブラッド大佐、グロウ中佐、ソード少佐が現れた。
「あなたが魔族のブラッド大佐なの!」
【いかにもそうだ、我こそ、この城の主、ブラッド大佐である。】
「てめえ!!」
【おや、きさまどこで会ったことがあるような気がするが気のせいか?】
「忘れたとは言わせねぇぞ!私は5年前におまえに殺されかけたんだ!!」
「ブラッド様に向かって、なんて失礼な!」
【まぁよい、5年前か…ああ、そうか、思い出したぞ?きさまは確か、我が血を途中までしか吸わなかった子供ではないか、やはり生きていたのだな?】
「私はおまえのせいで吸血鬼になったんだ…」
【だろうな?我に噛まれて生きていたんだ、そういう奴は大抵、吸血鬼になる。】
「我も戦いに敗れ、ブラッド様に噛まれて吸血鬼になったからな…」
「私は忠誠を誓い、自らお願いしたのだ。」
【あの後、行方がわからず、村から逃げたのだろうとは思っていたが、まさか再び村に帰ってくるとはな、何だ?我の部下にして欲しいとお願いしに来たか?吸血鬼のきさまなら、歓迎してやるぞ?】
「誰がそんなお願いするもんか!」
【違うのか?ならば何しに来た?】
「決まってるだろう!5年前に殺された両親、親戚や友達、村のみんなの仇を取るために私はこの仲間達と一緒におまえ達を退治しに来たんだ!」
【フッフッフ、そうか、仇討ちか。】
「笑うな!」
「身の程知らずのガキが、ブラッド様と私達を退治するだと?」
グロウ中佐が殺気を放った!
「ひぃ!」
「怯えないでください。うち達が付いてますから。」
ロリーヌはドーラの手を握って見つめた。
「おまえ…」
「そうだよ。私達がいるよ。」
「安心して。」
「皆、ありがとう…」
「ブラッド大佐!あなたは絶対に私達が倒す!」
「正々堂々と戦いなさい!」
【いいだろう、だが、きさまら全員を相手にするつもりはない。】
«えっ!?»
次の瞬間、優梨、ロリーヌ、ドーラの足元にそれぞれ異なる紋章が現れて、どこかに転送されてしまった!
「ぐっ!皆をどこにやった!!」
【安心しろ、戦う相手と場所を変えてやっただけのことだ。】
「なっ何だと…?」
【もちろん、冒険者のアリス、きさまには我とグロウ中佐とソード少佐が相手をしよう。】
「どこが正々堂々と戦うだ、こんな仕掛けをしてたなんて、クズ野郎が。」
【褒めていると受け取ろう。】
一方、転送された三人はというと、それぞれのエリアに来ていた…
「くっ…ここは…?」
「どうやら、どこかの部屋みたいですね…?」
「おまえ、一緒だったのか!」
「ええ、でもユリお姉様とアリスさんの姿がどこにも見えません…?」
「ああ、どうやら私達は分断されたみたいだな…?敵の罠にまんまとハメられたわけだ…」
『よく来たな、お前達?』
「それであなた達、二人がうち達の相手というわけですか?」
『そうでござる、拙者、ポワン大尉と。』
「このオレ、ザーギ大尉が。」
「お相手、仕る。」
「相手するぜ?」
「やるしかないみたいですね!」
「あっああ!」
そして、残る優梨はというと…
「ここは…?」
『待っていたよ。』
サツキがナイフを触りながら、椅子に座っていた。
「サツキちゃん…」
「馴れ馴れしいね?ボクはサツキちゃんって呼んでいいなんて、言ってないよ?まぁ、いいか、そんなこと…」
「アリスちゃん達は生きてるんだよね…?」
「生きてるよ、君とは違うエリアに転送されただけさ。」
「よかった…」
「フッ、こんな状況になっても、君は自分の心配より、人の心配をするんだね?」
「当たり前だよ!皆、私の大切な仲間だもん!それにアリスちゃんは…」
「恋人か何かなのかい?」
「付き合ってはいないけど…特別な存在なんだ…」
「そう…」
「サツキちゃん…あのね…?」
「そんな特別な彼女達を守りたいなら、ボクを殺すしかないね。」
「えっ…?」
「じゃなかったら、この部屋からは出られない。」
「なっ…」
「何を迷うことがあるんだい?君とボクは別に友達でも恋人でもない、ただの赤の他人、遠慮せずに殺せばいいじゃないか?」
「出来ないよ!!」
「甘いね、だったら、ボクが君を殺すだけだよ。ボクにはそれが出来る。」
いくつもの武器を生成した。
「サツキちゃん…」
「さぁ、どうする?抵抗せずに殺されるか、それとも戦って殺すのか、2つに一つだよ?」
「わかった…」
そう呟いたら、戦闘態勢を取った。
「それでいい…」
「大人しく殺されるわけには行かないから…」
それぞれのバトルの行方は果たして…