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余りものの本の虫令嬢が王子の花嫁になるまで  作者: 渡辺 佐倉


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戦友になるのだ3

そこには綺麗な封蝋で留められた封筒が付いている。メッセージカードだろうか。それにしてはぶ厚く見えた。

それから包装紙も凝っていて、その意匠は先ほど見たばかりの物に近い。


妖精姫が着ているドレスの刺繍の意匠の文化圏のものだ。

封蝋も我が国の王家のものではない。



「どうぞご確認くださいませ」


ジークハルトがニッコリと笑った。

そのメッセージを公爵令嬢は華奢な指でつまんだ後、封を開けて目を通す。


それで勝負は決まってしまった様だ。

公爵令嬢が公爵に合図をすると彼が来て確認している。


お祝いのメッセージにしてはぶ厚い紙の束をめくりながら公爵は大きくため息をついた。


「この度は過分なお祝いを賜りましたこと、家臣として誠にありがたく存じます」


公爵がそう言い、公爵令嬢が綺麗なカーテシーをした。

王妃は苦虫を噛み潰した様な顔をしている。


「え?」


状況が分かっていないのは妖精姫一人だけだ。


「これは貴方が愛の無い結婚をする負け惜しみですの?」


止めようとした公爵令嬢は間に合わなかった。


「私が愛の無い結婚をすると?」


ジークハルトが言った。


「彼、あなたの事本当に愛しているかしら」


小さな声で妖精姫が言った後とても汚らしい笑みを浮かべた。

この顔をノア・フィッシャーに見せてやりたいなとヴィオラは思った。

ジークハルトは別に驚いてはいなかった。多分きっと知っていたのだろう。



「彼、本をくださいますの」


ヴィオラはそう答えた。

あら嫌だ、つまらないプレゼント。と声が聞こえた。


「私が読んだことのある本を贈られたことが無いんですよね」


ヴィオラがほほ笑む。


「私が、本ばかり読んでいる令嬢だと皆さん知っていらっしゃると存じます」


本ばかり読んで社交もせず、そのためずっと婚約者すらいなかった令嬢。

だからこそ、ヴィオラの読んでいない本を贈るという事は中々に難易度が高い。


偶然だったのかもしれないけれど、今まで贈られた本はすべて読んだことが無いものだった。


「愛、だとは思いませんこと?」


ヴィオラがほほ笑むと妖精姫はきょとんとしていた。

それで彼女はあまり何も考えてはいないのだろうと改めてヴィオラは感じた。


何となく、彼女は何もしなくてもこのまま少しずつ駄目になっていくだろうなと思った。

綺麗な花もやがて朽ち果てる物で、美しさは永遠ではない。

彼女が見目の麗しさで他のものを覆い隠せるのはこれから先それほど長い期間ではないだろう。


正直、ヴィオラはがっかりしていた。

こんな人と比較されていたのかと思ってしまった。


だから、一発で公爵親子を黙らせたあのプレゼント、それからジークハルトが口にしていた話については頭の片隅に押しやられてしまっていた。

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