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121話 雨の出会い

サウスの街から旅に出て5日目、ようやく最後の山を進んでいた。


「ここは道幅が狭いね…?」


「みんな、気をつけて歩こう…?」


「ユリお姉様と一緒なら何も怖くありません♡」


そして多少、危ない目にも遭いながらも前に進み、日が暮れる頃には何とか山を越えた。


「これで後はこの森を抜ければトキ村につくはずだよ。」


「疲れた…」


「流石にうちもです…」


「二人ともだらしないな?」


「ごめん…」


「あなたは本当に人間なんですか…?魔物のうちですら疲れてるのに…?」


「鍛え方が違うからね。」


「そうですか…」


「仕方ない。今日は森の中で野宿して、明日、トキ村に到着することにしよう。」


「賛成…」


「うちもです…」


「じゃあ、森に入るよ。レッツゴー。」


«はーい…»


優梨とロリーヌはヘトヘトになりながら、まだまだ元気なアリスに着いて森に入った。


"やったぁ…人間が入ってきた…"


そしてその様子を誰かが見ていた。


「それにしても現れませんでしたね…?」


「何が?」


「旅を邪魔する敵ですよ…?あの謎のサツキって少女の率いていた暗殺部隊以外、敵は現れてませんよ…?まぁ、出て来ないことに越した事はありませんが…?」


「そういえば、そうだね…?」


「確かに順調にここまで来たね。」


「というよりあのサツキって人間の少女は一体、何者だったんでしょうか…?」


「分からない…あの子に会うのも初めてだったし…でも…」


「でも何ですか…?」


「あっえっとね…」


「優梨ちゃんが気になってるのはあの子の言ってたあの言葉だよね…?」


「あの言葉?」


「アリスちゃんも気づいてたんだね…?」


−優梨達が気になったサツキの言葉−


『あなたさっきこの紋章の術がこの世界の術じゃないって言ったよね…?それってどういう意味…?』


『それは君と"同じ理由"だよ、ソノサキユリ?』


「あれってそのままの意味だとしたら、ユリちゃんと同じ世界から来たってことだよね…?」


「なるほど…その可能性はありますね?」


ロリーヌが驚かない理由は旅に出る前に優梨から別の世界から来た事などをちゃんと聞かされているからだ。


「どうだろう…念のためにアイルちゃんに調べてもらったんだけどね…ここ100年ぐらいは私とアーノ大尉しかこの世界に召喚もしくは転生した人間は確認されてないみたい…?」


「そうだったんだ…?」


「じゃあ、さらにあのサツキという少女は謎の存在ですね…?」


「あの子は一体…」


「ワウンッ!冷た!」


ロリーヌの背中に一滴の雨粒が落ちた。


「雨だ!」


「避難しよう!」


雨に濡れないために慌てて木陰に移動して雨宿りした。


「結構、強い雨ですね…?」


「そう簡単に止みそうにない感じだね…」


「どうしようか…?この辺で野宿する…?」


「でも雨の中だとテント張るの大変そうですよね…?」


「そうだよね、どうしたら…」


『あのどうかなされたんですか?』


«えっ?»


傘を差した色白の美女が心配そうに声をかけてきた。


(色白ですごく綺麗な女の人…)


(本当ですね。)


『もしかして雨宿りなされてるんですか?』


「あっはい!そうなんです。」


「でも中々、雨が止まなくて…」


『よかったら、私の家に来ませんか?家はここからすぐ近くにあるんです。』


«いいんですか!»


『もちろんです。困ってる方をほっとけませんから。』


«ありがとうございます!»


『あっ自己紹介が遅れましたね。私の名前はドーラです。』


「私はソノサキユリです!」


「アタシはアリスです!」


「ロリーヌです…」


「ソノサキユリさんにアリスさんとロリーヌさんですね。家に案内するので付いてきてください。」


«はい!»


「まっ待ってください!」


ロリーヌが不安そうな顔をして、2人の前に立った。


「どうかしたの?ロリーヌちゃん?」


「ロリーヌちゃん?」


「えっと…何でもありません…」


「そう…?」


「はい…」


「行きましょうか。」

 

優梨達は美女について行った、すると少し歩いた所に丸太で作られた小さな家があった。


『お恥ずかしながら狭い家ですが、どうぞ遠慮せずに入ってください。』


«お邪魔します!»


「お邪魔します…」


美女は部屋の明かりをつけると、引き出しからタオルを3枚取って、優梨達に渡した。


『濡れたでしょう。風引いたら大変ですから。これで拭いてください。』


「何から何まですみません。」


「雨宿りさせてもらえるだけでも有難いのに。」


『気にしないでください。あっそうだ。ちょうど晩御飯の時間ですね。何か温かい物を作りますよ。』


「晩御飯まで御馳走になっていいんですか…?」


『構いませんよ。ご飯が出来るまで、自分の家だと思って。くつろいで待っててください。』


«あっありがとうございます!»


「ありがとうございます…」


「ドーラさんってすごく良い人だね。」


「だね。見ず知らずのアタシ達にここまでしてくれるだもん。」


「そうですね…」


「ロリーヌちゃん…?さっきから少し表情が強張ってように見えるよ…?」


「体調がわるいとか…?」


「そっそんなことありません…」


「本当に…?」


「はっはい…そんなことは…」


それからすぐにドーラの作った料理がテーブルに並んだ。


『さぁ。召し上がってください。』


«頂きます!»


「頂きます…」


『どうですか?お味は?』


「美味しいです!」


「本当だね。美味しい。」


『それはよかった。ロリーヌさんはどうですか?』


「美味しいです…」


『沢山作ってあるので、遠慮せずにおかわりしたかったら言ってくださいね。』


«はい!»


"さぁ、もっといっぱい食べろ、その方が血が多くなって美味しくなる…"


「そういえば、ドーラさんはご飯食べないですか?」


「そういえばそうだよね?」


『えっ!そっそれは…」


「一緒に食べましょうよ。」


「アタシ達だけ食べてなんだか申し訳ないですし。」


『ごっごめんなさい!あなた達が家に来る前に私、先にご飯を食べちゃってたんです!だからお腹いっぱいで!』


「そっそうだったんですか…?」


「それなのにわざわざ私達のためにご飯を作ってくれたなんて、ドーラさんって本当に優しいんですね!」


『人が喜んでくれる顔が見れるだけで私は幸せなので。』


«ドーラさん…»


『今日は泊まって行ってくださいね。この雨の中、歩くのは大変でしょうから。』


「泊めてまでくださるんですか?」


『ええ。もちろん。』


「よかったね。アリスちゃん、ロリーヌちゃん。」


「何から何まで本当にありがとうございます。この御恩は決して忘れません。」


『お礼なんていいんですよ。後でお風呂も沸かして置きますから。入ってくださいね。』


«助かります。»


「・・・・・。」


優梨達はご飯を食べ終わるとお風呂に入って、リビングで少し雑談した後、旅の疲労が出たのか、急に物凄い眠気に襲われて、案内された部屋のベッドに入ったらすぐに眠りについた…


«スゥゥ…スゥゥ…。»


『ようやく寝やがったな…?強力な眠り薬入りの食事を与えたはずなのに、眠りにつくのに3時間もかかったぞ、なんて小娘共だ…?だが、しかし逃してたまるもんか、こんな強い魔力をもった人間達、早々現れるもんじゃない、きっと血を吸ったら、何年間は腹を減らさずに済む…』


美女は静かに眠る優梨達に忍び寄った。


『じゅるるっ、この真ん中に寝てる娘が特に美味しそうだ、さぁ、その若くて美味しいそうな首筋から魔力たっぷりの血を一滴残さず吸わせてもらうぞ!グワァッ!!』


ドーラは大きく口を開けて、鋭いキバで優梨の首筋に噛みつこうと近づいた!しかし次の瞬間!


「等々、尻尾を見せましたね!」


『なっ!おまえ、起きてたのか!?』


「当たり前です!ガブッ!!」


『ぎゃぁ!!』


ロリーヌが布団から飛び起きてドーラの腕に噛みついた!


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