120話 アーノ大尉についての手紙
(優梨さん達の前に突然現れたサツキという人間の少女のことも気になるけど…優梨さん達を助けたあの術、それにあの声…やっぱりリリカさんだとしか…)
すると扉をノックされた!
「はっはい!どなたですか?」
「アイルちゃん、私達だよ!」
「リルさんとリラさん!」
扉を開けると同じ守護天使である双子姉妹のリルとリラが居た!
「遊びに来てくれたんですか?だとしたら今、色々と立て込んでまして、またの機会に…」
「んなわけないでしょう?」
「遊びには今度、来るよ!」
「えっ…?じゃあ、どのような用で…?」
「今日はね、お姉ちゃんからアイルちゃん宛にお使いを頼まれたんだ!」
「リルさんとリラさんのお姉さんって確か、審判の門の門番をなされてるアフィリアさんでしたよね…?私宛のお使いって一体…?」
「この手紙を渡してって頼まれたの!」
リラはアイルに手紙を渡した。
「この手紙は一体…?」
「内容までは知らないわ、後で自分で読みなさい。」
「わかりました…?」
「それじゃ私達は仕事に戻るね!」
「まっまぁ、サポート頑張りなさい?」
「頑張ってね!」
「あっありがとうございました!」
リルとリラは自分達の仕事に戻っていた。
「えっと…この手紙の差出人は閻魔大王のエミリ様!?」
アイルは慌てて手紙を開いて読んだ!
『初めまして、守護天使のアイル君、私は審判の間の裁き役、閻魔大王のエミリだよ。名前くらいは聞いたことあるかな?君にこの手紙を書いたのは言うまでもなく、気になっているであろう、魔族のザクロ大佐を倒した後のアーノ大尉の処遇について教えてあげるためだよ。』
「リリカさんの処遇…」
アイルは手紙の続きを読んだ。すると…
「よかった。」
(アイルちゃん!)
(なっ何でしょうか?)
(何か分かった…?アーノ大尉について…?)
(それが偶然にも、先程、アーノ大尉についての情報が手に入ったんです!)
(本当!)
(はい!手紙によると…)
アイルは手紙に書いてある内容を伝えた。
(そっか…天国には行かないで、罪滅ぼしがしたいってアーノ大尉に、偉い人が私達を手助けして魔王達を退治するって使命を与えることで、この世界に人間として生き返らせてくれたんだ…)
(ええ。アーノ大尉はその使命を快く受け入れたみたいです。)
(よかった…生き返ったんだ…)
優梨は心から喜んだ。
(よかったですね。)
(でっでも、それならさ…?どうしてアーノ大尉は
私達の前に現れてくれないのかな…?)
(アーノ大尉、自身が言ってたみたいです。私は影から支えられればいい、いざという時に窮地を救える存在になりたいと。)
(あの人らしいな…きっといつかは姿を現してくれるよね…?)
(はい。必ずその日が来るはずです。)
(じゃあ、それまで待つことに決めたよ。)
(そうですか。)
「ユリちゃん…?天使さんは何て…?」
「うちも聞きたいです!」
「あのね。アーノ大尉は…」
優梨はアリス達にアーノ大尉のその後を聞かせてあげたのだった。
「やっぱり…ついさっきアタシ達を助けてくれたのはアーノ大尉だったんだね…クマ子ちゃんの時と今回ので、もう2回もピンチを救ってくれてる…ちゃんとお礼が言いたいな…」
「私もお礼が言いたいよ…そして出来れば一緒に旅がしたい。」
「そうだね。アタシもアーノ大尉なら一緒に旅をするの大歓迎だよ。」
「アリスちゃん…」
「その方、ずるいです!」
«えっ?»
ロリーヌはぷくぅと顔を膨らませた。
「どっどうして怒ってるの…?」
「ユリお姉様ったら、うちのことは自分から旅に誘ってくれなかったのに、その方は旅に誘いたいって、ずるいです!ぷんぷん!」
「そっそれは!」
「どうせうちは勝手に付いてきただけですもんね!」
ぷいっと、後ろを向いた。
「違うよ!ロリーヌちゃんから言ってきてくれたから言わなかっただけで!この子と一緒に旅が出来たらなって、最初から思ってたから!」
「本当ですか…?」
ピクッと耳が反応した。
「本当だよ!信じて!」
「な〜んだ♡それならそうと早く言ってくださいよ♡」
ロリーヌは機嫌を直したのか、笑顔になって優梨の腕にくっついた。
「ふぅ。よかったぁ…」
「ユリちゃんが焦ってるの久しぶりに見た気がするな。」
「アリスちゃんってば…?」
(ふっふ。私も久しぶりに見れて嬉しいです。)
(アイルちゃんまで…まぁいっか…)
優梨達は次の魔族の城があるトキ村を目指して歩くのだった。
そしてその頃…優梨達の暗殺命令を出したキル少将の城にあの謎の少女サツキ大尉が帰って来ていた。
【何だと?何者かの邪魔が入って、部下達が全員、殺されて暗殺が失敗した?】
「あと少しの所だったんだけどね〜。」
【ふざけるな!!】
肘掛けにヒビが入るほど、怒りでドンッと強く叩いた!
「キル様!落ち着いてください!」
「あら。怒っちゃった。」
【きさま、部下達を殺されたあげく暗殺には失敗して、さらにそれで自分だけは戦わなかっただと!】
「そうだけど?」
【そんなふざけたことがあるか!!】
「いちいちうるさいな?」
【まさか我らを裏切って、やつらの味方になろうと考えているんじゃないだろうな!!どうだ答えろ!!】
「もしかしてボクを疑ってるの?」
魔力のオーラを放って睨みつけた。
【だったら、何だと言うのだ!】
キル少将も魔力のオーラを放って睨み返した。
「お二人ともお止めください!あなた達が戦ったら城が簡単に吹っ飛びます!」
【ふん、言われなくてもわかっておるわ。】
「ただのジョークだよ、ジョーク。」
「なっなんだ…」
【だがしかし、今回の失敗をどうするつもりだ?もし奴らがトキ村のブラッド大佐を倒したら、次はここに来ることぐらいはきさまでもわからないわけではあるまい?】
「言われなくても分かってるっば、失敗を帳消しにするために、今からトキ村に行ってくるよ。」
「トキ村へ…?なぜです…?」
「そんなの決まってるじゃん、ブラッド大佐に協力して、今度こそあの子達を確実に殺してくるんだよ。」
「なっなるほど。」
【次の失敗は許されないぞ、よいな?】
「へいへい、分かってるよ、うざいんだから。」
「人間風情が…キル少将になんて口の聞き方をするんだ…」
「なんか言ったかい?モルト中尉?」
「なっ何も言ってませんぞ、ハッハッハ。」
「じゃあ、さっそく行ってくるね。」
サツキ大尉の足元に紋章が現れた。
「あっ!一つだけ訂正させてね!」
【何だ?】
【ボクが人間の味方をするはずないでしょう?ボクは絶対に人間達を許さないんだから?】
そう呟いたら、後ろ姿を見せて一瞬で消え去った!
【それもそうであったな、奴が我らに協力する理由は単に暇つぶしがしたいだけではなく、人間達に復讐するためだからな?】
「しかしサツキ大尉はなぜそれほど人間を憎んで?」
【奴は人間達に見殺しにされそうになったことがあるらしい。】
「人間とは愚かな生き物ですからな、ありえますね。」
【だがそんなことはどうでもいい、やつの魔力量は並の冒険者達よりも遥か上、それに不思議なスキルも持っている、我があんな生意気な人間の小娘に大尉をくれてやったのもそれが理由、くたばるまで我の役に立ってもらうとしよう。】
「役に立たねば、殺せばいいだけですからな?」
【そういうことだ、ガハハハッ!】
「それもそうですな、ホッホッホ!」
しかし、キル少将の部下にはサツキ大尉のことを心配する者も居た。
(サツキちゃん…)