95話 サウスの隊長マーガレット。
「マナさん、ただいま帰りました!」
「お帰りなさい。って…なんだララか。」
「なんだとはなんすっか!ひどいっす〜!」
ララはぷくぅと顔を膨らませた。
「まぁまぁ、そう怒るなよ。依頼の木の実は手に入れてきたか?」
「あっ…忘れたっす…」
「おまえ、何しに森に行ったんだ…?」
「そっそれは置いといて!紹介したい人達がいるんす!」
「紹介したい人達…?」
«どっどうも。»
「聞いたらマナさん驚くっすよ!なんとこの人達は!」
「あんた達って!双子姉妹のリンとロンに模擬戦で勝ったあのソノサキユリとアリスだよな!」
「なっ!一発で当てたっす!」
«そっそうです。»
「有名人じゃねぇか!握手してくれよ!」
«あっはい…?»
優梨達は困惑しつつも交互に受付のお姉さんと握手した。
「あたいさ、同僚の子と一緒にリーベルまで行って模擬戦を見に行たんだよ!本当に感動した!」
「あっありがとうごさいます…」
「なんか照れるね…?」
「でもあんたらみたいな有名人とララが一緒にいるなんて、一体、どうなってるんだ…?」
「えへへ…それがっすね、実はさっき依頼の木の実を採ってる最中に誤ってストライク・イノシシの尻尾をふんじゃって逃げてる所をお二人に助けてもらったんすよ…」
「それでか、本当におまえはおっちょこちょいのポンコツだな?」
「流石に返す言葉もないっす…」
「すまなかったな。うちのポンコツが迷惑かけて。」
「迷惑だなんて!」
「アタシ達もこの子に冒険者ギルドまで案内してもらいましたから!」
「やっぱ期待の新人は器もでかいんだなぁ。おまえも早く二人みたいに立派になれるように頑張れ、ポンコツ。」
「そんなポンコツ、ポンコツ、言わなくったっていいじゃないっすか!」
「だって本当のことじゃねぇか。隊長の親戚じゃなかったら、おまえみたいなポンコツ、とっくにギルドから追放されててもおかしくないぞ?」
「ムカー!まだ言うっすか!」
「何だ?あたいとやるってのか?これでもCランクなんだぞ?」
「じょ上等っすよ!」
二人は睨み合って、バチバチッと火花を散らせた。
「二人とも落ち着いて…?」
「そっそうだよ…?」
『いい加減にしなさい。』
«えっ?»
すると優梨達の後ろから眼鏡美女が現れた。
「隊長!」
「マーガレット姉さん!」
(綺麗な人…)
「もう。あなた達は事あるごとに喧嘩して、仲良くしなさいって何度言えばわかるのかしら?」
「だってこいつがつっかかるから…」
「自分のことポンコツって言うから…」
「マナさん。あなたは受付として、言葉遣いには気をつけなさいって言ってますよね?」
「はっはい…すいません…」
「ララ?あなたはもっとマナさんを先輩として敬いなさい?わかった?」
「わかったっす…」
「じゃあ仲直りに二人で握手ね。」
«はっはい…»
マナとララはお互いに納得してないようだが、仕方なく握手をした。
「よろしい。」
「すごい。二人の喧嘩をすぐに収めちゃった。」
「あの人がこのギルドの隊長さんか。」
「もしかして、美人だから見惚れてた?」
「そっそんな、違うよ!」
「本当かな?」
「お二人ともごめんさいね。身内のみっともない所を見せちゃって。」
«いえいえ、そんな!»
「あなた達ことは存じていますよ。ソノサキユリさんとアリスさんですよね。」
«はっはい!»
「私はこの冒険者ギルドの隊長でマーガレットといいます。よろしくね。」
«こちらこそです!»
二人は一礼した。
「聞いた通りの素直で礼儀正しい良い子達のようですね。あなた達もここ最近にこの街の近くの森で目撃された魔族の城の主を退治に来られたのですか?」
「そりゃそうっすよ!それが理由っすよね!」
«あっいや、えっと…»
「違ったのですか?」
「最初はそのつもりで来たんです…でも…」
「何かここでは言いづらい事情があるみたいですね?よかったら私の部屋に来てもらって、その事情を聞かせてもらっても構いませんか?」
「だって…?どうする、ユリちゃん…?」
「いいんじゃないかな…?アリスちゃんは…?」
「アタシもいいと思う…」
「決まりましたか?」
«お話します。»
「それはよかった。部屋へご案内します。私に付いてください。」
«はっはい!»
優梨とアリスは隊長のマーガレットの案内で隊長室に向った。
「いいなぁ…隊長のお部屋で雑談かぁ…」
「マナさん羨ましいんっすね。」
「そっそんわけあるか!」
「隠さなくったっていいんすよぉ〜?マナさんは隊長に憧れて、この冒険者ギルドに務めてるんすもんね〜?」
「ちっ違うっつーの!?」
「その割には顔が赤くなってるっすよ?」
「なっなってねぇよ!」
「自分が小さい頃〜マーガレット姉さんがよく家に遊びに来て、お風呂に入ったり、一緒のお布団でお昼寝したりしたっす〜」
「ぐぬぬ…」
「羨ましいっすか?羨ましいっすよね?」
「おまえ…覚えてろよぉ…」
マナは強がってはいるが内心、すごく羨ましがっていた。