82話 アリスvsリン(後編)
「さ〜て、どう私との力の差を思い知らせてあげようかな?」
「そっちこそ油断してるじゃんか!フレイム・スマッシュ!」
アリスはリンの顔に殴りかかった!
「誰が油断してるって?」
「なっ!」
しかし紙一重に躱された!そして…
「決めた。私との力の差を思い知らせたいから、水攻撃はやめて、あんたの得意な炎攻撃で戦ってあげる。」
「アタシと同じ炎攻撃…?」
「まぁ、見てなよ。」
リンは右腕から青い炎を出した。
「アリスちゃんと同じ青い炎!?」
「そっそんな…?」
「驚くのはまだ早いわ。」
「消えた!?」
「目で追えない!」
「フレイム・スマッシュ。」
「グハァッ!!」
「アリスちゃん!!」
リンはアリスの腹部を思いっきり殴った。
《アリス選手!たった一撃ですが、相当ダメージをくらったようだ!すでにふらふらで起き上がっているのがやっとだと思われます!》
「ガハァッ…ガハァッ…」
「へえ〜あんた伊達に炎を得意としてるのか、炎攻撃には耐久性があるみたいね?」
「ハァハァ…どうして、アタシの術を…?」
「魔族との戦い以外でスキル発動したのは初めてだし、ごく一部の関係者しか知られてないんだけど、私、上級レアスキルを持ってるの。」
「上級レアスキルを…?」
「上級レアスキル『術真似』どんな相手の術も瞬時に真似して使う事が出来るの。」
「リンちゃんがそんなスキルを持ってたなんて…ガハァッ…」
「ファンとして、私の新情報が知れて嬉しいでしょう?」
「今は悔しい…」
「だろうね?自分の術でダメージくらってるんだもん?どう、これなら力の差がはっきりわかるよね?」
「ハァハァ…大したことなんかない…」
「強がり言っちゃってぇ、血を大量に吐いてるし、かなりダメージ受けたんじゃない?」
「アタシの方が何倍も強い…」
「ムカッ。だ・か・ら、強がりはダサいってば。」
「ゴハァッ!!」
リンは容赦なく今度は腹部に蹴りを入れた!
「痛たいでしょう?」
「ぐっ…」
「しっかりして、アリスちゃん!!」
《リン選手の追撃に流石のアリス選手も膝をついたまま、中々、起き上がれないようだ!》
「負けるな!立ち上がれ、アリス!」
「立ち上がって!」
「アリス…」
「アリスちゃんを信じよう…?」
ソフィーはミーナの手を握った。
「ソフィーちゃん…」
「そろそろ、降参してくれないかな?じゃないと私、悪役みたいに見られちゃうからさ?」
「絶対にするもんか…」
アリスは必死に起き上がると、リンの攻撃が届かないように距離をとった!
「うざいぐらいタフだなぁ?だったらこの術ならどう?」
リンは手を前に広げて、炎を溜め始めた。
「まさか、ファイアー・ボール…?」
「正解。でもあんたとは魔力の質が違うんだ、見て驚きな、ファイアー・ボール!」
リンはアリスの倍の大きさの炎の玉を放った!
「なんて大きさの炎なの!」
「あんなの当たったら、火傷どころじゃすまねぇべ!」
「アリスちゃん逃げてぇ!!」
「いやだ!」
だがアリスは逃げようとしない!
(まっまさかあれをやるつもりじゃ…?)
(三日間の修行で、まだ一度しか成功しなかったけど…やるしかない!)
「ようやく観念したようね、そのまま攻撃をくらって、戦闘不能になりなさい!」
(自分の力を信じるんだ!)
「アリス!!」
「うぉぉぉ、『フレイム・カウンター』!!」
アリスはドーン!!と力いっぱいぶん殴って、リンの炎攻撃を跳ね返した!
「やった、出来たぁ…」
「うそ!?ぐわぁぁ!!」
「姉さん!!」
リンは跳ね返された自分の炎攻撃をもろにくらった!
「おいおい、マジか…?あのリンがもろに攻撃受けたぞ…?」
「大丈夫かしら…?」
「まさかやられたんじゃ…?」
《ゴホッゴホッ、なっなんて威力だったんでしょう!爆発の衝撃で起こった煙でリン選手の姿が全然見えません!》
「流石に決まったべ!」
「いや、まだわからないよ…」
「ハァハァ…ガハァッ…」
(今のを跳ね返すので…アタシの魔力をほとんどを使っちゃった…お願いだから、これで決まって…)
《果たしてリン選手はどうなって…?》
【流石に今のは少し効いたなぁ…】
煙が上がり現れたリンは唇から少し血を流しながら、服が多少、ボロボロになっていた。
《すごいリン選手〜!あれほど強い攻撃をまともにくらいながら、あまりダメージを受けていないようだ!》
«ワァァ!!»
「ハァハァ…あれでも…駄目だったか…あっ…」
「アリスちゃん!!」
するとレフリー係の隊員のお姉さんが倒れたアリスに駆け寄った!
『アリス選手、気絶しているために!戦闘不能と判断!よって、この勝負!リン選手の勝利です!』
《決まりましたぁ!!模擬戦の最初の戦いの勝者はリン選手です!!》
«ワァァ!!»
「よく頑張ったわね…アリス…」
「そうだね…」
「あいつは十分よくやったべ…」
「だね…あのAランクのリンといい勝負が出来たんだから…」
「ええ…褒めてあげなきゃね…」
「それに仇は必ずユリが取ってくれるはずだべ。」
「油断したわね!」
「痛い痛い、引っ張らないで!」
ロンはリンの頬を引っ張って叱った。
「本気で倒されたかと思ったわよ?」
「へえ?もしかして心配してくれたの?」
「なっなわけないでしょう…」
「あ〜あ、それにしてもせっかくの衣装が台無しよ、次の対戦相手との前に着替えなきゃ。」
「そんなの気にしなくていいじゃん…」
「駄目よ?私達はアイドルみたいなもんだし、身だしなみは大事でしょう?」
「だからアイドルじゃないって…」
リンとロンが他愛も無い会話をしていると、救護係の隊員達が担架でアリスを運び始めた。
「アリスちゃん!!」
「ユリちゃん…?」
「よかった…」
「アタシ…気絶したんだ…」
「救護室に運んでくれるみたいだから…そこでゆっくり休んで…?」
「お願い…あの子に…リンちゃんに…勝って…」
「約束する。必ず勝ってみせる。」
「ありがとう…信じてるよ…」
「あとは私達にお任せください。」
「はい。お願いします。」
アリスは救護室に運ばれて行った。
「ミーナママ、ソフィーママ、アリスの所に行ってやってくれ。」
«クマ子ちゃん…»
「ユリの応援はオラとミノリでするべ。」
「二人の分も全力で応援します!だから!」
「ありがとう。」
「行こうか。」
ミーナとソフィーはアリスの運ばれた救護室に向かった。
《観客の皆様、誠に申し訳ありませんが!次の対戦に行く前にリン選手から衣装を着替えたいとお願いがありましたので、只今から10分間の休憩とさせて頂きます!模擬戦再開まで少々、お待ちください!》
(アリスちゃんのために頑張らなくちゃ…)
(サポート以外で何か私にも協力出来ることはありませんか?)
(協力か…)
(あれだ!『百合妄想』を手伝いますから!魔力を高めてください!)
(頼んでもいいの…?)
(もちろんですよ!アイルちゃんのノートに百合妄想のアイデアがいっぱい書いてありましたから、それを参考にするので!)
(そっそっか…?)
(それに。オッホン…)
(メアちゃん?)
(優梨ちゃん♡大〜好き♡)
(えっ!?今の声はアリスちゃん!?どこ、どこ、どこにいるの!?)
(ふっふ。今のは私の声真似なんです。)
(メアちゃんの声だったの!?)
(私、小さい頃から声真似をするのが得意なんですよ。)
(すごい特技だね…?本物だと思ったよ…?)
(えっへん。なのでアリスさんに言われたい言葉、お望みのシチュエーションがあったら言ってください。 全力でやらせてもらいますから。)
(じゃじゃあ…)
優梨は照れながら答えたのだった。