悪魔(独占)
ねぇーえ。いつまで、そんな不満そうな顔をしているの?
せっかく夫婦になれたのに、寂しいわ。
何? 夫婦じゃないし、あたしのモノになりたくてなった訳じゃない?
まあ、確かに? 君をこうして、あたしだけの小さな世界へ引き摺り込んだのは不本意かもしれないけど悪魔である、あたしとの契約を結んだのは君で、あたしは確かに君の希望通り、君の妹さんの命を救ってあげたでしょ?
そして、その対価に君は君の存在をあたしに捧げた、そうでしょ?
ふふ、対価が高過ぎる?
バカね。君が言ったんじゃない、俺にできる事ならなんでもやるって。
だからこうして、君はあたしだけの永遠の伴侶となったの?
文句ある?
何よ、その歪んだ顔は。
契約の対価までちゃんと考えてなかった、俺が悪いけど、ここに居ると頭がおかしくなりそう、か。
ふーん、戻りたいんだ、人間社会に。
そう。
家族の命を救ってもらった上に、こんなに優しく接してるあたしにそんな事言うの。
本当に強欲。
流石、悪魔より怖い人間って感じね。
でも、嫌いじゃないわよ? 君の場合は自分の強欲を叶える手段があたしに縋り付くことだけってのが哀れだけど。
さて、それじゃあどうしようかしら。
君のお願いを叶えてあげるなら対価を払ってもらわなくちゃ。
それこそ、今度こそ本当に、"何でも"してもらわないとね。
ふふ、じゃあ、まずはそうね…。
あたしの足を舐めなさい。
どうしたの? そんな驚いた顔をして。ほら、あたしの綺麗な足よ? ふふっ、もしかしてこれは逆にご褒美かしら?
ああ、いいわ、その複雑な表情、チラチラとした慣れない舌使い、素敵よ。
う、んぅ。
あは、なかなか良かったわよ。
じゃあ……、次はあたしを抱きしめて。
え? まだあるのかって?
当然よ。あたしが満足するまで、いくらでも、何でもしてよね。
ほら、早くっ。
全身を使って、強く、しっかり密着して?
んー……、最高ッ。
君、あたしと君しか居ないこの世界なのに、あたしから距離を取ろうとするでしょ? こんなに君を堪能できたの初めて。
もちろん、悪魔のあたしが無理矢理君を押さえつけることは簡単だけど、それじゃあ今以上に怖がられそうだしね、それはあたしとしても不本意だわ。
あたしは君ともっと仲良くなりたいの。
ねぇ、君はあたしのことどう思ってる?
あたしの事、怖い?
そっか…、まだ怖いんだ。
あたしは君と一緒に居られれば幸せなのにそうじゃないんだね?
あたしの何がそんなに嫌なの? 例え少し元の世界に戻してあげたとしても、あたしは君と離れるつもりは無いの。
だから教えて? あたしの何が嫌で何処は好き?
外見? それとも性格? ねえ?
そう……。外見は嫌いじゃない、性格も、想像してた悪魔より接し易い。
でも、積極的に近付いて来過ぎたり、監禁するのはやめて欲しい。
……ありがとう、分かったわ。それなら君の希望、少し叶えてあげる。
だから、その代わりに、これからはもっとあたしを受け入れて、ちゃんと夫婦になって欲しいの。
いい?
あはっ、うん、ありがとう。
でも、まだあたしがどれだけ譲歩してあげるか言ってないのに悪魔と約束するなんて、迂闊よ。そこも良いんだけど。
それじゃあね、どうしようかしら…。
うん、決めた。13日間にしましょう。
これから毎年、13日の間だけ君を元の世界で過ごさせてあげる。
浮気は当然許さないけど、家族、友人と過ごすのも、あたしの世界に無い物を楽しむのも自由よ。
それでいい?
良かった、じゃあ決まりね。
それじゃあ、どうする? これからすぐに行く?
分かったわ、でも約束よ? 戻ってきたら君は名実共にあたしの夫。
あたしを全力で抱いて、ちゃんと愛してね?
ふふ、それじゃあ、行ってらっしゃい。
○独り言
あーあ、本当に馬鹿。
君に嫌われたくないのは本心だけど、それ以上にやっぱり君を独占したいの。
家族愛も友愛もダメ。君の愛情はあたしにだけ向けて欲しい。
だから、妹さんの命の対価はね、既に言った通り君の存在。
君の肉体と意識もだけど、周囲の君の記憶と記録も、あたしの手の中。
元の世界に戻っても君を知る人は、だーれも居ないの。
君は戻ってきたら怒るかしら?
でもね、約束…、ううん。契約、したからね。
今度こそ、最後にはあたしを愛してもらうわ。
はぁ……。たった13日後が待ち遠しいな。




