97話 世間は広いようで狭い。
優梨達はララの案内でマーガレットの家に着いていた。
「お茶をどうぞ!」
«ありがとう。»
「ふぅ…隊長さんの家って言うから、どんな豪華な家だろって緊張してたんだけど、普通の家で安心したなぁ。」
「ユリちゃんもだったんだね。アタシも緊張してたんだ。」
「前にマーガレット姉が話してたんすけどね。隊長だからって見栄を張ったりするのはしたくないらしいんすよ。」
「本当にマーガレットさんって素敵な隊長さんだね。」
「昔の上司からの教えだそうっすよ。」
「そういえば、ウイス隊長も同じこと言ってたな。」
「あの人なら言いそうだね。」
「ウイス隊長、その人っす!」
«えっ?»
「マーガレット姉は昔、王都ギルドの精鋭部隊に所属していたらしくて、そこでの上司がウイス隊長だったって話してたっす!」
「すごい偶然だね?アリスちゃんは知ってた?」
「アタシも初めて知ったよ?」
「まさかお二人がそのウイス隊長とお知り合いだったとは驚きました。世間は広いようで狭いっすね。」
「本当だね。」
「さてと!そろそろお昼になるんで、さっき森で助けってもらったお礼に、腕によりをかけてお昼ご飯を作るっすよ!」
「ララちゃん料理作れるんだ…?」
「自分の唯一の取り柄っす!」
「相当、自信あるみたいだね。」
「私達にも手伝えることないかな?」
「それもそうだ。アタシ達で手伝えることがあったら手伝うよ?」
「いいっすよ!お二人はお客様ですから!気を使わないでください!」
「そう…?」
「もしよかったら、ご飯食べ終わった後、街の人気スポットを紹介したいんですが、いかがっすか?」
「観光しに来たわけじゃないけど。せっかくのご厚意を無下にしたくないし、お願いしようか?」
「うん。私もいいと思う。」
「決まりっすね!」
ちょうどその頃、レア大佐の手紙を預かった犬耳メイドがサウスの街を目指して森を歩いていた。
「レアお姉様から頼まれた初めてのお使いだもん。絶対に果たしてみせるぞ。待ってろよ、ソノサキユリ。うちはメイドになる前は犬のモンスターだったんだから、あんたの居場所ぐらい、うちの嗅覚ですぐ探し出せるんだから。まずはこのメグ少佐に頂いたソノサキユリの服の切れ端の匂いを嗅いで、クン、クン、クン。」
すると次第に表情が変化して、よだれを垂らしながら瞳がハートになった。
「ワゥゥン♡なんていい匂いなの♡この子、間違いなくうちの好みじゃん♡はっ!なっ何を考えてるの!ソノサキユリはうちらの敵!サウスの街に急がなくちゃ!」
犬耳メイドはそう自分に言い聞かせたら、サウスの街に急いだ。