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戦友になるのだ2

ヴィオラはこの家の主人である公爵を見た。

彼は形の上では静観をするという事なのだろう。


公爵令嬢の前まで二人で進む。

それからジークハルトが公爵令嬢に結婚のお祝いの言葉を伝えた。


彼女が心からその言葉を喜んでいる訳ではない事は誰の目にも明らかだった。


「お祝いの前にまずあなたには言わねばならない事があるのでは?」


“妖精姫”が言った。

王家の醜聞をここで言うのか。ヴィオラは舌打ちをしたい気分になったがこらえた。


「愚弟の件については、もう話し合いが済んだことでは?」


ジークハルトは彼女達と一緒にいた王妃を見つめながら言った。

そもそもこの場に王妃がいることがおかしい。その上、彼女ではなくジークハルトから態々この場で言葉を引き出そうとするところがヴィオラには許せなかった。


「あなたは今ここで誠意を見せるべきでしょう」


公爵令嬢は止めない。

どこまでが予定されていたことなのか。


「あなたは私達に対して、謝罪が必要だという事すらわからぬのですか?」


馬鹿にするように言われた言葉がヴィオラの脳内に響いた。


「何故彼が謝らねばならないのですか?」


ヴィオラが聞く。

妖精姫はヴィオラの頭のてっぺんから足の先まで視線で確認した後、鼻で笑った。


「何故ですの?

事実姉さまは婚約破棄されて迷惑を被っておりますしその所為で私も――」

「私も?」


ヴィオラは教えられた中で一番上等な笑みを浮かべた。


「あなたの婚約の解消は誰かの責のあることなのですか?」


公爵令嬢の婚約解消は最終的には円満に行われたことになっている。

でなければこんなに早く新たな相手と婚姻はできない。


表向きは何もかも円満にことが進んでいることになっているのだ。


その上、第二王子の婚約破棄騒動と彼女は何の関係があるのか。



何の関係もない筈だ。

後ろ暗いところが無ければ、何もない筈なのだ。


彼自身の言った何もしなかった罪について、同じように表立って何もしてこなかった彼女が何か言える事ではない。



「無駄ですよ」


ジークハルトがヴィオラの髪の毛を一房取って愛おしそうに撫でる仕草を見せつける様にしながら言った。


「まもなくそこの“母上”は力を失う」


それに、隣国とのパイプ役になるはずだったヴェーバー商会ももう存在しない。

この国を陥れることは不可能だ。



目の前の三人にだけ聞こえる音量でジークハルトは言った後ニッコリと笑った。

おとぎ話の悪役の狐みたいな顔で。


別に誰に聞かれてもいい。といった感じに見える。


「何を突然世迷言を……」


王妃は少しも表情を変えずそう言い返した。


「凡庸な人間だとは思っていましたがここまでとは――」


陛下にお伝えせねばなりませんね。


ジークハルトが王妃を見て笑顔を浮かべる。

それは親に向ける物ではない貴族の笑みで、そして明らかに嘲りを含むものだった。


「まさか、私がなんの証拠も集めずに、根回しもせず、怠惰にこの場にいるとでもお思いですか?」


ジークハルトは王妃、それから残りのもう二人に視線を順に動かしてそれから「私を怠惰でいさせてはくれなかったのはあなたたちでしょう?」と言った。


それから、公爵に目配せをした後「ご結婚祝いをお持ちしておりますので是非目を通してください」と言った。

その言葉を合図にしたらしく、何人かのジークハルトの側近が荷物を運びこむ。

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