132話 トキ村に着いた!
「やっとここまで来れた…」
優梨達はついに次の目的地、トキ村の入口まで辿り着いた。
「ユリちゃん、ロリーヌちゃん、ドーラちゃん、今から村に入るけど、中に入ったら、いつ魔族達に攻撃されてもおかしくないからね?みんな、心の準備は出来てる?」
「うっうん!」
「当然です!」
「そっそうだな…?」
「その割にはドーラさん、足が震えてますよ?」
「うっうるせえ、これは武者震いってやつだ…」
「ドーラちゃん、やっぱり怖かったら、私達だけで…?」
「怖くなんかねぇて…言ってるだろ…怖くなんか…」
「ハァ…仕方ないですね…?」
「えっ…?」
ロリーヌはドーラの手を握った。
「どっどっどういうつもりだよ…?」
「ここまで来て、余計な行動されても迷惑なので、怖がりなあなたのために手を繋いだまでのことです。これなら少しは落ち着くんじゃないんですか?」
「まっまぁな…?」
「ロリーヌちゃん。」
「ありがとうね。ロリーヌちゃん。」
「えっへん。小さい子の面倒を見てあげるのは、年上の役目ですから。」
「私は小さい子じゃないのに…」
「あれっ?つかかってこないですね?どうしたんですか?」
「なっ何でもねぇーよ…」
(こいつ…人の気も知らないで…)
ドーラは強がりながらも、ロリーヌに手を繋がれて、胸が高鳴っていた。
「アタシ達も手を繋ごうか?」
「そうだね。」
「アリスさんったら、どさくさに紛れてずるいです!うちもユリお姉様と手を繋ぎたいのに!」
「じゃあ、みんなで繋いだらいいじゃない?」
「まぁ、それならいいですけど…?」
並んでみんなで手を繋いだのだった。
「それじゃあ、みんな行くよ!」
「うん!」
「はい!」
「おぉ!」
(アイルちゃんもサポートよろしくね?)
(はい!もちろんです!)
全員で気合を入れて、トキ村に入った!しかし…
「村に人の姿がない…?」
「魔族が支配してるから、人は居なくなったんでしょうか…?」
「だよな…」
「そうじゃないと思う…」
«えっ…?»
「周りをよく見てみて、畑はちゃんと耕されてるし、あの家の前には干して間もなく見える洗濯物まで置いてある、ついさっきまで人が居た形跡がいっぱいあるよ…?」
「そういや、そうだな…?」
「確かに…?」
「クンクンッ。アリスさんの仰ることは当たっているみたいですね?お二人の匂いとは別に人間達の匂いを感じます。」
「そうなんだね?よかった…」
「じゃあ、何で姿を現さないんだ…?」
「みんな怯えて隠れてるとか…?」
「まさかすでに魔族達が近くにいるんじゃ!」
「そうか、だからみんな怯えて隠れてるんだね?」
「どっどこだ、どこにいやがる!」
「いえ、村の周りにそんな匂いは感じませんよ…?」
「そうなの…?」
「じゃあ、何に怯えて…?」
「クンクンッ…どうやら私達のようですね…?とっとこの村から出て行って欲しいような…?」
「そっそんな…?アタシ達は魔族達からこの村を救いに来たのにどうして…?」
『それは私から説明させてもらえませんか。』
«えっ?»
振り向いたら、そこに優梨達と同い年くらいの人間の少女がいた。
「あなたは一体…?」
「私はブラッド様から、あなた方を城まで案内するように命令された者です。」
「城まで案内…?」
「はい、ブラッド様はすでにあなた方が村に来ていることはご存知でらっしゃいます。戦う準備はこちらも出来ているから、案内してあげろと。」
「私達が来ていることは知ってるか…」
「城まで案内してあげろなんて、随分と余裕みたいだね…?」
「うちらを舐めてるんじゃないですか!プンプンッ!」
「そうなのかな…?」
「案内するので、着いてきてください。」
«はっはい!»
案内の少女に着いて行った。
「あなたはこの村の人間なんだよね…?」
「はい。」
「どうして村の人達は私達に怯えているのかな…?」
「あなた達に怯えているわけではないのです。ただこの村の秘密を知られることを恐れている。」
「この村の秘密…?」
「知りたいですか?」
「教えてくれるの…?」
「この村の人間達はですね、魔族達に村を襲わないでくださいと命乞いをして、世界では禁忌とされる、魔族達とのある取引をしているんですよ。」
「魔族達との取引…?」
「若い娘の生贄を差し出す事です。」
«えっ!?»
「生贄だって…?」
「驚きましたか?ブラッド大佐は若い人間の娘の血が好物なんです。だから、月に一度に村では若い娘を生贄として差し出しているんですよ。」
「そっそんなこと許されていいはずがない!」
「そうだよ!罪もない子を生贄にするなんて!」
「ですがそれを村の人間は恐怖のあまりしている、本当に人間とは愚かで救いようがない生き物ですよね?」
「そっそんな言い方…?」
「クンクンッ…これって…?」
「村を救うのなんか、馬鹿馬鹿しく思えてきませんか?」
「あなた、この村の人間なんだよね…?自分と同じ村の人をどうしてそんな感じに悪く言えるの…?」
「そっそれはそのですね!」
『それもそうですよね?あなた人間じゃないですもん?』
«えっ!?»
「なっ何を言ってるですか…?私は人間ですよ…?」
「隠そうとしても駄目です!さっきほんの一瞬だけ、あなたから魔物の匂いを感じました!あなたは魔物です!」
「皆さんもこの方に言ってあげてくださいよ?私はどこをどう見ても人間で…」
優梨達は戦闘態勢をしていた!
「ロリーヌちゃんの嗅覚は確かだよ!」
「それは仲間であるアタシ達がよくわかってる!」
「私もだ!こいつの嗅覚だけは信用してる!」
「何ですか…?嗅覚だけはって…?」
「すっすまん…?」
「フッフッフッフ、そうですか、そうですか、やはり犬の魔物を騙すのは大変のようだ。」
「ということはやっぱり…」
「ええ!そのメイドさんの仰る通り!」
ドロンッと煙を出した!
«ゴホッゴホッ!»
「何この煙!?」
「これって煙幕だよ!」
「やつはどこだ!?」
「目の前にいるでござるよ。」
人間の姿から忍者姿の魔物に変わった。
「あなたは一体!」
「拙者は魔族ブラッド様の家来、忍のポワンでござる。」
「魔族の部下なら容赦はしないぞ!」
「ええ、うちもです!ガルルッ!」
「まっ待つでこざる!何も今、戦わなくても!城に案内するのは本当の事でござる!戦うなら城に着いてから正々堂々と戦うでござるよ!」
「信用出来るか!」
「そうです!」
«案内してくれるかな?»
«えっ!»
「よかったでござる…」
「そっそんな…?」
「罠だったらどうするんだ…?」
「ここで私達が戦ったら、村を巻き込むことになっちゃう。」
「城だったら、そのリスクはないはずだよ。」
「それもそっか…?」
「二人ともそこまで考えてくれてたのか…?」
「二人とも、わかってくれたかな?」
「はい。」
「私もだ。ありがとうな。おまえら本当に良いやつだ。」
«えへへ…»
(今のうちに仲間で楽しくしてるといいでござるよ、あなた方はこれから城で恐怖を味わうのだから…)