迷宮精霊(本当の愛?)
『先生、まだ諦めないの? もう1週間だよ?こんなに可愛い迷宮精霊の旦那様になるだけで助かるのに、いつまで地上を目指してるの?
もう剣も無いし、左肩も外れてるのに強情過ぎない?
さっきなんてスライムにも苦戦してたじゃない。
そこまでボロボロになられると、ちょっと私も心が痛いよ。
早く、私のものになってよ。
そう……、嫌? それはちょっと、頑な過ぎ……だよ。
ならもう、水も食料も治療薬も宝箱に用意してあげないから。
私に謝るなら早い方がいいよ?』
あー、もう、最悪ッ!
まだ分からないのかしら、私のモノになるまで、絶ッ対! このダンジョンからは抜け出せ無いのに。
ふんっ、腹いせに宝箱に此処じゃ役に立たない金銀財宝でも詰めてあげる。
……でも、実際、どうしたら先生、貴方は私のモノになってくれるの?
先生の腕の温もり、すごく良かった。
はやく、また欲しいよ……。
……、そうだ。
生徒想いの先生だもの、これで試してみようかな。
久しぶりー、先生、おはよ。大丈夫?
あははっ、そんなに睨まないで。
私、先生をこのダンジョンから出してあげることにしたんの。
嘘じゃないよ、本当、本当。
ほらここ、見覚えあるでしょ? 第一層の初めの部屋だよ?
ふふっ、いま気付いたの。
あー、でも実はね、ちょっと条件があるの。
見て、あの扉。あれだけは見覚えないでしょう?
そうそう、残念ながらあれには鍵を掛けちゃってるの。
ふふ、やっぱり欲しい、鍵? 良いよ、大好きな先生にだもの、あげちゃいます。
ほら、ご自分でとって下さい。
不思議そうな顔をしてるね? どこにあるのかって?
あは、ふふっ! ここ、ここだよ。こーこ、私の胸、そう! 心臓、それが鍵なの。
……そう、そうっ! 正解。
ここから出たければ実は迷宮精霊だった先生の教え子、この私を殺すしかないんだよッ!?
どうしたの? お顔が真っ青を超えて…、真っ白だよ?
剣はほら、これを使って。私は逃げも隠れも、抵抗もしないよ?
先生を騙した悪い精霊。殺してもいいんじゃない?
あは、はははっ!
どうしたの? どうしたの?
手が震えて剣も握れないの?
ほら、しっかり持って、しっかり私に突き立てて。
何? こんな悪趣味はやめろ?
ふふっ。やだ、やめない。私を愛せないなら、私を殺して貰うから。
私を殺して、私を苦しめて、そして、先生に私を刻んで……。
私の初めの恋心を奪った責任、取って。
ほら、早く! この薄くて少し柔らかい小さな胸、貫くなんて簡単でしょう?
ダメだよ? 逃げようなんて無駄。この部屋に出口は1箇所しか無いよ。扉をそんなに蹴っても意味無いよ。
知ってるよね? ダンジョン内では精霊のルールが絶対。私が許さなければ、たとえ魔王や勇者であってもダンジョン内では扉一つ、壊せないんだよ。
あははっ、すごい顔。
大丈夫、どんな顔でも先生の顔は、顔以外も、好きだよ。
———。
……えっ? 今なんて……、許してくれ?
それは、……どう言う意味?
私のモノになる、お前みたいなのでも、教え子は殺せない……?
あは、あははッッ!!
ちょっと、違いますけど……、やっと欲しい言葉が聞けた……。
ふ、ふふっ。ヤバい、涙出て来ちゃった。
嬉しい、嬉しいっ!
やっと、やっとなんだ。ああ、たった一週間なのにすごく長かった。
これからは、ずーーーっと一緒。これは契約だからね。
ああ、良かった!
すぐに先生も精霊にしてあげる。私と一緒だよ?
あ、でもその前に……、今の体のままの先生の味も確かめておこうかな……。ふふっ……。
本当に幸せ、これから時間をかけて、先生を溶かして、変えて、教え子への慈愛なんてものじゃない、本物の愛を持たせてあげるからね。
それじゃあ、覚悟、してね。




