手紙の内容。
『拝啓、親愛なる、井上春樹様
真夏日の暑い日が続いておりますが、元気にされているでしょうか?
いや、多分元気なんかじゃないと思います。
あなたは私のことが大好きだったもんね。
私がいなくなった世界であなたは一体何をしているのでしょうか。
それを私が見れないことをとても悔しく思います。
今、私の部屋のベランダから花火が見えます。
この花火はあなたが誘ってくれた花火大会で打ち上がっている花火です。
春樹は今どこにいるかな。
なにをしているんだろう。
誘い、断っちゃってごめんね。
一緒には居ることはできないけど、同じ花火を遠くでもいいから見ていることを願っています。
多分、私に何があったとかそういうのは、私が死んだあと、警察とかお母さん、春とかから言われると思う。
それを聞いた時、あなたは自分を責めてしまうと思うの。
でもそれは違うんだよ。
あなたは最後まで私の支えになってくれていた。
だからこそバレたくなかったんだ。
あなたの前では、天真爛漫で、遠慮も知らないし、少し常識知らずな『夕立唯』でありたかったの。
だから、春樹は今の私を知らないでいいんだよ。
ごめんね。苦しい思いさせて本当にごめんね。
最後まで一人よがりな手紙だったと思います。
そんなに長く描いても、春樹は文章を読むのが得意じゃないから諦めちゃうと思って短めにしました。
冗談だよ。春樹が私の遺書を読まないなんてありえない。
10000文字でも10000000文字でもあなたは目に穴が開くほど読むと思う。
でもね。私がこれ以上文章を書きたくないんだ。
あなたに会いたくなってしまう。
私のことなんか忘れてね。
春樹はなんだかんだいい人だから、きっと素敵な女性と結婚できるよ。
そのためには、部屋にゴミを投げる癖。早くやめなきゃね?
そのままだと私以外の人には見放されちゃうよ?
会いたいな。春樹。最後に会いたかったな。会いたいよ。会いたい。
愛してる。』
手紙は万年筆で書かれたものだった。
そのためか、インクが何かで滲んでいる。
涙?汗?鼻水?
どうでもいいことばかり考えてしまう。
この万年筆はおそらく、俺が唯に昔プレゼントしたものだと思う。
彼女がそれ以外に万年筆を持ってるなんて考えずらい。
唯に会いたい。会って俺も好きだと言いたい。
抱きしめて、もうどこにも行かないでくれと言いたい。
四年前からずっとそう願っていた。
心に空いた穴をずっと感じていた。
「ああ」
溢れる。感情の渦に巻き込まれる。
きっと僕は今ひどい顔をしていると思う。
泣きそうなのを必死で堪えて、でも堪えられなくて
きっと小学生みたいな感じだろう。
「あああ」
僕の涙で手紙が滲む。
会いたい。会いたい。会いたい。
それだけが募るばかりだった。
唯はこの大量の唯の絵を見たらどうするのかな。
気持ち悪いと言うと思う。でも内心喜ぶと思う。
今思えば、唯も俺もおかしかった
普通のカップルとかよりも何十倍も互いに愛を持っていた。
どっちとも不器用で愛を伝えることはできなかったけど。
それでもお互いにわかっていた。
それは心地よくて、幸せでまるで夢の中のようだった。
でももう、終わらせなきゃならない。彼女は死んだ。
夢を見るのはもう終わりだろう。
でもやっぱり
「唯に会いたいなぁ………」
「私も、会いたい、です」
気づけば春ちゃんも俺の隣で泣いていた。
彼女も取り残されてしまっているのかもしれない。
四年前の彼女が死んだあの夏に。
唯は本当に悪いやつだと思う。
たった一人のこんなに可愛い妹を泣かせて、
こんなに唯のことを愛している俺を泣かせて、
それからは二人でただ泣いた。
二人とも何も言葉を発しなかったが、それでよかった。
そうじゃなきゃダメなのだと、思った。
初めてなろう小説の評価っていう制度を知りました。
評価してくださった人がいたみたいです。
ありがとうございます。うれしい。