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戦友になるのだ4

帰りの馬車の中でヴィオラは両手で顔を覆いながら


「すみませんでした。余計なことを言いました……」


と言った。


「あははは」


面白そうにジークハルトは笑っていた。

彼はいつから今日の事を計画していたのだろう。

ヴィオラに親を疑う話をしていたときにはすでにある程度調べが付いていたのだろう。


「俺は愛されている様で良かった」


そう言ってジークハルトは元々細い目をさらに細めて言った。


それから「全部王妃陛下の策略だったんだよ」


と平坦な声で言った。

ヴィオラは婚約しても自分と会おうとしなかった人の事を考えた。


初めて会ったときの嘲る様な様子も、すぐに思い出した。


「彼女がこの国を乗っ取ろうと画策していたんだけど、まあこれで大丈夫だろうね」

「この国は……、彼女はどうなるのですか?」


ヴィオラが聞く。


「王妃殿下は病気療養のため離宮にお移りになる。

それ以外は何も変わらないよ」


ジークハルトが嫌味ったらしい顔で口角を上げた。


「この国があの婚約破棄騒動でほんの少し信頼を失って、ほんの少し外交がしづらくなった。

だけど外向きには何も無かった事になってる。それと同じだよ。

あの二人の結婚相手達の陣営がほんの少し信頼を失って、ほんの少し身動きが取れなくなるだけだ」


その“ほんの少し”のためにこの人がどれだけ苦労してきたかをヴィオラは知っている。

ヴィオラとの結婚だってそのほんの少しのうちの一つなのだから。


ジークハルトは「あー、これで君との結婚生活が少しだけ余裕のあるものになりそうだ」と嬉しそうに言った。

嬉しそうに言われたことにヴィオラは少しだけ驚いた。

ジークハルトがまるでヴィオラとの結婚生活を待ち望んでいる様に見える。


「それは私も嬉しいです」


こんな時どう返していいのか、ヴィオラには分からなかった。

ただ正直な気持ちを返すとジークハルトは満足げに笑った。


相変わらずおとぎ話に出てくる狐の様な笑顔だった。

けれどヴィオラが大好きな笑顔になっていた。


「君の言った通り、俺は多分君の事をちゃんと愛しているのだと思う」


突然そう言われ、まじまじと見つめ返した顔は瞳が先ほどよりも開いていて真剣な表情だった。


「……私もお慕いしておりますわ」


何とか絞り出すように返したヴィオラの言葉に、ジークハルトはくつくつと喉で笑い声をあげた。

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