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興味

翌日は王子妃教育は休みだった。

だるい体を起こして、ヴィオラは何故休みなのかの理由を悟る。


王子にお礼の手紙をしたためる。

昨日言葉を交わしたからいい。という話にはならないのが貴族のマナーだ。


無難な便箋しか持っていないので、そこにありきたりなメッセージを書く。

何か気の利いたメッセージをと思ったところでヴィオラはジークハルトについて何も知らないのでどうしようもないことに気が付く。

例えば、古典から文章を引用しても相手がその話を知らなければあまり意味がない。


王族なのだから、第一王子なのだから今の時点でこれ位というものが分からない。

そもそも、王子妃教育と同じ範囲の本を読んでいたと言われたが、ヴィオラは今現在王子妃教育の範囲を知らない。


そっけない便箋に、そっけないメッセージを見てヴィオラはため息をついた。


王族の義務として婚姻を結ぶ人と分かり合って何になるのかをまだヴィオラは知らない。

それの利点と難点が書いてあった本にはまだ出合ったことが無い。


――それに、多分あの王子は私には興味がないだろう。


ヴィオラは諦めて、侍女に王宮に送ってもらう様手配した。


貰った本は本当に美しくて、夢中で読んでしまった。

卑金属を使って貴金属を作る技術について淡々と書かれている内容もここまで詳細なものは知らなかったのでヴィオラにはとても興味深かった。


この装幀の金は錬金術で作られた物だろうかと、想像が膨らむのもいい。


夢中で読み進めるだけで、その日一日が幸せに過ごせた。

その本はヴィオラの本棚の一番いい場所にしまわれた。


* * *


「宮廷に通う事にはなれたかい?」

「おかげさまで」


婚約の発表について、ジークハルトと二人で聞くことになっていた。

王子用の執務室に置かれているソファーに座って説明を聞いた。


公式にどう説明されるか、その後の公式行事について。

ジークハルトは相変わらず貼り付けた様な変わらない笑顔で話を聞いている。


実際のヴィオラのお披露目は来月の夜会でするらしい。


「必要なドレスとアクセサリーはこちらで手配します」


ジークハルトが顔をヴィオラに向けて言う。

“必要な”という言い方がいかにも義務的だ。


「ありがとうございます」


ここ数日で練習した淑女の微笑みの表情を浮かべる。


「前の婚約者殿と同じグレードの物でお願いします」


説明している大臣がそう言った。

今言わなければいけない理由は恐らく一つ。

ジークハルトが前の婚約者よりも下の物を贈るかもしれないと思ったからだろう。


彼は前の婚約者と仲が良かったのだろうか。

その人を愛していたのだろうか。


直接聞くのはさすがにデリカシーが無い事位、世の中の事を本でしか知らないヴィオラにもよく分かっていた。

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