ハーピィ(誘拐)
こんにちはー! 鳥羽郵便ですー。お荷物の回収にあがりましたー。
こんにちはー?
あ、やっと出てきてくれましたね? もう薬屋の旦那さん、自分で依頼しといて、あんまり待たせないでくださいよ。
ん? どうしましたか? 俺はまだ独身だから旦那さんって呼ぶな?
あはは、そんな深い意味のある呼称じゃないですよ、別に何でもいいじゃないですか。
……んー? 本当にどうしました? 何か、いつもよりだいぶ顔が強張ってますけど、そんなに嫌でした? 怒ってます? 緊張してます?
気にするな? えー? まぁ、良いですけど。
ところでお荷物は何ですか? あ、これですか。りょーかいです。
……でも、こんな小さな包みなら、わざわざ魔法通信でわたしを呼ばなくても、ポストに入れて置いてくれれば四、五日でお届けできますよ?
たまに回収し忘れちゃうポストもあったりしますけど、笑。
…ふーん、今すぐ届けて欲しかった、ですか。
まあ、料金も貰っててますし、大丈夫ですよ。安心してお任せください!
お届け先は…、カフェの牛人さんの所ですね。
ん? この包み何だか、すごく良い匂いがしますね。香水でも振りました?
あれ? そんな顔を赤くして? どうしましたか?
気にしなくていいから、早く行ってくれ?
あ、なるほどー? これ、牛人のマリルさんへのラブレターか贈り物って所ですね?
旦那は、お仕事ばっかりの人だと思ってましたけど、ちゃんと人間らしいところもあるんですね。
ええ、わかりました、わかりました。そんなに急かさなくても、すぐに速達で行ってきますよ。
それじゃあ、また会いましょうー!
旦那にも積極性があったなんて、油断してた。
いいなぁ、羨ましい。
確かに、マリルさん、いつも優しい笑顔を浮かべてるし、ハーピィのわたしと違って、柔らかくてフワフワした可愛らしい雰囲気だし、
恋愛経験の少なそーな旦那が惚れちゃうのも納得できる。
いいな、いいなぁ。羨ましい、妬ましい。
私なんて背も小さくて、胸もなくて、肘から先は羽で不器用だし。
笑顔は……、負けてないといいなぁ。
牛人は何処でも人気で……、
嫉妬、するなって方が酷いよね。
———。
……あ、そう言えばこれ、返事はどうするんだろ? わたし、聞いてきてあげようかな。
旦那ー、薬屋の旦那ー?
あ、こんばんはー、さっきぶりですね。
こんな時間にどうしたのかって? いやー、さっきの旦那のラブレターの返事を伝えにきてあげたんですよ。
何でわたしがって?
えっと、マリルさんがその場で旦那の荷物を開封されたので、まあ、お得意様のよしみってことで、こうして旦那に返事を伝えに来てあげたんですよ。
速達を使うくらいですし、旦那も早く聞きたかったんでしょう?
いえいえ、お気になさらず。
それじゃあ、お伝えしますが、旦那、ご愁傷様です。マリルさんにはもう想い人が居るそうです。
本当ですよ、そんな嘘を吐きませんて。
あー、ほらそんな、泣きそうな顔をしないで下さい。わたしだって、旦那にそんな顔をして欲しくて伝えに来た訳じゃないんですから。
ありがとう、今日は帰ってくれ?
ええ、そうですよね旦那、一人になりたいですよね?
……でも、すみません。まだ伝えないといけない事があるんで帰れないんです。
正直、身勝手ながらわたしとしてはこっちの方をよりちゃんと聞いてほしいんですけどね、
……旦那、わたし、ずっと旦那のことが好きでした。
タイミング、最悪かもしれませんけど、次こんなことがあったら嫌なんです。
考えて、くれませんか?
怒らないでくださいよ、違います。軽口なんかじゃないですよ。
だから違いますって!
わたしが本気だって、分かってくれないんですね? いいですよ、それなら分からせてあげます。
……ほら、捕まえた。
ちょっと二人になれる所に行きましょう? ここですとご近所迷惑になりますからね。
ふふ、どうですかここ? 空を飛べない旦那は見たことないかもしれませんがこれが上空からの景色ですよ?
……本人の同意なく他人を空へ連れ去るのは、この他種族国家でも犯罪です。
旦那が後でわたしからの被害を訴えれば、嘘を見抜ける精霊も居ますし、わたしは牢屋行きです。
でも、それくらい本気で旦那を捕まえたかった。そういうことなんですよ? 分かってくれました?
あはっ…、良かったです。
もし分かってくれなかったら、ここから旦那を落として、墜落寸前でキャッチする曲芸を見せるしかないかと思ってました笑。
それじゃあ、もう一回本題ですけど、わたしと付き合ってくれますか?
そう、ですか、今は考えられない…?
はあ、やっぱり分かってないじゃないですか?
わたしが、どれだけ本気かって。
一回、理解してきてください。ほらっ、
あははっ、どうでしたか? 強制スカイダイビングは?
死ぬかと思った?
そうですよね? わたしもそれくらい思ってます、それくらい、旦那を離したくないんです。
わたし、旦那の以外の卵なんて育てたくありません。本当に、また今回みたいなことがあったら、わたしが死んでしまいます。
だから、もう一回、お返事を聞かせてください。
わたしと付き合ってくれませんか?
ふふっ、ありがとうございます。
優しい旦那、大好きです。
これが嘘だったなんて言わせませんよ?
……さあ、旦那、いえ、わたしの旦那さん、帰りましょう?
やっと今、わたし達の愛の巣へ変わった、旦那のお家に。
彼女の名誉の為に……、は別になりませんが、ちなみに、彼女はちゃんと荷物を届けて、マリルの答えが旦那の意に沿わなかったのは本当です。
もしマリルが受け入れていれば、マリルを脅して、旦那には嘘を吐いていたでしょうけど。




