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ここは異世界ですか?  作者: 三毛ネモ
2/3

中編【2/3】

中編【2/3】


「まあ冗談はさておき」

交響曲運命の ジャジャジャジャーン ってサビ部分が鳴っていたと思ったのに、いきなり笑点の トンタラトラパパトイパッパ パフ ってテーマに変わったような空気になった。

「じょ 冗談だったんですか」

張り詰めていた緊張感が、緊張の “き” の字も無い装いに戻っている。

「どこからどこまでが冗談だったんですか?」

あたしが無かった事、まあ冗談だとしたかった部分は全部で構わないと言う。

「あとウムーとかホンマにあったおっかない話でっか、等が喜びそうなネタは全部そういうことにしとこう」

面倒臭いからとあどけなく笑う。

「いいんですか?」

どこまでか知らんが公務員待遇であればそれなりの報連相の義務あるんではなかろうか。自分をかばって後で訓戒でも貰うと申すわけ無い。まあ、あたしの自由の為には泥は被ってもらいたいが。

(でも本当に信用していいのかな?)

捉えどころのない人だけ念を押す。

「まあ一応海底で空気パイプを切るぐらいの覚悟は、ね」

「えっ?!」

ナニを言ってるんだ、この人???

それは分からないが笑顔でそう告げる彼女に、どうしてかわからないのに背筋が寒くなった。冗談だと顔は告げているが、冗談じゃないんだと自分の中の自分がが囁く。額面通りに受け取るなと。

「ん?」

怯えが走ったことに少しおちゃらけを入れて続ける。

「いいのいいの。別にあなたを気遣い・・・・いわゆる利他的じゃなくて、利己的な理由だから気にしなくていいよ」

多分自分が拘束されて国家機密かなんか知らんが、そのときに担当のおハチは自分に回ってくる可能性が高い。それはイヤだとの事だ。

「わたしやる気のない人間の尻を叩いたり、ノンポリをお国のために死ぬ気で頑張りますって挟視人間を作るほど情熱家じゃないのよね。あと守秘義務が増えるのも、もういいって事で」

のんべんだらりと生きて死にたいので、雀の学校の先生みたくムチをフリフリは趣味じゃない。似合うってヤツもいるらしいが、外見と中身は違うと膨れるが、案外とと思ったが言わなかった。

「だから今のは冗談で 冗談でもココは蛇の巣 伏魔殿って側面もある施設だから邪な蛇を起こさないように一切 シー って事で」

他の人間には今言った事は黙って、トランス体質も単につけっぱなしのラジオ状態で選曲は出来ないってしておいた方がいいよと助言をくれる。確かに外交とかで相手側の思念がよめれば会議の前に勝ったも同然だろうが、出席者の誰がいつどんなTPOでナニ言ってるんだか分からん全周波数混線状態のスピーカーなら百戦錬磨のネゴシエート(交渉官)の方がマシだろう。

まあ人生に不穏色のいろどりを加えたいなら国家間の交渉事なんてドキドキ展開に退屈はないだろうが、心すり減らすのは互いに趣味ではない。それならドキドキタイプの映画やドラマ視聴でいい。

「旦那が間諜で嫁が人斬りで貰い子が千里眼なんて様な、お笑いサスペンス要素プラス小手先サスペンスで尺を伸ばすのもめんどいし」

どうせせせこましくトラブルの予感が大山鳴動してネズミ一匹って毎日毎日馬鹿騒ぎの、まるで学園祭前日のループみたいな話はたくさんだと。

「せ 先輩。ナニを口走ってるんですか?」

誰にも歯牙にもかけられない存在だと分かっていても、どこからか秘匿話がもれないなんて保証はないので諫める。どこが静かに暮らしたいだ。爆弾もって火事場ウロウロ状態だと痛感した。

(このヒトやっぱり危ないわ)

後藤隊長じゃない。この人物語じゃ厄介事持ってくる峰不二子だ。

あたしは無関係だと明後日の方向を向いて日光の真ん中サルになりきる。


「でもいきなり帰りたいって言ったら、なんか感づいたと思われるんで物理か精神か分からんけど、搦手の雁字搦めに拉致られるかも知れないから、水とマクラが合わないから幽霊見るんでアルムに返して貰えるようしましょうか」

「せ 先輩 先輩ロッテンマイヤーさんみたいだけど、ゼーゼマンさんみたいに優しいですね」

「良かったわミンチン先生とかノロイって言われなくて・・・・それにしても・・・・・」

あなたにアニメデータレクチャーしたやつも相当年行ったアニオタなやつだよねと、自分にも覚えがあるので同類相哀れむ先輩であった。

「それともこの子若そうに見えて中身70超えてるんじゃない・・・・」

土地柄年齢バフがかかる特殊な環境だけに疑う先輩であった。





カチャカチャカチャカチャ

ふうっと安堵していた吐息に混じって、金属が擦れ合う音が近づいてきた。

「ああ、来たみたいね」

その声に促され視線を向けるとオリーブドラブの迷彩服を来た自衛隊員がリヤカーになんかの荷物を満載して疾走してきた。全員女性のようだ。

そう言えば結界内は男子体入り禁止とかきいた。聖域なので基本女性のみ出入りが出来るらしい。

「なんですか?炊き出し」

救世軍かな?と思ったが、乗っているのは米に水 ジャガイモ 人参 玉ねぎ グリーンピースでは無かった。

「出入りですか?」

乗っていたのは型遅れの64式ライフルと閉所鎮圧用トレンチショットガンとエムナインSMG、それに対物ライフルと無反動榴弾砲。

リヤカーから取り出し装備すると猫の悲鳴が聞こえた森の中に無言のハンドサインだけで突入していく。

「特殊作戦ですか?」

特攻野郎かなと思ってると

パパパパパパパパ

ドゴーン ドゴーン

パララララララララララララ

呆然としていると乾いた音が鳴り響き、銃低音のデカい発砲音も数発森に木霊した。周りが山なので数度響き相当うるさいと顔をしかめる。

「嫌な木霊だな」

撃たれた覚えはないが発砲音はどうも好きになれない。

「やはり、ヤッホーがいいですね」

「何でヤッホーなんだろ」

「アッホーだと山が怒るからってコントがありませんでした」

怒った木霊が返すのは『おまえもな~~~』だったと思う。

「ああ、そいえば」

PXの自称お姉さんも似たような事言っていたと思い出す。

「PXのお姉さん結構若く見えても意外と年行ってるのが言葉の端々でバレるんだけど、お姉さんって言うと売れ残りのお菓子くれるから、しばらくいるなら挨拶は『お姉さん』って覚えておいたほうがいいかもね」

「勉強になります」

ひと悶着あったのでお互いかしこまった垣根がスッカリ取っ払われて、気のおけない空気が漂う。


「ここの庵は山からの吹き下ろしの風上だからしばらく血の匂いがしそうね。まあ無反動砲でも使われるよりは良かったか」

そうこうしている内に森の向こうから数本の縛縄をかけて引きずられた身の丈5メートルぐらいの熊が現れ、慣れたもので小さなリヤカーに乗せて詰め所の方に消えていく。あの連中ならピアノ引っ越し会社への再就職も引く手あまただろう。


「あの、普通こういうときは人が襲われてから猟友会じゃないんですか?猫が襲われてからいきなりお国の銃を使って駆除って・・・・」

自衛隊の発砲に関しては厳しい制約があるはずだと思ったが彼らは構わず状況を開始して、アッという間に事は終わった。

これ野党に知れたら国会で因縁つけられることうけあいだ。

「う~~~。まあ、ここはあなたが言うようにアッチ【異世界】って事で穏便に 穏便に」

過去法が及ぶのは人里までであった。人が住まぬ場所は人外とよばれ法が通用しないってって昔の因習が残ってる地だってあるとニヤリと笑って、それ以上は法的な事は聞くなってオーラがした。

「あなた的にはご希望的展開でアッチの影響かどうか知んないけど、ここの野生打たれ強いのよ。」

さっきの熊だと人間用5mmじゃ豆鉄砲で、威嚇にもならないのでせめて特殊弾頭や7mmを使っている。まああまり変わりは無いが、自衛隊にバスターランチャーやメーザー殺獣光線砲は無いので、あるもんでナントカしろって自衛隊伝統のその場しのぎ的対処は致し方ない。

「その場でなんとかしろって・・・」

「まあ竹槍でB-29落とせっていわれるよりマシじゃない」

戦時中の愛国婦人会の戦時教練じゃ、成層圏をとぶB-29を気力で落とせとホコ先を向けたらしい。なんか、一機は落としたって都市伝説も・・・・。

「意志ある所に道は開けるのね」

昔の日本人の精神はタフだったのねと関心する。

「無理だと思います。どこのAKIRAさんですか」

低高度衛星なら片手間で落とせる不良じゃないと苦く笑う。


数人の隊員が装備はリヤカーに載せられないと手持ちで帰っていく。

「エムナインにエム82にベネリトレンチですね」

いつ装備品になったのかと思うのがある。まあここではいいんだろう?

「あれぐらいじゃないと駄目だからね、ここの連中」

じゃあ猟友会に出番は無いだろうと納得。確か日本じゃ30口径以上所持禁止。

「徹甲弾の500マグナムとか、50キャリバーの猟銃持ってるおやじさん達なんかいないからしょうがないわよ。まあここ基本女子しか入れないから持ってても中に入れるワケいかないし、借りると野党の馬鹿がうるさいから出来ないし」

ここの害獣は皮膚が固く、通常のフルメタルとかだと外部装甲?を貫けないのでタングステンなどの超硬質弾丸いるらしい。そん弾丸持ってれば何撃つ気だって、免許没収確実で下手するとテロ準備集合準備罪でとっ捕まる。

「今一度聞きますけど、ここ本当にアッチ[異世界]じゃないんですか?」

フィクションであるドラゴンがそんな外皮装甲だとはよく聞くが、今のは熊であった。何故に熊に50口径が必要なんだ。オリハルコンかミスリルの鎧でもまとってるのか?

「ど、だろう?まあ神様が宿る地だって昔から言われてるから、ドラゴンボールのナントカの部屋って高地トレーニングの凄い版みたいなもんで、長年暮らしていたんで頑健になったんじゃない?」

日々裸足で暮せば足の皮が厚くなり、空手家の拳の皮膚も固くなる。まあそれと考えようと言う。

「そうですか・・・」

見てると500キロぐらい楽にありそうなのでタイヤの轍跡が地面にくっきり残っている。

あれじゃタイヤの利点である転がり運動はあまり期待出来ないだろう。

「押せぇ 力の限りひけえ 根性見せてみろ」って隊長格の女性隊員が叫んでいたな。

化け物は熊だけじゃなくて兵隊さんもだと思うようになった。

「あれ(亡骸)どうするんですか?」

あんだけデカいレア個体なので、どっかの動物関連施設で剥製かなと、リヤカーの死体から滴り落ちた赤い塊を見ながら聞く。

「鉄鋼弾使ったなら破片はそんなに出ないだろうけど、取り敢えず銃創部分は丁寧にこそぎ落として、火薬の匂いの付いた部分も切り落として庁舎の兵隊さんとかお周りさんのご飯ね」

庁舎の番犬におすそ分けもあるかもしれん。

「アレ食べるんですか?」

「北海道じゃヒグマカレーとかあるらしいから別に珍しいことかな」

そのヒグマが何食っていたかで人間が食えるかどうか決まりそうだ。鹿や猪や木の実ならいいが、山歩きしてるやつ食ってれば遠慮したい。まあそんなのは胃の中やフンの中に残骸見つけるまで駆除するから食卓にはでてこないだろうが。

「知らんけど、第三国の満漢全席じゃ男性のアッチ機能復活に使われるほど元気肉なんで、ここでも食った男性隊員は非番の日が待ちきれないとか聞くな」

女性隊員がどうなったかは同性故の温情で言わないでおく。

食べるなら言っておけば熟成が終わった後カレーかニンニクたっぷりの焼肉定食で出してくれると言うが、血まみれのズタボロ死骸を見たあとだから食欲わかないらしい。それに悶悶として気持ちなんぞ今の自分には邪魔だ。

「熊とは限らないけど動物性タンパクは食べれる内に食べたほうがいいかもよ。ここで奉職は女の子でもガテン系だから、食べないとダメだし、基本食材は菜食メインだからしたたる肉なんてあんまり出してくれないし、そのウチ肉食べれなく成るから」

「決まりですか。肉を食べるなってのは」

他人にも己の嗜好を押し付ける人種は一定数存在するが、ビーガンとフェミニストは悪質と有名だ。

「いんや。ここの土地柄段々と体がそうなっていくみたい。水と空気のせいかもね」

水飲むと体が冷えると避ける寒村育ちも、灼熱の砂漠に引っ越せば否が応でも水を飲むのが好き?になる。転向をしろって誰も強制しないが、意固地にならない限りは肉を嫌いになる。

「ダイエットにはいいですね」

「まあ構わずバクバク食ってる同業【巫女】もいるけど」

アイツとアイツも肉食獣って言うほど食ってる。それは個人の嗜好なのでいいのだが、肉を消化って体の中で腐らせる事と同じらしく寄られると臭くて出入り禁止にしたいぐらいらしい。

「別に巫女さんっているんですか?」

大勢の参拝客が訪れそうにない、大きな社でも無いのでそんなにいらないだろうと聞く。

「あれっ?聞いてないの。おかしいな。ここの庵は寅の方位で、別の11の方位にもわたしたちみたいなのがいるのよ」

お守りする山の御神体を中心に12の方向にそれぞれ陣・庵があり、各々に封印・政の巫女としていると告げる。

「大体各陣に一人わたしみたいなのが、そしてあなたみたいな介添えが大概は一~二人居るからだいたい30人ぐらいは居るね」

「そうだったんですか。どこに行ったら会えるんですか」

こんな不案内な土地だけに女子が一人だけの境遇は不安だから、お知り合いに、出来れば友達は欲しかった。

「ん~。まあ陣の子【ね】・・・・・つまりあなたの様な介添えを大概そう言うみたいなんだけど、それなら庁舎に行けば会えるんじゃないの。外出の際の決まりごとも彼女らに聞いたほうが良いね」

「そうなんですか、わかりました。あれっ、一緒には外出出来ないんすか」

「あたしと?」

「はい」

「?・・・・・・・・・何か意思の疎通を欠いてないかな」

「?」

何か間違ったコトを言ったかとキョロキョロしてると女子隊員が血抜き穴からこぼれた血痕をシャベルで掘り返して塩と石灰で痕跡を消していた。証拠隠滅かと聞くと、神様は血の匂いが好きで無いらしい。

「有史以来神様って人間殺しまくってませんか?」

「直接手を汚してるワケじゃないし、やれとも命令してないんじゃないからとっ捕まえてハーグのお白洲に呼ぶこと出来ないと思うよ。まあ止めもしたことないみたいだけど未遂の恋だね」

「えっ?!なんですか、ソレ。良いなと思った人がワケあって恋しちゃいけない人だった、なんて恋が始まる前に終わったなんて少女漫画みたいなシュチュは」

未必の故意でしょうと呆れる。先輩にそんな間違った改竄データ与えたやつは誰なんだと疑問に思った。


「ま、まあそれはともかく、神様って何もしないんですかね」

未必の故意と、未遂の恋を混同していた事がバレて、赤面している先輩は脇に置いとくことにした。まあ可愛いくておもしろいからいいけど。

異世界ネタならお題にとちょっかい出してくるお調子者だが、現実は流石に人間の雛形であるので怠け者が第一らしい。

「神様の仕事は何もしないってのが仕事だって、誰が言ったのか知らないけど」

それが錦の御旗で、東京にいるかもしれない引きこもりニート神様は何もしないのが信条だとか?風の噂(精霊)に聞いた。

「それにウチの国のと他所様じゃ違うんじゃない?」

しらんけど付記するのは忘れない。言動に責任を取らないってのは、わたしたち特有の知識の出処があやふやだからの注意喚起じゃなくて、責任の所在を持ってくるなとの事だろう。

「神と悪魔の境界無いからね、元々連中は。納税者にとっての税務署みたいなもんらしいわよ」

この世に存在する税務署って場所では、税金取る悪魔がいて 還付金をくれる神がいる なんて比喩がある。二人はプリキ・・・・じゃない、半目しあっているようだけど実はズブズブな仲良し。

「女性シンガーのヨーミンとまゆきさんみたいなもんよ」

川端まよとガイラでも可。

聞いた話じゃ親の敵みたいに憎悪される悪魔は、感謝をのべられる神様になりたいらしいが、大体神様のほうが上司なんで変わってもらえないらしい。悪魔職はイメジ画像にならってからブラックであった。

「それだと搾取とほどこしの差が酷くないですか」

労働の百の稼ぎに悪魔が五十もっていき、一返すぐらいで神になれるのかと呆れる。

「それぐらいが人間はありがたがるんじゃない。何も収めないで施しだけくれると分かると不法滞在のナマポクズ外人みたいになる」

「そうですね。外国の教会だって金くれ 布教しろ 奉仕しろって労働の割に、ありがたいんだか大きなお世話なお言葉くれるだけでしょう?元手無しでリターンだけ。宗教と乞食は3日やったらやめられないってのは本当らしいですね」

島で小金持ちがいたが、おかしな団体にハマって身上潰してアラスカに蟹取りに言って極寒の荒海で幾重不明で保険金は家族に入らずインターセプトされていた。

「脱税もどっからも文句のこないタックスヘイブンだし」

「どうやったら宗教団体立ち上げられるんでしょうね?」

「わたしに聞くな。あなたより国の仕組み知ってるだけに口滑らしたら洒落にならない」



「そういえば、あれ本当に食べるんですね」

庁舎方向に消えようとしている若い女性隊員が嬉しそうに熊の死体を運んでいる。部位を見ながらどの部位を食べたいか他の皆とああでもない こうでもないと楽しそうだ。

本当に食う姿にまだ信じられずにいた。

「滋養強壮栄養満点快食快便お肌ツルツル・・・・らしい」

なんてとんでも食材らしい。

「夜中のテレビ飯テロ通販なら売り切れ続出ですね」

その場限りの、洗顔した終わりの化粧品などと違って本当に効果満点食材らしい。

「何しろここは世間極一般にはアッチの世界に繋がる、あまり好きな言葉じゃないけどパワースポットらしいから、そこに住まう肉ならその手のボーナスアイテム扱いみたいなもんじゃない」

ただし味以外はと言っておく。だから臭み消しのにんにくでしばらくデートが出来ないってぼやいていた隊員が多いとか。それで夜悶々だって、どうすんだろう。

「そういえば今更ですが、ここには女性隊員しかいないんですか?いくら鍛えてるっていっても重そうですよ」

「あれっ、男子禁制って話も聞いてないの。一体誰があなたに・・・・・」

いきなり言葉が止まる。

「あ あの・・・・」

何か考え事をしてるので邪魔しちゃ悪いと黙る。

そう思ってると突如場の空気が動き出す。

「まあいいか。そのウチ分かるでしょう」

どうやらあまり委細を気にかけ続ける事は、や~っぱり苦手らしい。


「そういえばここにある御神体って風の噂じゃダンジョンの中にあるとか聞きましたけど?」

「横穴ね。こっからは見えないけど山を二~三向こうに何年か前の地震で山体崩壊起こした出てきた古い横穴はあるよ」

この当たりに鉱物は取れないらしいので何でワズワザ掘ったのかわからんって調べた研究機関が首をひねったらしい。だから理由を探してサブカル大好き連中が騒いで、神だ異世界だ異星人だなんだのと今のような面倒事になったのかと疲れた吐息を吐く。

おまけにこのあたりじゃ採れない鉱物産のデカい石?が鎮座していた。

「あったんですね?それらしいモノが」

自然現象で隠された秘密が顔を出すのはフィクションの定番だとちょっと顔を輝かせる。

(期待してる?)

もう期待せずに、単なる生産性ゼロの馬鹿話、そこから異世界に行ったり来たりは出来るかと聞いたが、奥に露天掘りのダンプぐらいの巨石が埋まってるだけ。

「あのデカいの丸まってるから転がったあれに轢かれるとアッチにいけるんかな?その前に読み札 温室トマトの、ちはやふるでアッチより、あの世にはいけるだろうけど」

カミオカンデみたくニュートリノなんかは勝手に通り抜けてくるくるかもしれんが物質?である人や魔物は無理だろう。

「それに入り口に立ったら奥まで見渡せる横穴をダンジョンって言っていいのかな?おまけに地下壕じゃなくて平地だけど」

小学生のかけっこ競争には使えるが中学生だと壁にぶつかって流血だわと、そんぐらいの規模らしい。

「はあっ」

「厨二病みたいに、ダンジョンから魔物が溢れて人外魔境になった世界で無双するって夢でも見た?」

ついでにテロリストによって占拠された学校に颯爽と駆けつけたヒーロー役も付けたほうがいいかなと笑う。

「素手じゃ猫にも勝てない人間が、そんなのに勝てるなんて思ってませんよ」

「そりゃそうだ。猫の上には熊だっているし・・・・まあ、その熊を人間は食うから、やっぱり人間が一番怖いのかな」

「あたしも怖い人間になれるかな」

どうやら効能を聞いている内に熊肉にも食欲が湧いたらしい。それに他の女性隊員も食べるんだから恥ずかしがる必要もないと吹っ切れたらしい。

「ああ、じゃあ熟成したらにんにくたっぷりでお願いしとく」

それが分かって微笑む優しい先輩であった。



「ん?」

お肌艶々に快食快便なら食べてみようかと思いながら腰掛けていた縁側の奥まった、囲炉裏の向こうの竈門から気配がしたので振り返る。

「どなたかいらしゃるんですか?」

自分はここでは新参者だから手間を取らせてはいかんと来客を気遣う。

「ん~~~~~~ 」

後輩の視線を彼女が追う。

「ふ~ん」

「誰かおられるんじゃ」

「客じゃないからダイジョブ」

「客じゃない」

確かこの庵の住人は一人であったはず。そしてこのヒトはその一人だとニュアンスを受け取った。

「古い家だから御用聞きさんと・・・・・・・」

「単なる生霊だから気にしないで」

「えっ 今なんていいました?」

竈門あたりは暗いので目を凝らし集中ていたので聞き逃していたので尋ねる。

「単なる生霊だから気にしないで。ここじゃ地磁気の影響もあるんだかしらんけど昼間でも出るのよ」

何を言ってるんだと思ってると事情を説明してくれる。

「ここはあなたの言うようなアッチの世界かどうかは知らいけど・・・・・あなた鳥居をくぐってきたでしょう」

「はい。ちゃんと端を通りましたよ」

「偉い偉い。ちゃんとしてるわね」

「一応バイトしてましたんで」

島の神社で繁忙期を中心に手伝いさせられていたので、一応神様に仕えるって事で押し込みはキッチリさせられた。


「そういえばあなたさっきからずっとやたらアッチ(異世界)の世界の事を聞いてくるけど好きなの?」

今更ながら尋ねる。

単なるアニメ・ラノベ好きに留まらない好奇心が見え隠れしていた。

「特にはです」

何かここにそんなモノを匂わす要素があるのかと聞く。

「えっ。だってここ異世界だって」

「は? 私が」

自分を指差し、首をひねる。

「だってさっきお茶を出していただいた時に『異世界にようこそ』って言われませんでした。だからあたしはテッキリここがそうなのかなと、半信半疑ですがそう思ってました。だから信じてなかったですけど、色々と」

「私が・・・・・ここを・・アッチだって・・・」

凛とした表情にアホ成分が混じりお互いATフィールドの垣根が下がるような気がした。

「私は言った覚えは無いんだけど、あなたが聞いたって言うなら言ったかもしれないけど、多分言ってないと思うのよね。私としてはもしかして『異界にようこそ』あたりだったんじゃない?」

「い いかい ・・・・ 異世界じゃなくて」

どんな字を書くのかと聞くと真ん中一文字抜けてるだけだと教わる。

「異界 ですか。なんですかそれ。異世界の親戚ですか」

「似てて非なるモノかな?まあ異議ありって、どんな裁判でもみたことない、大声で喚き立てる暑苦しい弁護士に言われるほど間違ってないからいいけど」

定義は無いので言われて答えに窮すると笑う。

「まあ大型貨物運搬自動車にお世話にならなくても行ける、現世とは・・・・あ、現世ってのは生者が主に暮らす世界のことでね」

頭に天使を輪っかと描いて、それを手を振ってナイナイするので、連想ゲームですかと突っ込みそうになった。なんとなく先輩の後ろにアンウェルカムスクール♫が流れてるような気がする。

(ああ、なんか他にも既視感あると思ったら)

面白からやってみいと布教されてやったスマホゲームに何となく似てたキャラに先輩さんと同じ香りがした。

(残念さんだ)

また人名を出すと面倒なので口をつぐんだ。


「異界ってのはあの世・・・・・あの世ってのは大概死んだモノの済んでる世界なんだけど、異界ってのはその中間の場所で、同居状態の場所っていう雑居状況」

これも定義があるわけないので私考だと告げる。

「異世界とは違うと」

「私行ったこと無いからわからない。多分行った事ある人間いないんじゃないとは思うから定義と言われてもねえ」

いい加減に見えて言葉の意味には妙に厳密だ。

「アッチの世界の事聞いてくるんで変だと思ったのよね。その周辺オタさんかと思った」

「そんなオタが中学にたくさんいたので、ここがそんな場所だって散々洗脳されてきました」

「それはお気の毒。一応は期待していたの?」

「そういうわけじゃないですけど。なんかここは普通とは違うような気がしたんで、先立つものも無いので日々の暇つぶしに幅が無いんで、ロハでいいならもしやと思ったんですよ」

「確かにまあ普通が何を指し示すかわからないから、ここがアッチとは違うって証拠あったら踏ん切り付くかな。ああ、そうだ」

立ち上がって奥の居間の違い棚から薄いダンボール数箱を持ってきた。

ドサッ

「なんですか?えらく古臭くて埃っぽいダンボール箱ですね」

「ここがアッチじゃないって証拠」

見るとそれは、オセロに将棋にチェス 人生ゲーム モノポリー 軍人将棋 潜水艦ゲーム 野球盤などのボードゲーム。

「ほら、これでここがアッチ(異世界)じゃないって証拠になるでしょう」

「た 確かにこれだけ揃っていればここが異世界であるわけが無いですね」

なんでか知らんが、それがここが異世界ではない動かぬ証拠。北町奉行所のお白洲でサクラ吹雪を見せられるより、お代官様 おみそれしました 状態でグーの音も出ない。

「台所には新潟産コシヒカリ、八丁味噌も野田醤油も有明の味付け海苔もウヨロ川の塩鮭も八女の緑茶も揃ってるからいつでも朝定食も作れるわよ」

「決定的ですね。ここが異世界であるわけがない」

断言!。

「そっ」

なぜだか疑いようのない事実だと納得した。




「一つ気になったんですが」

「何?」

「その先程から・・・・・異世界をアッチって仰ってるんだと思うんですけど」

「ああ、そう。あなたが勘違いした世界の事をあたしは、アッチと言ってる。ゴメン ゴメン ちゃんと言っとけば良かったよね。混乱した」

「なんか神道か奉職に従事する者には避けるべき忌み言葉があるって聞いたことありますけど、そのあたしが言っていた名称は忌み言葉か何ですか」

チートって言葉が嫌いなのは個人的忌み言葉だと言っていた。そのお仲間なのかな?

「う~ん、本当の所は知らない。ただあたしが使いたくないってだけ。例のインチキの舶来隠語みたいなもんで、使いたくないのよ、連中【異世界オタ】の使うような言葉を」

戦争中鬼畜米英の使う言葉って事で英語禁止になった事がある(実際庶民は使っていた)。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって事であろう。

「ああ、戦時中野球のことを棒球って言い、ストライクを良し ボールを駄目って言ったとか」

「殆ど都市伝説並みの信用度らしいけど」

自分はアッチ連中(異世界オタ)が使うことが袈裟みたいなもので使わないだけで、卑怯者と違って使っても構わない。あれは心を汚染するような要素は少ないだろうから。まあ現実逃避のクセがつくような気はするが、妄想は一概に悪いことでは無いので預かり知らないと言う。

「まあここの女子は大概嫌いの程度は分からないけど、使いたがるのはいないから、使うなら気をつけてね」

強制では無いといいつつ、分かりやすく言い換えてるのは能動の意味もあるようだ。

「そ そうなんですか。よかった」

悪い魔法使いの名前みたいに、口に出すと電撃だっちゃな事が起きるわけでは無いと安堵した。

自分は女子らしく電気は苦手で冬の静電気に怯えているので下手すると死ぬ海外200ボルトクラスの電気ショックは本当に遠慮したい。

「大阪のぼったくりバーで高価いって文句言った時に裏から出てくる怖いハゲね」

「何ですか?その大阪のボッタクリハゲって」

「高額なお品書きに文句言ったら裏からやってきて強面のハゲが『お客さん、これ以上騒ぐと ボルで、もっと』って言うおっさん」

「なんですか?その構成が甘いダルダルで間の悪くて笑えない小咄は、そんなヤツいねえって優勝者ですか」

言葉が持つ力はこの職種には強いのでおっかなビックリであったので安心した。

なんで嫌いって聞こうと思ったがまだ初対面状態では流石にと思ったので聞かなかった。

ただここでは異世界ナンタラ関係ワードは概ね歓迎されないようだ。


(確かに迷惑よね。自分は違うと言っても聞く耳持たない馬鹿は)

アッチじゃないと何度言っても聞いてくれずに、アッチでしょう アッチでしょうと言われたらうんざりだろう。

ありもしない事実、明後日の方向の評判や批判は初め笑っていたも段々笑えなくなる事もあるだろう。

「あれよ。ケツの痛そうな男性タレントが多い芸能事務所に所属したから、自分もケツが痛そうだって思われて女性ファンからドーナッツ型の座布団を渡されて、善意だから無下にも出来ないけど何度も続くと『俺は〇〇じゃない』って流石に切れるみたいなもん」

山田くん全部持っていってくれ状態だろう。

「俺は違うって言ったら他のメンバーはそうなんですかってことになるし、他も違うって否定しても全否定ってかえって疑いを深めるらしいし動かぬ証拠が出てきたら嘘つきって事になって人気が落ちるんで変に反論も出来ない地団駄状態」

「どんな男性タレント専門事務所の事か全くわかりませんが、そうなんでしょうね」

この話に変に乗るとヤバいので、芸能事務所云々はともかく、確かにこの場所にいると好奇心からその手の話を振られたのか辟易して、耳にタコ状態で言ってくれるなとなることも理解出来た。

じゃあ自分もアッチ【異世界】の事はアッチと言うことにした。



ヒソヒソ

「ん!なんか又裏木戸あたりから又声がしましたけど、やっぱ生霊ですか」

すっかり話がソレて無視したのが勘に触ったかのように声量が大きくなっていた。

「ん~。まあいい機会だから会ってみたら」

ここがアッチだと思われた弊害だから避けて通れぬと勧めてくる。

「死ねばどうしてって体を捨てるのに生きてる間から好き好んで体を抜け出して、異界に足を突っ込んだアホよ」

「アホですか」

「そそ。どうせ誰の儚き夢もいずれ訪れる眠りと共に終わるのにね」

起きてる間にしか見れない夢を楽しめと言う。

「・・・・・我々は夢と同じもので織りなされている・・・・・誰の言葉ですか?」

知らないと素っ気ない。覚えていたら図書館にあるらしいネットで検索してみよう。

「今まだ日が昇ってるから怖くないでしょう」

いきなり麦川淳二さんとか、つきだし枝豆さんの世界になったので面食らう。

「いえ、相当怖いです」

生霊は死霊より念が強いらしいのでも怖いが、思念で呪えないと体込みの物理でやってくるので更に怖いとか。

「まあ、何でも経験だし、ここに務めるならいずれの通過点だから、新型肺炎のワクチン接種みたいに嫌なことはさっさと済ましたほうがいいんじゃない」

少年少女時代、股の間のモノを剥いたり、ほがしたりするみたいだもんだと言おうとしたが言わなかったって、それを言うアホな所業に呆れる。

「まあ無理にとは言わないけど、今はわたしもいるから少しは心持ちマシじゃない」

まだ日も昇ってるのに肝試しかと目で嫌がる。

「大丈夫なんですか?」

「ここがアッチ世界だって思ってやってきた単なる物見游山状態だから夢だと思ってるよ。NPCでございって知らん顔してれば噛みついてきたりしないわよ」

何度も同じセリフしか言わない相手に話しかけるヤツはいないだろう。

「わ わかりました」

気は進まないがここは異界で、ここでは地理的状況で生霊は珍しいことでは無いと言うことなので、慣れておくに越したことはないと、庵をグルっと回って勝手口に回った。



「どうだった」

しばらくすると庵を訪れるに身だしなみと揃えていた黒髪を性的暴力を受けた若年女子みたいな風体で戻ってきていた。

「あ ああ ああああああ」

歯の根も目の焦点もあってない。

「意外とショックだったみたいね。憑かれたかな?」

第三国産のやっすいスマホカメラみたく目の焦点があってないので、ベタに眼の前で手のひらヒラヒラさせてみる。

「壊れたかな?」

幸いなんとか再起動した。

「何ですか、あのビッグサイトにたむろしてるようなステレオタイプなオタ・・・・・・・怨霊は」

「どんなタイプだった」

夏と冬の長期休暇中に赤のタータンチェックにキャラの描いた紙袋に薄い本フルアーマー状態で、背中のリックにはビームサーベル(アニメポスター)が五条大橋の弁慶状態。

「じゃあ怖くなかったでしょう」

自分も見物にいけば笑えたのにと残念がる。

「何か喋っていた?」

「それが・・・・異世界だ ハーレムだ 美人エルフだ チートだ レベル99だ モテモテだ ・・・・・・あとは多分口にだすのもおもんはばかるような世迷い言だったので忘れたいです」

自分の言葉の邪悪にえづいている。

「言ったかな?ここにいる女子が連中嫌いなワケ・・・」

「よっく分かりまりました!」

あれは現世に行きていちゃいけないとまで言う。

「まあ賛同する部分もあるかな」

焦燥している間に裏手から何かを持ってくる。

「あなた島の神社で、神楽の舞の破魔踊りをやっていたって聞いたけど?」

「はい。よくご存知ですね。剣武の舞を踊れると神社の時給、色を付けてくれるっていうんで、昔剣道場破りをしていたって知り合いのオジサンに剣舞教えてもらいました」

「一応剣舞はできるなら、これ使ってみる」

床の間に置かれていた長い・・・・西洋の両手持ち直刀を差し出す。

「ほい・・・・・」

柄と鞘に高そうな宝石やら凝った宝飾が施されていていて、どうみてもハリボテでもナマクラだと思えない風格が漂っている。

儀式刀や支笏湖と書かれた木刀で慣れていたので手に取り、囲炉裏の脇に正座して抜いてみる。

「こりゃ業物じゃないんですか」

ダマスカス鋼らしく?波紋が美しい。そんなに刃物に詳しくはないが、さっき言った道場破りの刀剣オタクおじさん知識データ?によると相当な高価な年代物だと思えた。

「握りになんか書いてるけど・・・・・・」

色あせた革の握り手にマジックで【えくすかりばぁ】って書かれていた。

平仮名で。

「・・・・・・・・え~っと」

今は疲れていたので、ツッコミは後日にしておこうと思った。


「えっと、で これをどうしろと」

どうすればええっちゅうんだと聞くと、人も斬れるが魔も斬れる、伸びた雑草も間引ける便利グッズらしい。よく見ると雑草を斬った時に飛び散る青汁がいたるところに汚れの垢を作っていた。

「武士の魂ですよね」

磨けばどこぞの美術館に飾ってあるような立派な宝剣の成れの果てと言うには不憫だ。

「そりゃ違うと思う」

侍にとって日本刀は平和な江戸時代にそういう美辞麗句で飾る事はあるが、日本人にとっても西洋人にとっても長剣などは単なる人殺しの道具だから気にするなと言われる。

「単なる実用品よ。特にあいつら自分以外は何でも替えがきくって思ってる蛮族だから、物に愛着なんて持ってないわよ」

長年仕えてくれた番犬や猟犬も年老いて走れなくなったら邪魔だと殺すようなクズ連中だと捨て置く。なんか西洋人に凄く偏見あると思ったが言わないでおいた。なんか吐き捨てる感想がとっても怖かったから。

「そうですか・・・・」

これで連中が嫌いなから斬って捨てればいいから使うかと聞いてくる。

「なんか、ナントカ疥癬とかナントカとトラみたいな、別の話が始まりそうなんで遠慮します」

「前者はえらく痒そうな話ね」

ゴーストナントカやナントカ先生とかナントカ白書みたく、ナントカジャンプとか、ナントカサンデー的展開はいらん人生が送りたいと断わる。

「あのゴミども斬ってくれれば危険手当つけてくれるように課長さんあたりに頼むけど」

准扱いであるが、国家公務員だからサービス残業と違い結構キッチリ特別手当は付くと誘ってみる。

「確か砂漠の炎天下に一日汗ダラダラで百円とか聞きましたから、危険手当は労働に合わないとか聞きますし、例え生霊と言えども斬り捨てると心が荒む割に合わないでしょうからいいです」

選挙の投票箱の隣に座って一日数万貰える楽な仕事ならいいが、人斬り包丁振り回して数百円は割に合わん。

「夜会いたくないとはおもってましたが、昼間でも嫌でした」

だから斬るために対峙もご遠慮したい。

「あれま」

トラウマになれねばと一応ひと仕事の労をねぎらう。


「あんなのがこの地・・・・・異界を徘徊してるんですか」

「そそ。ここは今更だけどアッチへと続く場所だって思われてるんで、そんなモンに夢を見てる連中の手前勝手な妄想・思念が結実可して現れるみたいよ、ようしらんけど」

生霊なら恨んでるとか恋慕の相手に行けと思うが、現実の人間関係より二次元の方に思念が向いてここに現れるとか・・・・・誰が言ったか知らんが。

ちなみにここでは生霊の一種で外見はオタクなんで、合体してオタ霊って言われているらしい。

「なんです、そのヲタ芸みたいなぞんざいな名称」

嫌そうに苦く笑う。

「連中のことで命名会議なんてしたくないから、誰かの戯言即採用 だったと思う」

「命名するだけでも、め~~~わくですね」

神社の就職の特典に比較的閑散な場所にあるので静かであるものだが、あんなのがいると心落ち着かない。

「そ、なのよね。昔は地縛霊とか死靈・モノノケが大人しくいるだけだったらしいんだけど、えらく賑やかになったらしいのよ。連中性根は騒ぐの好きなのかな」

あいつら引きこもりの根暗で静かだとおもっていたが、デブった体から抜けて出て霊体になると体が軽いのか意外とアクティブに徘徊するんで面倒くさいらしい。

透明人間や幽霊になったなら男子のやってみた事ナンバーワン 女湯に忍び込むのは責務だとばかりに覗こうとするので、ここにいる女性隊員の被害者的にはスッカリ嫌われ者だとの事だ。

「だからアッチの名称を使うのも嫌なんですね」

「そ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって言うでしょう。あの連中ドイツもコイツもアッチだコッチだって、ワケ分からん隠語みたいなもん使うんで、連中だけが主に使う用語嫌いになる人間結構多いのよね」

自分もと。

「なるほど。よっくわかりました」

ここの女性が異世界関係ネタを虫唾が走るほど嫌いな理由がわかった。そりゃ乙女の柔肌を覗くのがあんな呪いみたいな言葉ブツブツ言ってれば、自分は違うと使いたくなくなる 聞きたくなくなるだろう。

大阪人と付き合っていて別れたら、大阪弁が大嫌いになったなんて結構あるらしいので、それの異世界オタ版かも。

「そなのよね。どこのオタ霊かわかったら思い知らせてやるって言ってる女子もいるぐらいよ。駐屯地に自動車学校みたいな道路設備と大型車両あったでしょう」

この駐屯地の女性隊員は大型車両を取りたがるのが多いのでこんな規模の駐屯地であってもワザワザ作ったらしい。

「ありましたね。そういえば自衛隊って大きな免許取るのサポートしてくれるらしいですね。あたしも普通と大型と特殊ほしいな。無限軌道は流石にいらないけど、取れるならとりたいな・・・・!」

ん?

「なんでこの駐屯地の女性隊員は大型取りたがる比率高いんですか?」

安く取れるし潰しきくし、手当も付くのかと聞く。

「中型じゃ止め刺せ無いでしょう」

「はい?」

「だから・・」

小型中型だと止めを刺すには相当なスピードがいるから殺意を否定できない。大型なら後輪で頭でも腹でも踏みつぶせば法定速度でもなんとかなるらしい。あくまでうっかりの速度で。

「えっ・・・・・・・・・それってつまり」

轢き殺すって事だ。たまに本体込でこの場所に来る奴がいるらしく、忍び込もうとするアホまでいるらしい。飛んで火にいる夏の虫状態だと、ククク 計画通りだと皆手ぐすね引いて待っているらしい。

「そんなにアッチに行きたければ送ってやろうって親切心よ。公務員は国民の幸せの為に奉仕の精神ね」

ジェスチャーで大きなハンドルの車両で轢き殺すコトを促す。

「あはは は はあ」

風呂を覗いた相手を殺すのはどうやらここでは当然の事らしい。まあ、この人だけがソースだが。

「ひ 人の恨みは怖いですね」

オタは死すべし 慈悲は無い 

覗かれません 殺るまでは 

そう女子湯のスローガンで、番台に貼ってあるらしい。

いつの時代の何の垂れ幕だと思ってしまう。

「これだけでここの女子が連中嫌いの分かるでしょう。連中を連想する語句をマジ使いたがらいほどに」

「よっくわかりました」

決して異世界って言葉を使わない気持ちがよっく分かった。喉仏がきしょい、あの連中と同じパターンに声帯を震わせたくないのだろう。


「でも今更ですけど、何でこの場所はアッチへと続くと思われたんですかね。多少はおかしな特徴はあるみたいですけど、魔獣も魔王も魔法も王政国家も宗教国家も軍事国家も無いんでしょう」

それぐらいのシンクロ率なら他に幾らでもありそうだ。

「なんでかな?まあ同じように、ストーカーに付きまとわれる被害者の大概はなんでつきまとわれるかわからないって話だから、コッチにはわからないけどアッチには何か理由があったんでしょう」

それを問い詰めようにも不審なだけで不法侵入しないと逮捕は出来ないから尋問出来ないし、不法侵入で捉える事が出来るまで踏み込んだ連中は実体が無いので尋問出来ないので分からんらしい。例え聞けても毛嫌いする相手を追い詰めるほどの興味も無い。家に忍び込むゴキブリの思考を推し量るより、殺虫剤でケリがここの流儀。


温泉は巫女や陰陽師が結界を貼ってるので滅多なことでは覗かれないとは言えども、それでもこの世のものでは無いのが敷地を徘徊してるので心労でセラピスト関係が必要じゃないかと聞く。

「わかんない。たまに心病んで部署替えする人いるらしいけど、まあ麻疹みたいなもんで誰でも一度はって症例は多くてノウハウあるんで心のケアは意外とできてるから大丈夫よ」

まあ直らない人間はいなく成るんで完治率はわからないので確約は出来ないらしいが。

お薬だって出してくれるし、心労に耐えきれないならロボトミーだってしてくれそうな医師がいるらしい。

「ロボトミーって、あんな人非人の所業国家がやってるってバレたら世界中から袋だ・・・・・・・まあ、いいです」

冗談だと思うことにした。

しかし言葉に妙に説得力があったので、本当にココは現世と違った異界だと変に納得する事にした。


「そういえばなんでこの村の入り口付近にはなんで最新の戦闘用車両が陳列してるんですか」

対ドローンマイクロ波照射車両とかも見て取れた。

幾ら進化?した獣だってドローンやらは動かさないだろう。

村から見えた山の上にはフェイズドアレイレーダーが鎮座して、村の入り口あたりにはパック3かパトリオットかアイアンドームみたいなもん置いてあるし、アパッチ攻撃ヘリコプターとか海兵隊型F-35も見えた。知り合いのミリオタ情報によると、ヒトマルもヒトロクもどっかにあるらしい。

こんなシーレーンは何処って内地の山間部にそぐわない兵力だから、あれは異世界からあふれる魔物への備えだって、この村が異世界繋がってる説の拠り所になっていた。

「いまさらだけど、あなたいやに最近のミリ関係にも詳しいのね。」

ミリオタからのデータレクチャーかと思ったがミリオタは近しい知り合いにはいないので、多分自分知識だろうと言う。

「ウチの島南洋最前線への中途逗留所ですから。暇なんで見かけたら図書館のネットで調べてました」

平和って買うのは高いって聞いたので、そんな意味で持った興味らしい。

東京から赴任する隊員が途中休むのが彼女のいた諸島である。だから彼女の能力を持てば勉強しなくても知識は得られるのだろう。パトリオット一発くれたら一生左うちわだと、厨二病みたいな事が発端とか。

「なるほどね。」



「生きてる人間相手の装備が充実してるんは他国のスパイとかワケのわからんのが増えたからじゃない」

凶悪なのは獣以外も出るらしい。

その理由は多分面倒なので立ち入るなら自分を巻き込まないでくれと頼む。

「私もないです。日日平安には邪魔ですから」

好奇心猫を殺す。特に国家間気密なんて知らぬが花だ。

「その方が平和でいいですよね」

「スパイとか破壊工作員が出るなら、やっぱココ出る?。それならとっととお暇できそうね。女子中学生がおかしな連中を怖がったって理由なら誰もいぶかしがらないと思うよ」

「言ったように島のアパート引き払ってきましたので、今帰ると新しい部屋探すんで赤字です」

修業って期間でも手当は出る。それをあてにしていた。それで故郷に錦を飾るのがささやかな野望らしい。

「別に帰りづらいとかは無いのね。説得力無い理由で追放されたとかありがち展開は無しか」

「地方公務員じゃなく、准待遇でも国家公務員らしいから村からすれば立派な栄転です」

紙吹雪に見送られ新しい人生の門出だって客室奮発して個室で来て、普段は菓子パンだけど鮭定食を今朝は食べた。

得るものが無いと帰る時は貨物室に密航でペットボトルの水だけに成りそうでそれは避けたかった。

「できれば恩給が出るまではいたいですね。よっぽどヘマしないと追い出されないと聞きましたがどうなんですか」

「ここでのお勤めが駄目って人間もたまに出るから対策は取ってる。守秘義務が明けるまではおたくのいた近場の政府関係者しか出入り禁止の孤島で島流し状態なら監視の手間も省けるんでその分お給料色付けて出してくれる。贅沢しないなら奉公明けもしばらく食うには困らないたしいね。まああの島は紫外線キツイから日焼け止め必須で、真水のシャワーあんまり浴びれないから私は嫌だけど」

あとあの島は太平洋戦争の激戦地だったので、霊媒能力のある巫女には返ってツライ場所だとは言わずにおいた。


「それは安心しました。今中卒ですから、これじゃコンビニバイトもできませんからね」

高校が隣接されていて授業料も免除もここを決めた理由だ。

「それは良かったわね。」

ひとくさり付いたんで二人で茶をすする。


「それで高校はどこなんですか」

見た限りではそれらしい設備の学校は無かったのでバス通学かなと思っていたが、定刻の乗り合い自動車は出ていないらしい。まさか高機動車でってワケにはいかないだろうからどうするんだと思っていた。話じゃ学費に寮費に食費がロハらしいので卒業まではいたいのが本音である。

「ここよ。」

「ココですか」

庵の地面を見る。

「教員免許持ってる女子隊員の誰かが教えにきてくれる筈よ」

まあ形式はと言う。義務教育と準義務である高卒ぐらいは取らせていないと政治的になんか不具合があるので、そのアリバイ作りぐらいに教えに来てくれる予定だ。

「普通の高校生活が出来なくて残念?ありがちな学園生活で尺と彩りは添えられそうにない」

希望ならそれらしい高校は用意してくれるから通学は可能。ただしここ本来の奉職はかまけることは出来ないので予定がタイトだから若くても結構ツライとは言っておく。

「別に良いです。これでも人見知りですからあまり沢山の人間関係はほしくないです」

フィクションにありがちな、ネタ稼ぎとページ稼ぎの学校パートは欲しくない。それに年頃の女の子は忙しいのだ。

「そう。アニメとかじゃ世界救おうって人材を中学生だからって無理くり義務教育に通わせる馬鹿親司令官いるよね。それで学校でいじめられてトラウマになって世界平和?に支障をきたすなんて頭茹だってるのかな」

怪獣が現れる町中でデートの待ち合わせ継続とか、司令官がアホなら部下の現場指揮官もアホなフィクションを思い出す。

「あのアニメ妙な信者いるからゲンドウには気を付けたほうが・・・・・・」

「信者ね。シンジるものは救われない宗教もあるのね」

(もうやだこの人。帰りたい・・・)




「ま まあいいや。それでここで私は何をすればいいんでしょうか?掃除洗濯以外奉職はお守りと御朱印ぐらいしか経験無いんですけど」

島でやっていた神社の手伝いをやれば良いんだと分かり、それなら慣れたものだと杞憂が無くなって茶が美味いとばかり啜る。

「?・・・・・・・・・・・さっきからおかしいと思ったけど、ここの事何にも聞いてないの?」

今更ながらあまりの能天気を感じる。

普通ならもう少し緊張しそうな就職先なのにその気概無くてここまで来たような塩梅。

「聞いてないのよね?」

「何をですか」

ここはアッチじゃないって事は分かった。

野生の動物がちょっとデンジャラスな事。

警備担当が民間じゃなく自衛隊と特務警察だと言うことからも普通の場所じゃないって事。

仮想敵国?な他国に何故か狙われている。

奉職につく者たちの仕事と人数。

高校就学カリキュラム等の待遇。

この特殊な職種の就職ガイダンスを全く受けていないと今更ながら感じた。そして回答は今のところ全部イエスだ。

「聞いてないんだ」

「誰からですか?」

「親御さんは・・・・・・ああ、無理だとか・・」

ようしらんが、漁業に従事していたが嵐の海で幾重不明だとか?潮流のキツイ外海で遭難はイコールで生死不明らしいから、死んだのかと聞くわけにもいかない。


じゃあ保護者と聞いても遠い親戚が名義貸しだけでここ数年ろくすっぽあってないと言うし、なんか事件を起してここ彼女が小学校に入ったあたりからはずっと拘置所らしい。

「・・・・・」

十年近くも拘置所って、普通判決が出たら刑務所に行くが、それ懲役刑じゃないんじゃないかと思ってが言わなかった。きっと高裁か最高裁への上告中だと思うことにする。ドチラにしても義務教育年齢の割にえらく修羅な境遇だ。

「じゃあこの場合は・・・・・・・・」

どうやらここでの話を持ってきたのは中学の担任だったらしい。

「何聞いた?」

「バイトしながら高卒資格を取れるって。雇い主は親方日の丸だから大丈夫だって。身一つで来ても何も困ることはないとか」

「あらら」

なんだその前近代的な国の農業候補生を奴隷待遇で体よく農家にタダに近い給金で集めるための甘言みたくはと呆れた。


「く 詳しいことは後で庁舎の担当に聞くわ」

なんかお役所仕事らしく、たらい回しがあったらしいので肝心要な事は何故かすっ飛ばして甘言だけを聞いてここに来たらしい。

「なんか問題ありますか。サッキも言ったようにあたし島のアパート引き払ってきたんで追い出されても困るんですけど」

中卒なんでコンビニバイトすら出来ない。ピンクのバスで股を広げる連中と同席でお菓子なんか食いたくない。

都会は怖い所だと刷り込まれているので、優遇な働き口でないならできれば生まれ故郷に帰りたい。

「問題は多分あなたには無くて、この国の縦割りだか横割り行政が悪いみたいだから、責任取らされたりはしないと思うからその点は安心・・・・・・は確約出来ないけど多分大丈夫よ」

未成年に覆いかぶせるには周りが不手際すぎる。

「良かった」

「良くも無いんだけど。さて、じゃあ・・・・・・・ちょっと一緒に・・・・・・より、長旅だったから疲れたでしょうから荷物は届いてるから奥の左の部屋あなたの部屋だから好きに使っていいから手荷物置いて・・・・・・和装の着付けは出来るとか聞いたけど一人で大丈夫?。じゃあこの装束が置いてあるから良ければ着といて。着なくてもいいけど、これ、この場所のパス代わりだから着とけばうろついても見慣れないって兵隊さんらからも胡乱に職質されないで大丈夫だから」

ちょっと合同庁舎まで行ってくるから見て回るほど広い平屋じゃないけど直ぐ見終わるだろうけど、ゆっくり見物しといてくれと言った。

「そういえば全身頭の天辺から足の先まで白づくめの女にはここに来るまでは会ってないわよね」

「はい。何ですか、今度は白蛇さまの化身かなんかですか。まあ今更驚きませんけど」

スカラー波を避けるために白装束を着てるなら驚くがと思った。

「ここでの生活に体質があってるかどうか調べる・・・・まあ人間ドックの陰陽師版みたいな女よ」

「多分会ってないと思います」

電磁波怖いって人は知らない。

「そうでしょうね。アイツが一日半もかけてフェリーに乗って島巡りなんかするわけないし、どだい無理だもん」

「その人間ドックさんは何か問題あるんですか?」

「ここは土地が何とかスポットか地磁気か電磁波かコリオリかしらんけど、電気製品は全部駄目なのはわかったわよね」

「はい。庁舎で外すように言われたんで個人用アイテムボックスってコンテナルームに預けてきました」

中に持って入れない個人用保管庫の名称はアイテムボックスというらしい。容量は精々家庭用冷蔵庫並で大したこと無いし時間は動くし、盗難の心配もあるとっても不便なアイテムボックスだ。

「アッチの世界嫌いと言いながらなんかその筋の香しき匂いが端々にするんですけど」

コンテナボックスをアイテムボックスなんて普通は言わないので、アッチ好き?がいるんじゃと聞くと、覗かれない男性隊員は口には出さないがアッチの噂は嫌いではないのが多いらしい。夜の店では話題に出来るので。

「男性隊員さん夜の蝶さん相手にそんな事話すって国家機密ガバガバじゃないですか」

そりゃ第三国のハニートラップにひっかかるわなと呆れた。だからラプター売ってくれなかったなんて噂もあるぐらいだ。



「まあ、それの人間版なのよ。回りの電化製品狂わせるんで街には殆どいけないのよね」

「静電気の凄い人みたいですね」

「いい例え。ソイツも冬はドア開けるたびに騒いでる」

ソイツが自分の留守中に訪ねてくるかもしれんが、変な人間だが噛みつかないから大丈夫だと言われた。

「オタ霊といい、なんで変なヤツの基準が噛みつくか、噛みつかないかないかんですか?」

「わかりやすいでしょう。敵か味方かが。撃ってきたら敵。専守防衛みたいで消極的でなんだけど」

個人的にはどっかの超大国みたく、疑わしきは撃てで良いと思うらしい。

証拠は無いけど被害が出るよりマシだって、路上でヘッドショットする憲兵か。

「まあ変なヤツだけど、怯えないでいいから」

「それを敵味方識別基準にしてる先輩も大分変だと思いますよ」

ここでは名前を出すのはあまり褒められたことでないので、略称として先輩後輩って言い方が多いのでそうなった。

「そ、かもね。後輩ちゃん」

奥の部屋に向かい、ゴソゴソと何かをヒックリ返した。

「一応これを」

そう言って奥の座敷から長い弓袋に包まれたモノを持ってきて中から長物を取り出す。

「もういないと思うけど一応持っておいて。セミのカービン銃だけど大丈夫かな?」

海軍Ⅳ式自動小銃とか言うライフルらしい。この地の獣は撃たれ強いので、300マグナム弾仕様に魔改造してるので肩のホールドしっかりしてないと関節外れるので気をつけろとの事だ。

「人喰いそうなクマが出たら撃てと」

「そ」

えくすかりばぁで斬ってもいいよと両方渡す。

「あたしはどこの八つ墓村か、モンスターハンターですか」

右手にⅣ式 左手にえくすかりばぁを持ってナントカ島戦記の主人公のようなポーズを取っておちゃらける。

「乗ってるね」

「死にたくないからイヤイヤですよ」

いいつつ、クリップ弾倉で装弾する。

「線条痕は8でライフルは右・・・・・って聞いたけど、何の事?」

何の事か先輩はわからないらしいので、多分金かけてますって事だと言っておく。

「夜間スコープは兵器廠観音・・・・」

カメラマニアに売ったほうがいいんじゃないかと思ったが、ヤフオクやメルカリじゃ足がついて捕まるから諦めた。


「夕食遅くなるから、お茶うけ・・・・・全部食うって甘党?まあいいわ。水屋に甘味の貰い物があるんでよければどうぞ。全種類良いわよ。疲れてないなら庁舎までくれば熊カレーが今日は無理だけど、二三日前に仕留めた猪が出るだろう定食類は結構美味しいよ。ニンニクと生姜だらけだからデートの予定あるなら勧められないけど」

山の日暮れは早いので昼だと思っていたのにいつのまにか夕闇が迫っていたので、儀式用の外套を着て出ていく先輩。

「なんかいきなし事態風雲急を告げてきたけど、あたし大丈夫かな」

待てよ。これチャンスじゃない・・・・逃げる。

どうにもあの人は信用できるのと、信用出来ない側面が表裏一体だ。

さてっ、どちらに行こう 風が吹くと逃げようかどうしようかと思ってるときに腹がなる。

腹が空いていると水屋にある甘味を探す事した。

逃げるかどうかはその後だ。

「カステラに、小豆最中か・・・・・他にもなんかありそうね」

フルーツの匂いがするのでガサガサと家探しすると多分隠していたとっておきが見つかる。

「あったあった。逃げればペットボトル(中身水道水) 進めば熊カレー 探せば三つ豆が手に入る」

お言葉に甘えて全て二人分、嬉しそうの豪遊する事にした。



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