13話 美人のお姉さんを救い出せ!!(前編)
«ガヤガヤガヤガヤ…»
(あの人集り、ただ事ではなさそうですね!)
(何が起きてるのか、誰かに聞いてみようか!)
人だかりの先で何が起きているのか、近くのおばさんに聞いてみた。
「聞いてもよろしいですか?」
「なんだい?」
「さっき女の人の悲鳴が聞こえてきて、気になってここまで来てみたんですけど、この人だかりの先で何かあったんですか?」
「ああ、それがさ!洋食屋を経営してるこの街でとても美人で気立てがいいって評判の娘さんがよそから来た見るからに不良っぽい男達に無理やり遊びに誘われてるみたいでね?娘さんはいやです!って、断って立ちされろうとしたらしいんだけど、男達がしつこくて、ついには娘さんの腕を掴んで行かさないようにしてるようなんだよ。娘さんは離してください!って、泣いてるのにそいつらはそれを高笑って、中々、離してあげないんだよ?」
「ひどい!女の人を泣かせるなんて!」
「こういう時、いつもなら冒険者の妹さんがすぐに助けに来るんだけど、ちょうど依頼で街を出てるらしいからね…」
「冒険者の妹さんが…?」
「でもそろそろ町の治安を守るギルドの隊員さんが助けに来てくれるはずさ!」
「ギルドの隊員さんが…?」
「あたしらの町のギルドの隊員さんは強いからね。あんな不良の一人や二人、簡単に倒してくれるはずだよ!
ってあれ?お嬢ちゃん?いつの間にか、どっか行っちゃったのね…?」
その頃、私は人集りに割り込んで、前に進んでいた。
「すいません、通らせてください。」
(急に慌てて、何か気になることでもあるんですか?)
(うん、ギルドの隊員さんが助けに来てくれるはずって言ってたけど、なんか引っかかるんだ…)
(なるほど、勘が働いたのかもしれませんね。)
(勘が…?)
(優梨さんはレベルアップして、優れた勘という能力が伸びてますから、優梨さんの勘は鋭くなっているんです。だから何かを察知したのかもしれません。)
(そっそうなのかな?)
私は最前列まで着いた。
(あれだ!)
見えたのは掴まれた腕を解こうと泣きながら抵抗する、細身なのに出てる所はちゃんと出てる、黒髪ロングヘアーの美しい美女と、その彼女の腕を掴んで笑いながら喜んでいる、森で戦ったグレッターゴブリン達よりもさらにガラの悪い格好と目つきをした男達だった。
「ヒャハハッ、そろそろ、はいって言えよ?」
「いっいやです!離してください!」
「強情な女だぜ?こんなイカしたオレとデート出来るっていうのによ?」
「誰があなたみたいなひどい人とデートしたいなんて思うもんですか!」
「ヒャハハッ、言ってくれるじゃねぇか?涙目になってるくせによ?いつまでそんな態度でいられるかなぁ?
お前ら、手伝え?この女をもっと人気のないところまで連れてくぞ。」
「おうよ!兄貴!」
「楽しみだぜ、こんな上物の女、そうそうお目にかかれないからな?
人気のない所に行ったら抵抗できないように縛り付けにでもして襲ってやろうかな、ヒャハハッ。」
「ひっひとでなし!」
「オラ、行くぞ!」
「やっやめて!!」
不良の男達は抵抗する美女の両腕を掴んで、人目も気にせずに連れて行こうとした!
(許せない!)
(待ってください!)
(えっ?)
(大勢、制服を着た人が来ましたよ!)
「こら、君達、何をしている!
嫌がっているお嬢さんを離しなさい!」
「ああん?なんだ、てめえらは?」
「我々はこの街の治安を守るギルドの隊員だ!」
そしたら野次馬のみんなが歓声をあげた!
「やっと来た!ギルドの隊員だ!」
「あなた達が来ればもう安心だわ!」
(すごい歓声だね…?)
(そうですね、たぶん、この町の安全を守ってきた人達なのでしょう。)
(そっか、じゃあ、私の出番はなくても平気かな…?)
私が安堵していたら…
「ヒャハハッ、んじゃあよ、もし俺らが言う事聞かなかったらどうするっていうんだ?ギルドの隊員さんよぉ?」
「その時は!」
ギルドの隊員達がそれぞれの武器を不良の男達に向けた!
「ほう、俺達と戦おうってか?後悔することになるぜ?」
「望むところだ!」
「舐めやがって!」
「思い知らせてやる!」
「待て、お前らは手を出すな?」
「兄貴?お一人でやるおつもりで?」
「ああ、オレの邪魔をしたらどうなるか、歯向かったこの馬鹿共、ボコボコにしてわからせてやる。」
「ヒュー!かっこいい!」
「わかったぜ、兄貴!」
「戦う前にひとつ言い忘れてたけどよ?
俺達はその辺の不良とはわけが違うんだぜ?
いちよう俺達も冒険者でよ?かなり強いことで有名なんだぜ?」
「冒険者だと!?」
「まっまさか、お前達はあの!?」
「今さら、思い出したって、手加減なんかしてやらねぇぜ!いくぜぇ、ヒャハハッ!!」
目にも止まらぬ速さで、ギルドの隊員達を殴ったり蹴ったりしてボコボコにした!
「ガハァ…なんて…強いんだ…」
「我々が足元にも…及ばないなんて…ゴハッ…」
«オオオ!»
「流石だぜ、兄貴!」
「相変わらず容赦ねぇ!」
「おい、おい、もう終わりかよ?つまんね。」
「うっうそでしょ…?」
「ギルドの隊員が負けた…?」
あまりの恐怖にさっきまでギルドの隊員を応援していた人集りは一瞬で黙り込んだ。
(3人の人間をあんな一瞬で倒すなんて…?)
(恐らくですが、攻撃を強化出来るスキルで、一時的に強くなったのだと思います。)
(攻撃を強化出来るスキルか…)
(それだけじゃなくギルドの隊員達はレベル12だったのに対して、あの不良はレベル17もありましたから、勝てなくて当たり前です。)
(そっか、なるほど…ってあれっ?なんでレベルがわかるの?)
(言い忘れてましたが!私、いちよう見る相手が人間だった場合だけレベルを見ることができるんです!)
(そんなこと出来たんだ…?)
(スキルは見えないので予想なんですけどね。)
「おい、わかったろ?俺らの強さがよ?
俺達に逆らえる奴なんか、この町には存在しねえんだぜ?
おまえを助けてくれる人間なんて、どこにもいやしないんだからよ?諦めて一緒に遊ぼうぜ?」
「くっ…」
さっきまで抵抗していた美女は等々、諦めたようにうつ向いた。
「ヒャハハッ。それでいいんだ!連れて行くぞ?」
「おう、兄貴!」
「助けて…アリス…助けにきて…」
「誰だ?アリスって?」
「私の大事な妹よ!!」
«アハハハッ!»
「マジで言ってんのか?」
「お前、妹に頼るとか馬鹿じゃねぇの?」
「ヒャハハッ。恐怖で錯乱でもしてんのか?」
(アイルちゃん…私もう限界…)
(ええ、私もです。)
「妹はあなた達が思ってるよりもずっとずっと強いんだから!!あなた達なんてすぐに倒してくれるわ!!」
「へい、へい、負け惜しみはそれくらいにしておけよ?
それにたとえそいつが今現れたって、俺が簡単にボコボコにして…」
「待てぇ!!」
私は怒りが抑えきれなくなって、美女を連れて行こうとする不良達の前に立ちはだかって叫んだ!
「はぁ?なんだこのガキ?」
「私はね!どこにでもいる普通の女子高生で、女の人の味方だよ!」
「あっアリス…?」
私を見て、お姉さんは驚いた表情で呟いた。