12話 宿探しがこんなに大変だったとは…
(想像してたより栄えてる街だね?
見渡す限り、色んな種類の店があるよ。)
(ええ。思っていたより大きい街のようですね。)
(武器屋さんに防具屋さんや薬屋さんがある。ほとんどの建物が洋風な感じだし、本当にゲームの世界に迷い込んだみたい。異世界に来たって実感するなぁ…)
(優梨さん?宿探ししなくていいんですか?)
(そっそうだったね!今は泊まる宿を探さなきゃ!)
私は恥ずかしがりながら、ちょうど近くにあった宿屋に泊まれるかどうかを聞きに行った。
「すっすみません…ここの宿屋って、今からでも泊まる事って出来ますか…?」
すると受付のおじさんは申し訳無さそうに…
「ごめんな。今日はもう満室で部屋に空きがないんだ。ほかの宿屋をあたってもらえるかな?」
「そっそうですか…わかりました…ほかの宿屋をあたってみます。」
「本当にごめんな。」
私は宿屋を出た。
(まぁ、きっとここが満室なだけだよね…次の宿屋に聞きに行こう…)
(そうですね。次に行きましょう。)
すぐに違う宿屋に入った。
「あっあの…すみません…?
ここの宿屋は今から泊まれたりする事は出来ますか…?」
すると受付の奥からお姉さんが歩いてきて…
「ごめんなさいね。1時間前に来たお客様で部屋の空きが埋まっちゃったのよ。」
「そうなんですか…参ったな、ここも満室で泊られないのか…」
「もしかして、あなた、この町に来たのは初めてかしら?」
「はっはい、そうですけど…?」
「それじゃあ、知らないだろうけどね…?この町は冒険者や旅人がよく訪れるから、この時間帯はもうとっくにどこの宿屋も満室になっちゃって、空きがないのよ…?可愛そうだけど泊まるのは無理だと思うわよ…?」
「そっそんな…」
私が肩を落として、落ち込んでいると…
「私もなんとか泊めてはあげたいんだけどね、うちの宿屋はどこの宿屋より狭いから、部屋以外に寝られるスペースがないのよ、ごめんね…?」
「そうなんですね…」
「あっそうだ!私の知り合いにこの町で一番大きい宿屋を経営してる人がいるから、その宿屋に行ってみるといいわ!そこなら運が良ければ空いてるかもしれない!」
「本当ですか!」
「今、その宿屋までの地図を描いてあげるわ、ちょっと待ってて!」
「あっありがとうごさいます!」
お姉さんが宿屋までの地図を描き終わるまで、椅子に座って待つことにした。
(良かったですね!親切なお姉さんで!)
(本当にね。見ず知らずの私のために優しくしてくれて、ありがたいな。)
「お待たせ、描けたわよ。これの通りに歩けば迷わずに宿屋に行けるわ。」
「ありがとうございます!」
「無事、泊まれることを祈ってるわね。」
私は宿屋を出ると地図を頼りに目的地へ向った。
(教えてもらった宿屋はここか…)
(今度こそ大丈夫ですよ!多分…)
(だっだよね…いくら何でも、こんなに大きい宿なら…)
私は宿屋に入ったら、すぐに受付に向かった。
「あっあの、すみません!ここの宿屋さんって、まだ空きがありますか!」
「申し訳ありません。先程、来られたお客様で
当宿屋は満室になってしまいました。
すみませんがほかの宿屋を探していただけますか?」
「ポカーーン…」
「お客様!?だっ大丈夫ですか!?」
「あはは…そっそうでしたか…
じゃあ、失礼します…」
私は魂の抜けたようにへろへろになって宿屋を出たのだった。
(優梨さん、すみませんでした…
私が森の中で、モンスター達と連戦なんてさせるから、町に来るのが遅れて、それで…)
(いいんだよ…気にしないで…?
アイルちゃんが謝ることじゃないよ…)
(でも泊まる所が…)
(心配しないで、こうなったら諦めずまだほかの宿屋、全部に泊まれるか聞いてみるよ。
運が良ければ、空いてる宿もあるかもしれないんだし。
それでも駄目だったら野宿で我慢するよ。)
(そこまで私の事を気づかって…)
(そのかわり、野宿だったら、怖いから。アイルちゃん私が眠るまで喋り相手になってくれる…?)
(もちろん、何時間でもお相手いたします。
なんなら安眠出来るように子守唄も唄ってさしあげますから。)
(ふっふ、そこまで子供じゃないってば。
とりあえず、諦めないで宿屋探し再開しますか。)
私が気を取り直して、歩き出そうとしたら…
「やめて!!離してぇ!!」
「えっ!?」
どこかから女の人の悲鳴が聞こえてきた。
(アイルちゃん、今の聞こえた!?)
(聞こえました!)
(あっちで人が集まってる、行ってみよう!)
私は気になって、宿探しを忘れて向かった!