未成年の膝枕
拙い文章ではありますが、みてください。おねがいします。
「…きさん…はるきさん…春樹さん!」
「んああぁ…?」
春ちゃんの声が耳に響く。久しぶりに女性に名前を呼ばれる気がする。
というか男性からも呼ばれないか。
職業柄、外に出ることもないし、誰と喋ることもないから仕方のないことだと思う。
実家からも連絡なんて来るわけないしね。
そんなことをふわふわの頭で考えながらすこしずつ片目を開くと春ちゃんが見下ろすような形で俺を覗き込んでいた。
「あ!起きた!大丈夫ですか?」
おそらく体に異常はない。
息は整っている。
春ちゃんと顔を合わせているものの案外平気だ。
しかし。少し状況が飲み込めないことが一つだけある。
何故俺は膝枕されているのだ?
少し横を向けば彼女の制服が間近にあるし、上を向けば彼女が僕を見下ろしていた。下を向くなど変態のすることである。
そのため消去法で彼女のいない方の横を向いた。
膝枕は唯が五年前やったきりやってはいないので、なんだかすごくドキドキしてくる。
「いきなり倒れたんですよ?救急車呼ぶかすごく迷いました。あと一分したら救急車呼ぶところだったんです。」
「どのくらい倒れてた?」
「ほんの一分程度ですよ。すごくうなされてるみたいでした」
それはきっと君のせいだよ。
と言えるわけもなく、ただ一つこの状況を打破するための一言を。
「取り敢えず、膝枕やめよう?」
「あっ」
僕の家には何度も言っている通り、唯を書いた絵とゴミしかない。
正確にはあと冷蔵庫がある。
あと電子レンジもかろうじてある。
しかしそれ以外は何もない。
そのため椅子も机もないのだ。
俺は一度としてその状況に不満を持ったことはないが、今初めて机と椅子を買うべきだと思った。
それは何故か。
それは今俺の対面に居る春ちゃんがこのゴミだらけの部屋で座るのをためらっているからだ。
俺が出したゴミなのだから俺は当然気にならないのだが、あとでちゃんと掃除して机と椅子を買おう。
「ごめんね。汚くて。ずっと掃除もしてないし、机も椅子もないんだ。」
「いえ…大丈夫ですよ。頑張ります…!」
そう言うと春ちゃんは勢いよくその場に座った。
ごめんねこんなゴミ屋敷で座らせちゃって。
「あの…春樹さん…」
「ん?」
「そろそろ話をしても良いですか…?」
そうだった。
春ちゃんはなんのためにここに来たのだ。
四年前あんな罪を犯した俺に。何をしに来たのだ。
「あの時はすみませんでした!」
春ちゃんはゴミ屋敷に頭をつけて土下座のような形で謝る。
何を謝ることがあるのか。
まぁ理由はわかってる。
あの時、俺を怒鳴ったことに対してだろう。
しかしあの時の春ちゃんは一つとして間違っていなかった。
俺が気づけなかったのも守れなかったのも事実なのだ。
それを今更謝られても少し困ってしまう。
取り敢えず俺は顔を上げさせた。
春ちゃんの目は少し涙が溜まっていて、充血していた。
そんなに涙を我慢してたのか。泣くことなんかじゃないのに。
「春ちゃんが何を謝ってるのかはわかるよ。君もわかると思ってあえてなにがとは言わなかったろう?
でも僕は君に謝られることなんて一つもないよ。あの時言った君の言葉は全て正しい。 」
「でも。」
「いいから。もう謝らないで。元を辿れば俺が全部悪かったんだ。
今ならわかる気がするんだ。あれは助けようと思えば助けられた。気付こうと思えば気づけた。
全ては俺の過失だ。過ぎたことを懺悔しても誰かに許されるわけではないけどさ。」
「そんなこと…」
春ちゃんは優しい子だ。
やはりあの時は本音ではあっただろうが、勢いで言ってしまったことを後悔してたんだろう。
本当に優しい子だ。
だから、唯とは違う。
見た目は似ているが、明らかに違う。なんだか少し安心した。
だがそれはそれ。
これはこれだ。
「それでもう話は終わりかな?俺はあの時のことはもう本当に気にしてないからさ。
心配しなくても平気だよ。」
作り慣れてない笑顔を無理やり作って彼女に向ける。
はるちゃんはまだどこか泣きそうだ。
「まだ、まだ話は終わってないんです。」
彼女は俯きながら僕にそう言った。
完全に俯いてしまったからどんな顔をしているのか分からない。
春ちゃんはうちに持ってきた大きなリュックの中から一枚のかわいい便箋を取り出した。
「落ち着いてく聞いてくださいね。
井上春樹さん。あなた宛の遺書が先日見つかりました。」
え?
クソ眠いので寝ます。