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夜会2

入場した直後、会場の貴族たちの視線がヴィオラ達に集中したことに気が付く。

ジークハルトは相変わらず眠そうに目を細めたまま張り付けた笑みをしている。


婚約が破棄になったことも、ヴィオラが新たに婚約者となったこともどちらも想定内といったような態度にさえ見える。

こういう部分は素直にすごいなとヴィオラは思った。


実際、想定内の筈はないのだ。それはヴィオラが一番知っている。

けれど、当たり前の様にヴィオラを横に置いて落ち着いている姿はそう錯覚させてしまう様だ。


二人が入場してから少しの時間をおいて、国王陛下と王妃陛下が入場した。


そして、集まった貴族たちに国王陛下が挨拶をして、ジークハルトとヴィオラを紹介した。

第二王子達が紹介されなかったのは、もうすでに婚約者として男爵令嬢は紹介されているのか、婚約が本決まりになっていないので紹介されないのか、ヴィオラにはどちらか分からなかった。


ジークハルトにエスコートされて、ダンスを一曲二人で踊った。

練習した通りの曲が流れて、練習した通りの流れで踊って、一曲終わったところでホールから壇上の王族のためのスペースに戻った。


陛下達に挨拶をしてしばらく、貼り付けた笑みで下のダンスホールを眺めているのが今日の予定だった。


ジークハルトは丁寧な口調で両陛下に挨拶をした。

他人行儀になれている。そんな感じの言葉遣いだ。


ジークハルトの横にいたヴィオラもカーテシーをした。

ややあって、国王から顔を上げる様に言われる。


ヴィオラは王妃と目が合った。


「あら、あなたが……」


王妃の口元が歪んだのを見つめる。

王妃はすぐに扇子で口元を隠したけれど、蔑む視線はまるで隠せてはいない。

王妃の言葉は最後の方は聞き取れなかった。


望まれない婚姻なのだろうという事はすぐに分かった。

仕方がなく選ばれた婚約者というよりは、排除すべき異物に対する態度だ。


今日この時まで陛下達との顔合わせの場を設けられなかった理由がようやく理解できた。

婚約が急だったからでも、元婚約者達が国外に出たため対応に追われていたからでもない。


会うつもりが無かったから会わなかったのだ。


こういう時、どうすればいいのかがヴィオラには分からない。

ヴィオラだってこの結婚を望んでいる訳ではない。


ただ、回避不能だと認識しているからなるべく円滑に行くように努力はしているけれど、別にヴィオラがお願いして今の立場にいる訳じゃない。

それを知っている筈なのに、目の前の王妃の表情はそんなもの関係ないとばかりに、ただ馬鹿にしているように見えた。


国王はそれに対して、気が付いていないのか王妃に視線を向けることも無い。

ジークハルトもまるで気にした様子もなく、笑みを浮かべて一言、二言国王と言葉を交わした。


最後に「二人でよく励むように」とよく分からない抽象的なことを国王に言われて二人でお礼を言って、下がった。


元々ヴィオラはパーティーというものがあまり好きではなかったが、今日はっきりと嫌いよりになった。

ホールで有象無象の貴族と今日のところは会話をしなくて済むという部分だけはよかったけれど、すでに男爵令嬢と王妃の二人でヴィオラは疲れ切っていた。

会話を交わしてさえいないのに疲れきってしまっていた。


これが、今後は会話を交わすことが追加されるのか。


最悪だ……。


言葉にすることはできないけれどヴィオラは強くそう思った。

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