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余りものの本の虫令嬢が王子の花嫁になるまで  作者: 渡辺 佐倉


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21/23

結婚式

* * *


その日はぬける様な青空が美しい日だった。

女神に祝福をされたような澄み渡った空が広がっている。


真珠で彩られたウェディングドレスを着てヴィオラは聖堂の入り口に立っていた。

つややかな銀髪はヴェールごしでも美しく輝いて見える。



彼女の横に立っているのはジークハルト。

紺色の婚礼衣装を身にまとう彼はまさにおとぎ話の王子様の様な出で立ちだ。



「今日はこれから長丁場になるけどよろしく頼むよ」


結婚式に不釣り合いな気軽さでジークハルトはヴィオラに言った。


「パレード、楽しみにしてますから大丈夫ですわ」


ヴィオラはジークハルトに答える。

最初はあまり興味の無かった王子妃の地位だけれど、彼と一緒に仕事をするのは楽しいと思えた。

だから、二人のための結婚式というよりも国のための結婚のお披露目の意味合いの強い今日この日もヴィオラはとても楽しみにしていた。


あれからジークハルトとの仲は良好だ。

恐らく彼はヴィオラの事を信頼してくれている気がする。


共に、めんどくさい状況を戦う仲間として認めてもらえたようで嬉しかった。


今日のドレスも彼がほとんどデザインしたようなもので、意図的に流された噂によって参列する貴族たちも二人が仲睦まじいものだという眼差しを向けてくる。

実際仲睦まじいのだと思う。


経緯はどうであれそうなのだから、それでいい。


ヴィオラはジークハルトを見上げて微笑んだ。


「そういえば、あれからもあなたは私の読んだことの無い本ばかりくださいました」


ふっ、とジークハルトは吐息を漏らすように笑った。


「愛があるからね」


君の読んだことの無い本を探すのは結構大変だけど楽しいよ。

そうジークハルトは答えるとヴィオラをエスコートして一歩一歩聖堂の中に入っていく。


そこには王妃の姿は無かった。

予定通り滞りなく彼女は離宮へ住まいを移し社交界からも姿を消した。


国王陛下は後継者としてジークハルトを指名して、婚姻後しばらくの後王位を譲ることになった。

王位から遠のいた第二王子達は肩身の狭い思いをしているらしい。


多分ジークハルトがコントロールして今の状況になっている。

そのことをヴィオラはちゃんと知っていた。


「末永くよろしくお願いします。旦那様」


司祭の前で誓いの言葉を述べて、結婚の証としての腕輪をお互いに付けた。

着ける時に見えた腕輪の裏側には、体とその影は常に離れず寄り添うと彫られていた。


この国ではない別の場所で仲のいい夫婦をあらわす言葉だった。

ジークハルトはきっとこの言葉の意味をヴィオラが知っていると分かっていて彫ったのだろう。


形あるものには必ず影があって不可分である。決して離れないという証の様でヴィオラは嬉しかった。


そっとその腕輪をジークハルトにはめる。

それが書かれた腕輪はヴィオラの今の髪の毛の色にそっくりだった。


「これからずっと心はここに」


そう言いながらジークハルトはヴィオラの腕に金色に輝く腕輪をした。

お互いの髪の色を手首につけることになる。


この腕輪を見るたびに今日のこのジークハルトの髪の毛の色を思い出すだろう。


ヴィオラはそっと自分の手首の金色を撫でると、厳かな雰囲気の中瞼を閉じた。

そっと触れられたジークハルトの唇は温かくて、すぐに離されてしまったけれど彼女を見つめるジークハルトの瞳はいつも以上に優しくて、初めてのキスに泣きそうになりながらもう一度彼女は最愛の人に微笑みかけた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 ヒーローが完璧な王子様で、ヒロインのことを昔から好きで、ヒロインは磨いてみたら絶世の美少女!とか平凡だけど愛があるから大丈夫!みたいなおとぎ話ではなく、自分の持っている能…
[気になる点] あれ、「了」  最終回?、もう少し続きが読みたいのですが・・・
[良い点] ・「体とその影は常に離れず寄り添う」という言葉を贈る王子も、喜ぶヴィオラがすてき。 [一言] 完結おめでとうございます。 言葉の選びかた、登場人物の描かれかた、読みやすい文体、とても楽しく…
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