131話 魔族の城の地下の罠
(そっか…サツキって子にそんな悲しい過去があったなんて…)
朝を迎えて、出発する準備を整えながら、アイルからサツキの過去について聞かせてもらっていた。
(今の話を聞いて、優梨さんはこれからどう行動されますか?)
(私はあの子を悲しい過去から救ってあげたい…たとえ次は戦うことになったとしても…)
(きっと優梨さんならそういう優しい選択をすると思いましたよ。)
(アイルちゃん…)
(私もその考えに賛成です。)
(ありがとう…私、やれるだけやってみるよ。)
(復活したこの天使の力で全力でサポート致します。)
(それは嬉しいけど、無茶だけはしないでね…?前みたいな事になったら、嫌だよ…?)
(ええ。気を付けます。私もこれ以上、優梨さん、周りのみんな、何よりメアちゃんを心配させたくはないですから!)
(それを聞いて安心した。私もこれまでの戦いで少しは強くなったと思うし、アイルちゃんに頼りっぱなしにならない自信はあるよ。)
(確かに一段と強くなられましたね!現在、すでに魔族を二人倒してますし。そのおかけでもうレベル42もありますから!)
(そっそうなの?)
(今、ステータスを教えしますね!現在、レベルは42、体力は150、防御力は75、俊敏さは70、優れた勘は68、術力は80です!)
(着々に強くなってるって感じるな。)
(百合パワーも覚醒状態を発動出来るようになりましたし。冒険者としてもAランクに昇格なされましたから。私の期待以上の成長です。嬉しいですよ。)
(アイルちゃん…)
「もしかして、今、天使さんと会話してる?」
「どっどうしてわかったの?」
「何となく。」
「ずるい!二人だけで秘密の会話ですか!」
「違うってば。ユリちゃんが天使の子と話してたらしいんだ。」
「ユリをサポートしてるっていう天使とか?」
「ちょうどいいや。皆にも聞いてもらいたいんだ。」
優梨はアーノ大尉がトキ村の魔族の城に潜入してくれていて、それで城にサツキ大尉が居て、過去を探れた事、それを聞いて、彼女を救ってあげたいと思った心情をありのままに伝えた。
「みんな、どうかな…?」
「ユリちゃんらしいね。アタシは賛成だよ。」
「アリスちゃん…」
「アタシだって賛成ですよ!ユリお姉様の考えはうちの考えだと言っても過言じゃありませんから!」
「ロリーヌちゃんも…」
「何、アリスに張り合ってんだか。」
「ムカッ!べつに張り合ってなんかありませんよ!」
「どうだろうな?」
「ガルルッ!」
「ドーラちゃんはどうなの…?魔族達の味方をする子を救いたいって…?」
「何、気を遣ってんだよ。おまえらは血を吸おうと襲った私を許してくれたじゃんか、要はそれと同じことだろ?サツキってやつの過去を聞いたら、それで構わないと思ったぞ。私もユリの考えに賛成だ。」
「ドーラちゃん…」
「よかったね。」
「みんな、ありがとう…」
「あっ皆さん、見えてきましたよ!」
「ドーラちゃん、あの村がトキ村かな…?」
「あっうん、そうだ…」
「いよいよだね…」
「うん、みんな、心の準備はいい?」
「もちろんです!」
「アタシもだよ。」
「おっおう…」
「じゃあ、行くよ!トキ村へ!」
優梨達は等々、次の目的地のトキ村までもうすぐで到着するのだった。そして時を同じくして、魔族の城では、アーノ大尉が地下の階に降りていた。
「そうか、ここはあのウフ大尉が言っていた、拷問するための地下牢屋だったのね…血なまぐさい匂いが漂ってる…」
《ウフフッ。いらっしゃい、待ってたわよ?》
「えっ…?この声って…?」
牢屋の中で仕留めたはずのウフ大尉が色っぽく椅子に座っていた!
「どっどうしてあなたがここに…?ありえない、昨日、私が倒したはず…?」
「残念、昨日、あなたが倒したのは私の分身よ。」
「そっそんなあの手応えは確かに本物だったはず…?」
「ウフフッ。私ね。能力で自分そっくりの分身を作ることが出来るの。だからその子に相手をさせたってわけ。案の定、倒されちゃったみたいだけど、その代わり、あなたの戦闘データは取れたわ。」
「そういうことでしたか、私とした事が…だったらここであなたを今一度、殺させてもらいます!」
「あらあら。そんなに都合よく行くかしら?油断してるようだけど、私がなぜ地下で待っていたか、その理由にまだ気づいてないようね?」
「理由…?」
「この地下にいるのは私だけだと思った?」
「まっまさか!」
【そのまさかだ。】
なんと奥から現れたのはブラッド大佐だった!
【ウフ大尉から聞いた時は驚いたぞ、この城にきさまのような侵入者が潜入していたとはな?】
「ぐっ、予想外の事態ですね…?」
【おおよその見当はついてるぞ、きさまに潜入の命令を与えたのはソノサキユリだろう?】
「何のことでしょうか?私は個人で城を調べていただけですよ?」
【しらばっくれるのも大概にするんだな?きさまの命運もここまでだ。大人しく捕まり、ソノサキユリ達の情報を教えるのだ。さすれば命までは奪わないと約束してやろう?】
「誰がそんなの聞くものですか!たとえ拷問だろうと殺されようと何も教えたりしない!」
(ここから逃げなくては!)
【そうか。ならば仕方あるまい。】
「ウフフッ。このピンチな状況で、まだ強気でいられるなんて、あなたやっばり魅力的だわ。そんな強気なあなたを拷問して泣かせられるのが楽しみ。じゅるり。」
【やれ、ポワン大尉。】
《了解したでござる!》
「えっ!?」
近くの壁に擬態して潜んでいたポワン大尉が現れて、アーノ大尉の首筋に噛みついた!
「あゔっ!!あっ…」
そして首筋を噛まれたアーノ大尉は一瞬で気絶した。
【口ほどにもないな?】
「後は私にお任せください。たっぷり拷問して可愛がってあげます。」
【うむ、頼んだぞ?それで何も吐かないようだったら、殺しても構わぬ。】
「え〜!こんな滅多に出会えない上物、殺しちゃうなんてもったいないです!私のペットとして生かしちゃ駄目ですか?」
【ふん、好きにするがいい。】
「やったぁ!」
【では我は司令室に戻る。】
「拙者もほかに役目があるので戻るでござる、好きに楽しんでくだされ。」
「はーい!ありがとうね、ポワンちゃん!さてと、どんな拷問からしようかしらね?」
ウフ大尉は眠るアーノ大尉の頬に触れて考えていた。