クマ子エピソード⑤〜クマ子、決闘する・後編〜
決闘試合が始まって、5分後、二人の激しい攻防戦が続いていた!
「ぐわっ!何て衝撃だ!」
「ああ、見てるこっちがダウンしそうだ!」
「あれは並の冒険者のぶつかり合いじゃないわね…?」
「本当に二人とも新人さんなの?BランクかAランクじゃなくて…?」
《すごいです!こんな激しい戦い!前にこの闘技場で行われた模擬戦以来ではないでしょうか!》
「いいぞ、いいぞ!もっとやれ!」
「隊長ったらはしゃいじゃって、もっと隊長らしく威厳を持ってください?」
「いいじゃねぇか、ミノリ?つまんないこと気にするなよ?」
「隊長はいつも調子いいんだから?」
「ふっふ。相変わらずお二人は仲のいい親子ですね。」
「そっそんなこと…」
「俺は本当に嬉しいぞ、若いやつが切磋琢磨してお互いの力を磨き合う姿がよ。」
「年寄り地味たこと言ってますね?」
「そうか?」
「でも言いたいこともわからなくないですけどね。あの二人みたいに若い冒険者が頑張る姿は見ていて、応援したくなりますから。」
「ミノリさん。」
「だろ?」
「やっ!!」
「そりゃ!!」
二人は攻撃が相殺して、距離を取った!
「ハァハァ…やるじゃない、あんた…?」
「ハァハァ…おまえこそ、やるべ…魔物のオラと互角に戦える人間はユリ以来、久しぶりだ…」
「あんた魔物だったのね…?」
「この耳をみりゃわかるべ…?」
「それよりあんた、まだ力を隠してるでしょ!」
「へっへ、わかっちまったか?」
「ええ、お見通しよ!何の理由で出し惜しみしてるか知らないけど、いい加減、その力を見せなさい!全力を出すって言ったでしょう!」
「わかったよ、そこまで言われたら見せてやるしかねぇな?見て驚け!これがオラの真の力、ベアベア・ムカムカ・パワーアップだべ!ガォウー!!」
クマ子は魔力のオーラを体中に纏い始めた!
「きゃっ!吹き飛ばされそう!」
「何て強いオーラなんだ!」
《クマ子選手のあの小さい体のどこからこれほどの強いオーラが出ているのでしょうか!驚きです!》
「あの力、本人からは聞いてましたが、想像以上です!」
「ハッハッハ、だな?魔力だけなら、Bランク並はありそうだぞ?」
「ぐっ!それがあんたの本気ってわけね!言うだけのことはあるじゃない!」
「さっきの岩のお返しがまだだったな?くらえ!ベアベア・ムカムカ・クロー!」
クマ子はお得意の引っ掻き傷の衝撃波を放った!
《何でしょう、あの術は!果たしてシロップ選手はどうするのか!》
「そんな攻撃、体で受け止めてやる!"身体能力強化"!」
シロップは攻撃を受け止める体勢をしたら、衝撃波をもろにくらった!
「どうなったのかしら…?」
「あんなのくらったら、普通は真っ二つのはずだよな…?」
「ああ、だよな…?あんなにもろにくらっちゃ…?」
《ゴクッ。果たしてシロップ選手は生きているのでしょうか…?》
「ハァハァ…安心するべ、多分、あいつなら生きてるべ…」
《そっそうですか…?》
「ハァハァ…その通りよ…」
すると煙りが徐々に消えて現れたのは服がボロボロに破れて身体中が傷だらけになっても、何とか持ち堪えるシロップの姿だった!
《シロップ選手!クマ子選手の攻撃を見事に耐えました!》
«ワァァ!!»
「ハァハァ…まさか身体能力強化を使って、これだけダメージをくらうなんて…」
「ハァハァ…身体能力強化…?なんだそれ…?」
「私のスキルよ…会得スキル《身体能力強化》一時的だけど、身体能力を強化出来るの…だからさっきより防御力が上がったわけ…」
「面白いスキル持ってんじゃねぇか… オラの術と似てるな…?」
「それに防御力だけじゃなくて…」
「何!」
「素早さと攻撃力も上がってるのよ!!」
「ガハァッ!」
さっきとは桁違いの速さで移動したシロップから、腹部に蹴りをくらったクマ子は吹き飛ばされて、そのまま岩に激突した!
«クマ子ちゃん!!»
「もろにくらった…」
そして倒れた!
「ハァハァ…今のは流石に…決まったでしょ…」
《クマ子選手!シロップ選手の反撃がもろにヒットして倒れた!これで勝負がつくのか?》
「もうこれ以上は!」
「待て、ミノリ!」
「だっだって、もう?」
「ちゃんと見ろ、あいつはまだ諦めてないぞ?」
「えっ…?」
「ぐっ…ぐっ…」
「ハァハァ…まさかまだ戦えるの…?」
「そのまさかだべ…」
限界そうなクマ子だったが気力で起き上がった!
《クマ子選手、すごい執念です!》
「クマ子ちゃん、頑張って!」
「ミーナママ…」
「ミーナさん…」
「娘であるクマ子ちゃんが諦めてないなら。親の私に出来るのは最後まで応援してあげることだから。」
「そっか。そうですよね、クマ子ちゃん本人が諦めてないのに 私達、応援する側がもう駄目だなんて思っちゃ…」
「ああ、信じてやろうぜ?」
「そうですね!私も最後まで応援してあげなきゃ!クマ子ちゃん、頑張って!!」
「ハァハァ…身体能力強化の効力も…さっきの攻撃で切れたみたいで… ついでに魔力と体力もすっからかんだし… 私、あと一撃出すのが…やっとだわ…」
「ハァハァ…奇遇だな…オラもだ…」
「じゃあ…決着と行きましょうか…?」
「ああ…望むところだべ…」
「うぉぉー!!」
「がぉぉー!!」
《お互いのパンチがお互いの頬にクリーンヒットした!》
「いいパンチだったぜ…ガハッ…」
「あんたもね…ガハッ…」
シロップとクマ子は同時に倒れた!
«ガヤガヤッ…»
「どっどうなったんだ…?」
「相打ちか…?それとも…?」
«クマ子ちゃん…»
「ハァハァ…おまえ起き上がれるか…?」
「ハァハァ…あんたこそどうなのよ…?」
「残念だが…オラは魔力も体力も使い切って起き上がれねぇーぞ…」
「奇遇ね…私もよ…」
審判が二人に近づいた。
「二人とも戦闘続行不可能と思われ!この試合は引き分けとなります!」
《試合終了!!勝敗は引き分けとなりました!!》
«ワァァ!!»
「いい試合だったぞ!」
「二人とも、カッコよかったわ!」
「回復係!すぐに二人を治癒して!」
«はい!»
試合後すぐにシロップとクマ子は回復の術をしてもらった!
「引き分けになっちまったな。」
「そうね。あんたが強いって認めてあげるわ。チビとか言ってごめんなさいね。」
「そんなのもう気にしてねぇよ。それよりいいのか?引き分けだとCランクになれないんだぞ?」
「いいのよ。あんたと戦ってみて、自分がまだまだなんだって実感したわ。これからは地道にランク上げることを頑張ることにする。」
「そうか、それなら応援してやるよ。オラが出来ることがあったら何でも言ってくれ。」
「えっ…?どうして…?」
「どうしてって、もうオラ達は友達だろ?」
「とっ友達!?」
「ああ、もう友達だ。」
クマ子はとびっきりの笑顔を見せた。
「そんなこと言ってくれるなんて…ありがとう…」
「これからよろしくな。シロップ。」
「こちらこそよろしく…クマ子…』
「えへへ。」
「ねぇ…?もしよかったらだけど…?」
「んっ?何だべ?」
「お互いEランクになったら、一緒にパーティーを組まない…?」
「パーティーって何だっけ…?」
『えっ!パーティーっていうのは、一緒に依頼をこなしたり、旅に出たり… つまり仲間ってことよ!」
「仲間か…」
その時、クマ子は優梨達の事を思い出していた。
「駄目かな…?」
「いいぞ、なるべ。仲間に。」
「本当!」
「ああ。もちろんだ。」
「嬉しいー!!」
シロップはクマ子に抱きついた!
「痛い痛い!強く抱きつきすぎた!少しは加減しろ!」
「あっ!ごめん、ごめん!」
「仕方ないやつだな。」
「よかったですね。ミーナさん。クマ子ちゃんに友達が出来て。」
「ええ。親として嬉しい限りだわ。」
「私も何だか嬉しいです。」
「ミノリ?まるで親目線だな?」
「もう、からかわないでください。」
「ハッハッハ、いいじゃねぇか。」
ミノリは照れつつミーナのように温かい眼差しでクマ子とシロップが楽しく喋ってる姿を見ていた。




