118話 サウスの街から旅立つ日
«皆さん、お世話になりました!»
優梨達はサウスのマーガレットの家へ戻り、荷物をまとめて旅に出る支度を済ませると、すぐに旅に出る事にした。
「お世話になったのは私達の方よ。」
「レアちゃんの言う通りだよ。君達がサウスに来てくれなかったら、マーガレットを救えなかったかもしれない。本当に感謝している。」
「私が生きてここに居られるのはあなた達のおかげよ。ありがとうね。」
マーガレットは優梨とアリスの手をとって微笑んだ。
「そっそんな…」
「照れるね…?」
「ユリ先輩、アリス先輩。この御恩は決して忘れません。もしユリ先輩達がピンチになったら、いつでも呼んでください。今度は自分達が助けに行くっす。」
「ええ。私達はいつだってユリさん達の味方です。」
«ありがとう。»
「二人で幸せな家庭を築いてね?」
「応援してるよ。」
«はい。»
優梨達は手を重ね合った。
«私達だって、助けに行きます!»
メイド達が敬礼した。
「メイドちゃん達…」
「皆さん…」
「ロリーヌちゃん。体には気をつけるのよ。あなたが幸せで居られるように祈っているわ。」
「うぐっ…レアお姉様〜!!」
ロリーヌは大粒の涙を溢しながらレア大佐に抱きついた。
「あらあら。」
「レアお姉様に仕えられて、うちはすごく幸せでした。城のみんなと居た楽しい時間を絶対に忘れません。」
«ロリーヌちゃぁん…»
「離れてもあなたは私の家族、それを忘れないでね。」
「はい。レアお姉様。」
「二人とも、ロリーヌちゃんのことをよろしく頼むわね。」
«はい。»
「マーガレット姉?そういえばマナさんはどこに行ったっすか?」
「門を出る前は一緒に居ましたよね?」
「ふっふ。マナちゃんはね。」
《おーい!!ユリちゃん、アリスちゃんー!!》
「あれっ?今、マナさんの声が聞こえたような?」
「では門番さん、扉を開けてもらえますか。」
「かしこまりました。」
すると門の扉を開いた!そして目の前にはマナと大勢の街の人々がいた!
「すごい人の数…?」
「こっこれって…?」
「すぐにユリちゃん達が旅に出るって聞いて、お礼を言うタイミングがないから、せめて旅立つのを見送りたいって街の皆が集まってくれたんだ!そうですよね、皆さん!」
«オォォー!!»
「街の皆、あんた達に感謝してるんだ!」
「そうよ!街を救ってくれてありがとうね!」
«お姉ちゃん達、ありがとう!!»
«ソノサキユリ、アリスー!!»
「どうしよう、アリスちゃん…嬉しすぎて、涙が止まらないよ…」
「アタシも…この街もリーベルみたいに温かい人達がいっぱいの街だったんだね…」
「あたぃからもお礼を言わせてくれ。二人ともありがとうな。」
«マナさん…»
「やるじゃないっすか、マナさん。」
「ポンコツのおまえに褒められても嬉しくねぇよ…」
「もう。ポンコツは言わない約束っすよ?」
「あっそうだったな…?すまねぇ…」
「それじゃあ、アリスちゃん。ロリーヌちゃん。そろそろ出発しようか。」
「そうだね。」
「はい!」
「それじゃあ、皆さん!行って来ます!」
«行って来ます!»
«行ってらっしゃい。»
«行ってらっしゃいー!!»
優梨達は大歓声で見送られながら、サウスの街から旅に出たのだった。
「さぁて!自分もじっとしてられないっすよ!ユリ先輩達みたいに強い冒険者になれるように今日から修行を始めるっす!あっでもどう修行をしたらいいのかな…?」
「おまえは相変わらず、計画性がないな?」
「確かに…」
「じゃあ、アタシが修行をつけてあげよう。」
「まっマジっすか!!」
「マーガレットと約束して、当分は旅に出るつもりないからさ。たっぷり修行させてあげられるよ。」
「やったっす!SSランクの冒険者に修行をつけてもらったら、もしかしたらユリ先輩達を超えられるほど強くなれるかもしれないっす!」
「おいおいー?それはハードル上げすぎじゃねぇのか?」
「なっなれるっすよ!というか、なってみせるっす!」
「私は信じます。ララちゃん。」
「ありがとう♡メグたん♡」
「頑張ってちょうだい。」
「レアお義姉さんもありがとうっす!」
「まぁ、あたいも少しだけ期待しといてやるよ。」
「頑張るっすよ〜!」
そして旅に出た優梨達はというと…
「ユリお姉様〜♡」
ロリーヌは腕を組み優梨にべったりだった。
「少し歩きづらいかな…?」
「いいじゃないですか〜♡」
「でもアリスちゃんが嫉妬しちゃうから…?」
「大丈夫、アタシも成長してるんだから。前みたくしょっちゅう、嫉妬したりしないよ。」
「ですって。」
「そう…?」
「ロリーヌちゃん、次はアタシに腕組んできてもいいんだよ?」
「あっ結構です!ユリお姉様としか腕組みするつもりないので!」
「ガーン!そうですか…」
(ロリーヌちゃん、アリスちゃんにはまだ心を許してない感じあるね…?)
(きっと打ち解けあえる時が必ず来ますよ。)
(だといいな…)
「それでアリスさん?ここから近い魔族の城って、どこなんですか?」
「あっうん、えっとね…」
アリスは落ち込みながらも、レア大佐から貰った地図を確認した。
「ここから一番近いのはサウスの街から3つ山を越えた先にある"トキ村"って村みたい。」
「3つ山を越えた先か…ちなみに距離数だとどれくらい?」
「約100キロぐらいじゃないかな?」
「100キロも歩くんだ…?」
「確かに徒歩って考えると少しきついかな?」
「それでも少しなんだ…?」
「うちは平気ですよ。ユリお姉様と一緒だったら、どんなに遠くても歩けます♡」
「そっそっか…」
「えへへ♡」
「いちよう聞くけど…アタシと一緒だったらどう…?」
「すぐに諦めると思います?」
「やっぱりそうだよね…」
「しっかりして、アリスちゃん!」
「クンクンッ。」
「どうしたの、ロリーヌちゃん?」
「二人とも止まってください。」
«えっ?»
「出て来たらどうですか!隠れても意味ありませんよ!うちには居るのはわかりますから!」
「隠れてる…?」
「誰が…?」
『よく気づいたな。』
«えっ!?»
すると周りの木の上や草むらから、次々に魔物達が姿を現した。
『流石は犬の魔物か、我々の存在に気づくとはな?』
「殺気の匂いが全然、隠せてませんでしたよ?」
「フッフッ、そうか、殺気の匂いか。それは隠そうとしても隠せないわけだ…」
「あなた達は一体、何者なの…?」
「我々はだな、とある魔族の主様に仕える暗殺部隊だ、これだけ言えばわかるよな?」
「つまりアタシ達を暗殺しに来たってこと?」
「そうだ、きさまらにはここでくたばってもらう。」
リーダーの合図で部下達は素早い動きで優梨達の周りを囲み逃げ場を封じた。
「やるしかないみたい!」
「そうみたいですね!」
「うっうん!」
「偵察隊の報告で知っているが、主様の考えた通り、レア大佐達はきさまらを逃したようだな?」
「そこまで知られているなんて…」
「きさまらを倒した後で、反逆者のレア大佐達の首を取りに行くことにしよう。」
「そんなことさせるもんか!ガルルッ!!」
「その前にアタシがぶっ殺してやる!」
「あなた達はここで倒してみせる!エンジェル・ウイング!」
優梨は背中に天使の羽を纏った。
「行くよ、みんな!」
「うん!」
「はい!」
「罠にかかかったな?」
«きゃっ!?»
足元に謎の大きな紋章が現れて、3人とも体が動かなくなった!
「ぐっぐっ!駄目です!!身動きが完全に封じられました!!」
「アリスちゃん、この術って一体!?」
「バインド系の術だとは思うんだ!でも鎖がないなんて見たことも聞いたこともない!」
『そりゃそうさ、だってこの術はこの世界の術じゃないもん?』
«えっ!?»
すると木の影から、フードをかぶって飴を舐めている謎の少女が現れたのだった。