114話 ユリお姉様と呼ばせて。
「ふぅ。いいお湯だった。」
「温まったよね。」
城の大浴場を上がった優梨達はバスローブ姿でリクライニングチェアに座っていた。
「二人ともこれをどうぞ。」
レア大佐は冷たいジュースを持ってきた。
«ありがとうございます!»
「この後は昼食ね。メイドちゃん達が腕に縒りをかけて料理を作ってるから、楽しみにしてて。」
「至れり尽くせりだね。」
「こんなにしてもらっていいのかな…?」
「遠慮しないの。あなた達にはそれだけ感謝してるんだから。」
«レア大佐…»
«レアお姉様!マッサージ致します!»
「あら♡お願いするわね♡」
レア大佐はバスローブを脱いで、用意されたマッサージ台にうつ伏せになった。
«お姉様〜?どうですか〜?»
「いいわぁ♡あなた達、上手よ♡」
「やったぁ♡」
「お姉様に褒められた♡」
「早く交代して〜!」
「私だってお姉様のお体に触れたいんだから〜!」
「私だって〜!」
「あなた達もマッサージどうかしら?」
「私達もですか!」
「お風呂上がりは特に気持ちいいわよ。メイドちゃん達、頼めるかしら?」
«はい!もちろんです!»
「どうしようか…?アリスちゃん…?」
「せっかくのご厚意だから、やってもらってもいいんじゃ…?」
「じゃあ…そうしようか…?」
二人はマッサージを受けることにした。
「いかがかしら?」
「レア大佐の言った通りですね。気持ちいい。」
「でしょう。アリスちゃんはどうかしら?」
「気持ちいいです…あっそこいい、あんっ♡」
(アリスちゃん…なんかエロい…)
(ですね。)
「ユリさん、もう少し力を入れますか?」
「その声って、あなた犬耳メイドちゃん?」
「そっそうです!」
(はわわぁ♡声だけでうちだって気づいてくれた♡)
「昨日の戦いはあなたが一緒に戦ってくれて本当に助かったよ。ありがとうね。」
「そっそんな…」
「それであの時に出来なかった告白の返事なんだけど…」
「はっはい…」
「私ね。世界を救うために旅をしてるんだ。」
「知ってます。悪い魔族を退治する旅ですよね…?」
「でも安心してね!レア大佐達は退治するつもりないから!」
「わかってますよ。それぐらい。」
「ならよかった。」
「ユリちゃん達、二人だけで話してるみたいですね…?」
「そっとして置いてあげてくれるかしら。」
「はっはい。」
(何を話してるんだろう…?)
「それでね。私は世界を救うまでは誰とも付き合わないことにしてるんだ…」
「そっそうなんですか…」
「それに先約もあって…」
「アリスさんですよね…?」
「気づいてたの…?」
「誰だってわかりますよ…」
「だけど私ってわがままなのかな…あなたの気持ちにも応えてあげたい…」
「ずるい性格ですね…」
「だよね…」
「けどまだチャンスがあるってことですね。」
「それって…?」
「ユリさんが世界を救うまで、返事を聞くのは待つことにします。」
「いいの…?」
「その代わり、二つのお願いを聞いてもらってもいいですか?」
「いいよ。私に出来る事なら。」
「じゃあ。一つは今からユリお姉様って呼ばせて欲しいこと。」
「私をお姉様!?」
「駄目ですか…?」
「照れるけど…呼びたいならいいよ…?」
「ユリお姉様♡」
「はっはい…」
(人生で一度は言われたいと思ってたセリフを聞けるとは…感無量だ…)
(涎、出てますよ?)
(はっ!これはマッサージが気持ちよかったからで!)
(誤魔化さなくていいですってば。)
「そっそれでもう一つのお願いって…?」
「うちに名前を与えてくれませんか…?」
「ほえっ…?名前を…?」
「はっはい!」
「あれっ…?それってどこかで聞いたような…?あっ!」
優梨は魔物に新たな名前を与えることで主従契約をすることになることを思い出した。
「もしかして、私と主従契約したいってことかな…?」
「その通りです!」
「いいの…?レア大佐の部下じゃいられなくなるよ…?」
「それを覚悟の上です!」
「・・・・わかった。名前を与えてもいいよ。」
「本当ですか!」
「けどこれは私達だけの問題じゃないと思うんだ。2人に話してからでもいいかな?」
「それもそうですね…わかりました。」
アリスとレア大佐に主従契約のことを話した。
「そっか。あなたは私の部下をやめて。ユリちゃんと主従契約をして使い魔になりたいのね?」
「はっはい…」
「いいわよ。ユリちゃんと主従契約をすることを認めてあげるわ。」
「本当ですか!お姉様!」
「だって私の可愛いメイドちゃんが自分で選んだ道なら、それを私は応援してあげたいと思うもの。」
「レア大佐…」
「レアお姉様…ありがとうございます…」
犬耳メイドはレア大佐に涙目で抱きついた。
「幸せになるのよ。」
「アリスちゃんはどう…?」
「私も賛成だよ。」
「本当ですか…?」
「ええ。アタシ達の恩人だもん。一緒に旅をしてもいいって思ってるよ。」
「アリスさん…」
「そっか。ならもう私にも迷いはないよ。あなたの新たなご主人になろう。」
「ユリお姉様〜!」
今度は泣きながら優梨に抱きついた。
(パーティーに新たな仲間が増えましたね。)
(クマ子ちゃんみたいに可愛い妹が出来た気分かな。)
「それじゃあ、ユリちゃん。さっそくメイドちゃんに名前をつけてあげてくれるかしら?」
「はっはい!何て名前にしようかな…?」
優梨は目を閉じて考えた。
(犬耳だからイヌ子…でもなぁ…クマ子ちゃんの時もそんな感じで考えちゃったからなぁ…ちゃんと考えた名前をあげたい。)
「どうですか…?」
「決まった?」
「"ロリーヌ"とかどうかな…?」
「まぁ。いいんじゃない。可愛いと思うわ。」
「アタシもいいと思うよ。」
「よかった。今回は文句言われなかった。」
「素敵な名前です!気に入りました!私の名前は今日からロリーヌです♡」
「本人も気に入ってくれて、ほっとしたよ。」
「お役に立てるように頑張ります♡ユリお姉様♡」
「これからよろしくね。ロリーヌちゃん。」
「よろしく。」
「はい♡」
「よかったわね…メイドちゃん…」
優梨に新たな仲間、メイド服を着た犬耳少女、ロリーヌが仲間になった。
「優梨さんってやっぱりすごい人だなぁ…」
すると扉をノックされた。
「はっはい!どなたですか?」
『私です。メアちゃん。』
「その声って!」
メアは慌てて扉を開いた。すると目の前にはアイルが居た。
「ただいまです。」
「うぐっ…うぐっ…アイルちゃん!!」
「メアちゃん。」
メアは大粒の涙を流して抱きついた。
「心配させましたね。」
「もう体を動かして平気なの…?」
「はい。平気です。女神様に私の天使力は完全に回復したって言われましたから。」
「よかった…」
「私が居ない間、優梨さんのサポートをずっとやってくれて。本当にありがとう。」
「いいんだよ。感謝しなくて。アイルちゃんの役に立てるなら、これほど嬉しいことはないんだから。」
「これは感謝の印です。」
「えっ…?」
アイルはメアの頬にキスをした♡
「なっなっ…」
「伝わりましたか…?」
「すごく…伝わった気がする…」
「よかったです…」
(アイルちゃん。やっぱりあなたのことがこの世で一番大好きだよ。)
アイルの笑顔を見てメアは強く思った。